滝沢志郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ■伝えることの難しさと面白さを、物語を通して学べる一冊
テクニカルライターのお仕事小説です。
私自身、物事を説明したり、使い方を伝えたりすることを仕事にしてきたので、読みながら「ああ、こういうことってよくあるな」と思う場面がたくさんありました。
テクニカルライターという職業は、あまり一般には知られていないかもしれません。しかし、何かをわかりやすく説明する、必要な情報を相手にきちんと伝えるという点では、まさにプロの仕事です。
本書では、文章を短くする、一文一義を意識する、要点を箇条書きにするといった基本的なテクニックが、物語の中で自然に紹介されています。単に知識として説明されるのではなく、具体的な仕事の場面を通して描かれるので、すっと頭に入ってきます。テクニカルライティングを学びたい人にとっても、実践的な入門書になるのではないでしょうか。
特に印象に残ったのは、マニュアルは単に機械の機能や操作方法を説明するものではない、という考え方です。
大切なのは、使う人がどんな場面で、何をしようとしているのかを想像すること。メーカーが伝えたい機能を並べるのではなく、ユーザーの行動に沿って情報を組み立てる。例えば、ストッパーの説明を「ストッパーの使い方」ではなく、「ハンドルから手を離すとき」という見出しにする。なるほど、と思いました。
これはマニュアルに限った話ではありません。相手が何を知りたいのか、何に困っているのかを考えて伝えることは、あらゆる仕事に通じるものだと思います。
また、マニュアルは商品の一部であり、その不備は商品の不備にもつながる、という指摘も印象的でした。事故を防ぐために何を書くべきか、どこまで注意を促すべきか。書き手の都合ではなく、実際に使う人の立場から考えなければなりません。使う人に何かあってはいけないという視点が、プロの仕事を支えているのだと感じました。
文章を書く技術だけでなく、相手の立場に立って考えること、情報を整理すること、そして何を伝えるべきかを見極めること。本書には、そうした仕事の基本が詰まっています。
小説としても読みやすく、読後感もすっきりしています。テクニカルライティングに興味がある方はもちろん、仕事で人に何かを説明したり、文章を書いたりする機会のある方にもおすすめしたい一冊です。
「伝える」という仕事を、改めて考えさせてくれる小説でした。 -
Posted by ブクログ
読む気にもならない分厚い取説を横に、自分で試行錯誤して失敗した経験ってありませんか?
この物語は、24歳のアルバイト、咲良のテクニカルライターとしての成長物語です。
テクニカルライターって何だろうと思ったそこのあなた、取扱説明書などを正確に分かりやすく作成する専門職で、いわば家具、家電のユーザーのための翻訳家さんみたいなものらしいです。私もそんな職がある事、知りませんでした。
ある時、台風で運休して混雑する駅で乗客対応に追われパニック寸前の咲良は、颯爽と現れた1人の女性の行動に驚く。その女性は、運休状況が記載されたホワイトボードを消し、端的で分かりやすい説明に書き換え、混雑していた乗客が一斉に納得して解散していく様を咲良は目の当たりにする。それが咲良と後にテクニカルライターの師匠となる響との出会いだった。
取説というニッチな世界で、いかに重要な事を分かりやすくさせるか、余分な所を思い切ってカットするといった様々な工夫があって奥深いし、皆で知恵を出しながら良い取説を作っていくプロセスはとても面白かった。また、他社競合といった、テクニカルライター同士のバトル要素もあり、飽きる事なく一気に完走。
登場人物の個性の強さ、軽快な会話の読みやすさ、咲良の心の声が好き過ぎる。また、ビジネス書としても優秀で、多くのブク友さんが高評価されているのも納得。
個人的には、原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」に近しさを感じたので、お日柄がお好きなかたには刺さるかと思います。
短歌ツイートやレジェンド段原さんの伏線も気になるので、続編にも期待!
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Posted by ブクログ
テクニカルライターという職業と仕事を初めて知り、
新しい世界が拓けたようなワクワク感!これぞお仕事小説の醍醐味~♪
取扱説明書…誰にとっても身近な冊子製作の裏側に、テクニカルライターのプロとしての視点がたくさん詰め込まれているなんて考えもしなかった。
一番伝えなきゃいけないことはなに?
