ホルヘ・ルイス・ボルヘスのレビュー一覧
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ボルヘスが世界中から集めた92の掌編・短編が収録されている。怪奇というより幻想小説っぽいのが多いが、どれもとても面白い。とくに「汽車」か物語としても構成・文体としてもすごくよかった。
ちなみに、各話に典拠となる書名とその作者が明記されているが、それらがすべて本当かどうかは疑わしいらしい。どんなに調べても書名や作者名がここ以外で見つからないものがるそうで、もしかしたらボルヘス自身が書いたオリジナルかもしれないと。世界中から掌編・短編をあつめた、というそのこと自体がフィクションかもしれないわけで、いかにもボルヘスらしい感じがする。
なお、北村薫の短編「水に眠る」の元ネタと思しき短編をこの本で見つけた(エドガー・アラン・ポーの「水の島」)。水の層にナイフを入れるて分離する、というイメージが偶然似通うことはなさそうなので、まず間違い無いと思う’。調べた限り両者の関連について言及しているものは見当たらなかったが、実際どうなんだろう。
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作品紹介・あらすじ
神の訪れ、王の夢、
魂と夢と現実、死の宣告・・・。
ギルガメシュの物語、聖書、
紅桜夢、ニーチェ、カフカなど、
世界の夢から選ばれた
113の断章
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ボルヘスが編集した古今東西の夢にまつわる断章を集めたアンソロジー。
内容も形式も多様で、夢の描写から夢の分析まで網羅されている。
聖書や神話、小説や詩、研究文献などから引用されているが、宗教関連の内容が比較的多い印象を受けた。その宗教関連の断章は言い回しが独特でなかなかスムーズに読み進めることができず、もどかしさを覚える場面もあった。
「なるほどね」と面白味を感じることができる断章もあれば、「なんだかよくわからない」と腑に落ちない断章もあり、率直に言えば玉石混交。全体としては期待ほどの面白さは感じられなかった。多分、あのボルヘスが夢を題材にアンソロジーを編んだ、ということで期待が膨らみすぎていたのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ボルヘス好きなのだが、うーんこれは面白……みを感じづらかったな。
というのも、パズラー式に情報の提供と解明が行われるわけでもなく、依頼人がダラダラと喋りまくり、パロディが推理、というよりは「説明」していく。
申し訳ない、ほとんど流し読みになってしまった。
「簡潔なご説明をお願いできますか」
「はい、一切の隠喩を差し挟むことなく直截な表現を試みてまいりますが、私のごとき描写の才に欠けた者の見聞きしたことで本当にお眼鏡にかなうものでしょうか、ところでウェルギリウスの同伴者でもあったかの才に長けた作者の言葉を借りれば」云々、
みたいなお喋りキーワードが時々出ていて、そこを探すのが面白かった。
解説に、ボルヘスの惹かれたプロットは三つに分けられる、〈(1)推理小説仕立ての作品。(2)ナイフ使い、ならず者を主人公にした作品。(3)聖なるもの、超越的なものをテーマにした作品〉とあった。
私含め少なからぬ読者は(3)を求めるのだが、実は(2)を通じて〈ヨーロッパ的な古代、中世の英雄叙事詩が欠けているアルゼンチンに英雄叙事詩、あるいは英雄物語をよみがえらせようとしたひとつの試み〉なのだと。
なるほどな……これって中上健次が初期に「世界はいつまでもギリシャ悲劇を演じ続けている」と書いた上、延々中本の一統を描いたことにも通じるんじゃないかしらん。
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[目次]
◇H・ブストス=ドメック
◇序文
※身に覚えのない殺人の罪で投獄され、服役中の元理髪店主イシドロ・パロディが、面会人が持ち込む数々の難事件を対話と純粋な推理のみで解き明かしていく。
■世界を支える十二宮
黄道十二宮を用いたイスラム教の加入儀礼の最中に宗派の導師が殺され、容疑をかけられた新聞記者。
■ゴリアドキンの夜
急行列車内で起きたロシア皇女のダイヤをめぐる犯罪に巻き込まれた舞台俳優。
■雄牛の神
パンパの大草原を望むテラスで雄牛の行進を眺めつつ刺殺された農場主。
■サンジャコモの先見
勲章受勲者の一人息子と婚約した娘はなぜ毒殺されたのか。
■タデオ・リマルドの犠牲
下町の安ホテルに集う人々に新来の田舎者がもたらした波紋とその結末。
■タイ・アンの長期にわたる探索
雲南奥地の至聖所から盗まれた宝石を追ってブエノスアイレスへやって来た中国人魔術師の探索行。
◇訳者解説 木村榮一 -
Posted by ブクログ
大作家2人の共作、しかもミステリーということでワクワクしながら読んだのですが、割と難解で読むのに時間がかかってしまいました。
身に覚えのない殺人の罪で服役中のドン・イシドロ・パロディのもとに様々な依頼人がやってきて話をし、彼が独房から出ることなく事件を解決していく連作短編集。
