【感想・ネタバレ】白き女神の肖像のレビュー

あらすじ

妻をモデルに描いた肖像画『東方ノ女神』で一躍時代の寵児となった画家ショーン。だが、妻のディアーナはモデルを務めるうちに、奇妙な感覚を覚えるようになっていた。夫が描いているのは自分ではない――。しかし夫も周囲の人々もディアーナの不安を理解せず、思い悩んだ彼女は次第に憔悴し、謎の死を遂げる。そして、彼女に代わってモデルとなったローズマリーも同じことを口にするように……。第2回創元ファンタジイ新人賞受賞『宝石鳥』の著者がおくる、描くことにとり憑かれた画家と、彼を取り巻く女性たちをめぐる幻想譚。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

あまりにも美しい表紙と耽美な装丁に吸い寄せられて手に取った。

「あなたは、誰?」

この一文でこの幻想譚は始まる。
1800年代後半から1900年代前半まで活躍した画家(もちろん架空の人物であろう)ショーンは、妻のディアーナをモデルに描いた「東方ノ乙女」という肖像画で、一躍時代の嬰児となった。ショーンの画風は見たままを見たまま描くといったもので、作中では「天使派」と呼ばれている。
そんなショーンの作品を見ようと、1970年に今は古びた無人の赤煉瓦の屋敷…かつてはショーンの自宅兼アトリエであった屋敷・通称「夢幻の館」に、美術研究家カーライルが足を踏み入れた。
そこで見つけた未完の肖像。
その肖像には、顔が描かれていなかった。
描きかけというわけではない。この絵は一体…?

そのような謎を残して、舞台はショーンたちが生きていた時代のアイリノス(嘆きの花の町)へ。
かつてはショーンを中心にたくさんの芸術家たちが集っていた夢幻の館。
賑やかななか、訪れる皆から美しい、本物の女神のようだ、モデルになってくれと懇願されるディアーナはなんともいえない思いをする。
「東方ノ乙女」を見ながら、この絵にあるのはやはり私ではない。ショーンが描いたものはもちろん、他の誰がディアーナを描いても、やはりディアーナにはそれが自分とは思えない…

私を通して、私ではない何かを他の人たちは見ている?

そしてまたショーンも、取り憑かれたようにディアーナを描き続けずにはいられなかった。

その不思議な現象について、最後まで読んだうえでわかるような、わからないような…でもなんなのだろうこれはと、読後も考え込んでしまう。
これは、幻想的な女神譚、とでも言えばいいのだろうか。
それとも私がこの本を通して読んで想像してきたのは、果たして「女神」と呼べるものだったのだろうか?
作中の人物たちとともに翻弄され、頭を抱えているのだろうか?
美しい、とは、なんなのだろうか?

第三章・魔都の女神のエピソードが他の章の中でも異質で、それでいてこの物語の答えを一番表現しているように思えた。

わからないと思うなら、ただのよくわからない物語と一蹴してもいい。
でも、私はつい、白き女神の肖像というタイトルを眺めながら考えてしまう。
見たままを描いたはずのものが「見たまま」ではなかったら?少し身震いがする。それ以外にも思うところはあるのだが、うまく言葉にならない。
正直バッドエンドなのか、幻想的なよくある物語なのかすらわからない。
でも読後もどこか惹きつけられる。自分の目に映る世界が全てではないような気がしてくるからか?
なぜなのか誰か教えてくれないか?
いろんな人の感想がききたくなるお話だった。

美しい表紙の貴女は誰なのだろう?

0
2022年06月27日

Posted by ブクログ

結末も詳細もよくわからなかったがストーリーは面白かった!表紙が綺麗!
この世で最も美しい赤は文字で書いた赤→言葉一つにあらゆる赤が内装されていて、そのイメージは尽きることがない。
これは分かるけど文字で書いた赤は赤なのか??

0
2022年02月24日

Posted by ブクログ

美しき絵は、人を呑み込む。
それはまるで、我が子を喰らうサトゥルヌスのように。
凝った造りの装丁に胸がときめく。
絵画と画家と、モデルたちの物語は、ファンタジーそのものだ。
「天使派」と呼ばれる芸術家集団たちは、目に見えるものを、美の神の使者として、キャンバスに描く。
しかし、その絵に描かれたのは、モデルであってモデルでない。
現在から過去へ戻り、また現在に戻ってくる物語の構造はオペラ座の怪人のようだ。
美に取り憑かれ、しかしてその美は神なのか、それとも悪魔なのか、画家にも、見るものにも分からない。
もしかしたら、ただ1人だけその正体に気づいていたかもしれないが。

よく言えば余韻の残る、悪く言えば少しわかりにくい終わり方をする。
個人的には仮面劇のシーンは面白かったが、結局女神とはなんだったのか、もう少し迫っても良かったように思う。
また、絵画のタイトルが、今ひとつ垢抜けないように感じた。
現実世界の画家を思わせないようにしたのかもしれないが、イメージがラファエル前派だったので、少し寄せても良かったのでは。

0
2023年04月16日

Posted by ブクログ

初読みの作家さん。東京創元社からのメールマガジンでタイトルと紹介文を読み、「これはおもしろそうだ」とサイン本(^o^)を予約した。うーん、一気に読んでしまったし、おもしろかったのだけれど、期待していたものとは違っていた。雰囲気で読ませるタイプの幻想譚、だろうか。結局なんだったのか、もやもやとした感じが拭えない。でも好きなタイプの作家さんだったので、他の著作も読んでみよう。

0
2020年12月27日

「SF・ファンタジー」ランキング