どう書いたらちゃんと伝わるか?
どうしたら読んでもらえるか?
そして、
たくさん収集した情報を整理して、
最終的には発想を転換させる…。
どんな職業のどんな仕事にも通じるようなヒントもあって、読んでいて気持ちがよい。
それに、
それぞれヒトクセある登場人物像も魅力的で、会話のテンポもこきみよい。
これはぜひ続編が読みたい!
あー楽しかった!
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Posted by ブクログ
ネタバレ「テクニカルライター」という、これまであまり意識したことのなかった仕事の奥深さが、とても面白く描かれていた。
単に正しい文章を書くのではなく、「誰に、何を、どう伝えるか」まで考えることが説明なのだと気づかされる。
ごく身近な案内やマニュアルが題材になっているからこそ、その奥にある工夫や思いやりが実感できた。
知識が増えるだけでなく、咲良が悩みながら成長していく姿にも心を動かされる。
キャラクター同士の関係性も魅力的で、仕事小説として楽しみながら自然と学べる一冊。
あまりに刺さる場面が多く、何度か泣くのを堪えながら読んだ。
読後には、普段何気なく目にしている「説明」の見え方まで変わった。 -
Posted by ブクログ
自分の言いたいことがたくさんある時、あれもこれも詰め込んで話しても全然伝わらないんだなというのがわかった。
ビジネス本みたいだなと思いながら読んだ。
会社の雰囲気がすごい良くて、やはりいい会社はいい仕事するよなぁなんて思った。
知識がなくても、無いなりにできることがあるというのはすごいいいことだなと思うし、自分も今の仕事で「わかってて当たり前」のような先入観で、言い方をもう少し掘り下げてあげた方がいいなと思った。
個人的には昭和の仲直りの仕方の描写がツボだった。
表紙のぬいぐるみが意味のあるものだと思わなかったので、わりと登場してて思わず笑った。
おそらく続くんだと思うので、追っていきたい。 -
Posted by ブクログ
江戸時代という男社会の中で、女性の生理用品の開発に命を懸けた主人公・鞘音の奮闘に深く感動しました。
当時「穢れ」と忌み嫌われ、誰も顧みなかった女性の苦痛に光を当てた鞘音の道は、過酷そのものです。侍としての立場や世間の偏見、失敗の連続という逆境に晒されながらも、彼は洗って何度も使える木綿の工夫や吸収材の開発に愚直に向き合い続けます。周りから冷笑を浴びても「名もなき者の痛みを救う」という信念を曲げず、泥まみれになりながら前へ進む彼の姿は、まさに暗闇の中で静かに咲く月下美人のような美しさと力強さを持っています。
時代の常識に抗い、理不尽に立ち向かい続けた鞘音の覚悟は、侍の「強さ」とは誰かを倒すことではなく、他者の痛みに寄り添い救うことなのだと教えてもらえます。人のために命を燃やし尽くした彼の誇り高い生き様に共感できました。 -
Posted by ブクログ
兄夫妻の忘れ形見である姪と暮らす武士が女性の月経の処置に使われるアイテムを幼馴染の紙問屋の息子と女の町医者と3人で作り、江戸で売り出していくという時代医療小説
これは著者である滝沢志郎氏が実際に自分でナプキンをあてて1日を過ごしてみたというTwitterの投稿が話題になってことがきっかけで知った本だった
男性が下衆な視線ではなく、女性の月経に興味を持つこと、それを掘り下げて小説にすることというのは私の記憶にある限りだとない
作中では主人公の鞘音が男性である限り女性と同じ気持ちは味わえないとしながらも、それでも毎月のしんどさや状況を知ることはできるとシンパシーではなくエンパシーで取り組む姿が印象的だった
そして横たわる根深い男尊女卑的な価値観に対する愕然とした様子もしっかり書き込まれていて、たとえ結婚しなくても子どもを生まなくてもすべての女性がその苦しみから解放されてほしいという祈りが込められた小説だったと思う