あらすじ
江戸時代後期、下総のとある藩。郷士の望月鞘音は内職で、傷の治療に使う「サヤネ紙」という製品を作っていた。ある時、幼馴染の紙問屋・我孫子壮介から、その改良を依頼される。町の女医者・佐倉虎峰がサヤネ紙を買っていくのだが、使い勝手が悪いと言っているらしい。しかしそれは「月役(月経)」の処置に使うためであった。穢らわしい用途にサヤネ紙を使われ、武士の名を貶められたと激怒する鞘音だったが、育てている姪が初潮を迎えたことを機に、女性が置かれている苦境とサヤネ紙の有用性を知り、改良を決意する。「女のシモで口に糊する」と馬鹿にされながらも、世の女性を「穢れ」の呪いから解放するために試行錯誤を続ける鞘音。ついに完成した製品を「月花美人」と名付け、販売に乗り出そうというとき、江戸へ参勤していた領主・高山重久が帰国する――。
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Posted by ブクログ
ほんとうにこんなふうだったら素敵だなぁと思う。インド映画でも男の人が工夫していた作品があったが、江戸時代末期、武士の身で不浄と言われた生理用品の開発に取り組む鞘音、革命を起こそうと頑張る壮介や女医者の虎峰などが自分らしく生きていく姿が素晴らしい。
Posted by ブクログ
兄夫妻の忘れ形見である姪と暮らす武士が女性の月経の処置に使われるアイテムを幼馴染の紙問屋の息子と女の町医者と3人で作り、江戸で売り出していくという時代医療小説
これは著者である滝沢志郎氏が実際に自分でナプキンをあてて1日を過ごしてみたというTwitterの投稿が話題になってことがきっかけで知った本だった
男性が下衆な視線ではなく、女性の月経に興味を持つこと、それを掘り下げて小説にすることというのは私の記憶にある限りだとない
作中では主人公の鞘音が男性である限り女性と同じ気持ちは味わえないとしながらも、それでも毎月のしんどさや状況を知ることはできるとシンパシーではなくエンパシーで取り組む姿が印象的だった
そして横たわる根深い男尊女卑的な価値観に対する愕然とした様子もしっかり書き込まれていて、たとえ結婚しなくても子どもを生まなくてもすべての女性がその苦しみから解放されてほしいという祈りが込められた小説だったと思う
Posted by ブクログ
女性にお薦めする時代小説。
月経が不浄だとされていた江戸時代末期に生理用品を開発しようとしたのは、無骨で気高い武士と、商だけではない思いをそれに持つ紙問屋の若旦那と、強い信念を持つ女性の医者だった。
偏見や数々の困難を乗り越えようとする友情を超えた姿が熱い。
Posted by ブクログ
とても良かった。
生理が不浄とされた時代で、いかに女性に対して差別や間違った医療の処方がされていたかがわかった。
そしてその世の中を変えようとする姿勢や、常識を疑って革命を起こそうとする姿勢がとても感動的で涙が出る作品だった。
Posted by ブクログ
第7回ほんま大賞受賞作品です。
大人買いのうちの1冊だったので、ゆっくり読みました。
現代も生理用品等など、色々な想いで開発に携わっている方々がいるかと思うと頭が下がります。
女性を穢れとする考えの世の中
武士道 身分
父と娘 仲間
色々な立場で色々な想い
考えることができたなと思います。
題材が題材なだけに手にとるのを憚れる方もいらっしゃるかもですが、読みやすいと思いました。
最近、生理痛体験といったものができる機会があるようです。
性別や年齢色々な違いに関係なく、お互いがお互いを尊重できる世の中になっていったら、いいなぁ~なんて思ったり。
Posted by ブクログ
登場人物がなんとも魅力的だった。その後のことが書かれているのもいい。
人々に非難されながらも、当たり前とされてきたことを打ち崩してきた人たちがいたからこそ、少しずつ社会が暮らしやすくなってきたのだと実感した。穢れについては考えさせられることが多い。海外では、いまだにこのような風習が残っているところがあると聞く。少しでも状況が変わってほしい。
よくSNSで、女性は〜だから男性は〜だからとお互いを決めつけて、対立しているのを見かけることがある。女性はこのお話で出てきたように、月経や女性としての生き方に悩み、男性は女性よりも優れた体力や筋力を持つゆえに、責任感が大きい仕事を任されたりすることがあるのだと思う。生物的に体のつくりが異なり、異性の体や状況を体験することはできないから、お互いのつらさは分からない。きっとみんなそれぞれ不満や辛さを抱えて生きている。でも、分からないからと一方的に不満をぶつけるのではなく、男性も女性もお互いを知り、少しでも理解しようと歩み寄ることが必要なのではないかなと感じる。
Posted by ブクログ
発起人は商人、発案者は女医、制作者が武士という幼馴染三人で千年の禁忌に挑む。
月経という分かりやすいワードに読み始めたけれど、その実は奈良時代以前は穢れとされていなかったモノ、つまりは女性そのものの地位向上と周知に、男の象徴でもある武士を真正面からぶつけ、取り込み、当然とされている世間と世論へ疑問を持つことを投げかけている作品。
女の敵は女と女性読者は共感するし、そんな女性たちを知るために、男性読者にも読まれて欲しい本。
時代小説にありがちな小難しい蘊蓄はなく、心情と会話主体で読みやすい。
ラストどうなるのかと思ったけど、そう来たかー、そうなるよなーと納得の結末。
血盆経や荻野吟子さんにも触れてて、ちょっとした知識も身につきました。
面白かった!
Posted by ブクログ
武士による商品開発物語。
これまで”無い”物を創りだすのはとても難しい。
ましてや創るのは生理用品……武士としてのプライドを乗り越え、その先には女性は穢れといった文化や宗教観が立ちはだかる。
商品開発を通して、カタブツ生真面目な武士の思考が、突出してなんか現代人ぽくなっていくのがおもしろい。
そして生理という女性の日常を、歴史という観点から垣間見て、血盆経の信仰も初めて知った。
正しく知識を得ることもだいじだし、
庶民の暮らしの歴史を知ることもおもしろいな。
読みやすくてエンターテイメント性も高いのに、
なんかいろいろ考えさせられる。
うん、すごくいい読書だったと思う。