とにかく相談者たちがみんな饒舌。大袈裟な話し方をしたり、見栄を張ったり、脱線しまくったりで、肝心の事件の全貌が分かりづらいのです。各短編は事件編と解決編に分かれているものの、事件を解決するのを楽しむというよりかは彼らのお喋りをどれだけ楽しめるか(耐えられるか)、みたいな感じの作品でした。
収録されいる中では電車の話とホテルの話が好きでした。 -
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20世紀ラテンアメリカの作家ボルヘス(1899-1986)最晩年の短篇集、1983年。
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自己への拘泥という依存からの解放を、精神からも肉体からも解放されるということを、精神と肉体から抜け出る秘密の抜け道としての何かを、求めていた。自己がどこともなく解消されて、喪失すべきものが実ははじめから喪失してしまっていたということになれば、喪失の前提条件が予め解消されてしまっていたということになれば、そもそも迷子になる布置そのものがなくなってしまっている、ということになる。
主/客、自/他、有/無、同一/差異、区別/混沌、、現/夢、生/死、実/虚、能動/受動、自由/運命、、始/終、先/後、因/果、内/外、上/下、左/右、天/地、遠/近、大/小、、真/贋、始源/模倣、原本/複製、根源/派生、作者/読者、、メタレベル/オブジェクトレベル……
ボルヘスの不思議な作品を読んでいると、これらの対立がくるりと反転して、そうした区別(秩序、同値類)と方向(序列、階層)が曖昧化され解消してしまう。彼の作品を通して、自分の、或いはもはや「自分」とは名指しできなくなるかもしれない何者かの、別のありようを、想像してみる。
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「外で私を待っていたのは、別の夢だった。」(p23「一九八三年八月二十五日」)
「作品はその描き手を必死になって救おうとする。」(p154「解説」)
「読み手の役割がもっとも重要なのだ。読み手であって、書き手ではない。ボルヘスさんは読み手が書き手の仕事を引き継ぐのだと信じている」(p156「解説」) -
Posted by ブクログ
ホルヘ・ルイヒ・ボルヘスとアドルフォ・ビオイ=ハサーレスが、古今東西の書物からが収集した幻想的な物語。
河出文庫さんが斉藤壮馬さん(※読書家で有名な声優)とコラボフェアをやっていた際に購入した1冊。タイトルにボルヘスの名が入っていますが、ボルヘスの作品集というわけではなく、彼が様々な物語から収集した掌編・あるいは断片を収めたアンソロジーのようなものです。
有名な作品の欠片や、古今東西の神話や故事、伝説。出典ジャンルは様々で、実はしれっとボルヘスかハサーレスの自身の創作物も混じっているそう。
日本人的に比較的なじみ深い収録物語で言うと、例えば荘子の『胡蝶の夢』。授業などで漢文で見たことがあり、なんなら漢文のままある程度読める人もいるだろうことを考えると、それを英訳してさらに日本語訳されたものをまた読んでいるのかと考えると、とても面倒で贅沢で面白いことをしている気分になります。 -
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「書淫」ことボルヘスらが選ぶ、珠玉の超短篇92!
どれだけ長くなっても、見開き3ページほどしかありません。しかし、短いからとてすぐに読みおわるわけではないのだなぁ…。ひとつの超短編に5分以上費して考えこともざらにあります。いい意味では深奥な趣がありますが、不親切な部分があるといえなくもないです(まぁ、それが真骨頂なのですけれど)。と言うのも、抜き取りの脈絡性があまりに薄いので、パッと呼んだだけでは「ン!?」となるような場合が多い。何作か知っている作品からの抜粋もありましたが、いかんせん全然違うニュアンスの話にも見えてきて、これがまた不思議で面白い。バロウズ『裸のランチ』を思い出しました。
『罪深き目』『預言者と小鳥と網と』『学問の厳密さ』あたりがお気に入りかな。『学問の厳密さ』とかは二階堂奥歯さんの日記とかにも引用されてた気が…。 -
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ボルヘスとビオイ=カサーレスが選りすぐった
古今東西の奇妙な断章、92編。
表題に「怪奇譚」とあるが、読んでみると怪奇色は薄い。
むしろ小さく笑ってしまうシュールで滑稽な情景が並ぶ。
次々にページを繰って短い物語に触れ続けると、
まるで夢の入れ子に囚われたような感覚に陥る。
以前どこかで読んだはずの断章もあるのだが、
詳細を思い出せずモヤモヤしながら、
敢えて確認せずに「心地いい居心地の悪さ」を愉しんで
ムズムズするのも一興かと。
英語版からの重訳で、日本語訳は柳瀬尚紀先生。
ちなみに、解説によると、
世界中から掻き集めたお話の中に、
ちゃっかり偽書=ボルヘスの創作が紛れ込んでいるとか。