マリオ・バルガス=リョサのレビュー一覧
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フランスの社会運動家フローラ・トリスタンと、その孫であり芸術家のポール・ゴーギャン。作中ではこの2人の主人公の遍歴を交互に語る形で、物語が進んでいく。
活動した時代や領域は異なっているものの、この祖母と孫の生き様は驚くほど似通っている。周囲の無理解や抑圧に苦しみながらも、自らの理想の世界(作中ではときに「楽園」として描かれる)を貪欲に追い求め、しかし志半ばで力尽きる。無謀だと思いながもその生き方に説得力を感じてしまうのは、史実として語られる出来事の隙間を満たす、作者の創造力の成せる技なのだろう。そもそも、この一見ちぐはぐとも言える祖母と孫を照応させて魅力ある作品を組み立てる試みに、作家としての -
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想像をはるかに絶する
衝撃的な残虐な行為が
静かな筆致で描かれていく
なんども 本を閉じて
ふうっ の ため息が出てしまう
「闇の奥」を書いたコンラッドは
この本の主人公ロジャー・ケイスメントを
「イギリスの(正しくはアイルランド)バルトロメ・デ・ラス・カサス」
と呼んでいたそうだが
ケイスメント本人ではなく、彼を主軸に置いて著者バルガス・リョサの筆致を通すゆえに、より鮮明に、より印象深く、「帝国主義」「被植民地」のおぞましい実態が浮かび上がってくる
むろん、これはイギリス国を始めとする当時の植民地政策をとっていた全ての国の犯罪行為の暴露でもあるが、戦争行為を歴史の汚点と -
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ネタバレ2010年のノーベル文学賞受賞作家の最新作。
とはいってもスペイン語版がでたのが2010年なので
もう11年も前です。
これまでのリョサの本とは異なり、いわゆる歴史小越です。
実在の人物アイルランド人のケイスメントの人生を振り返る話。ケイスメンとはコンゴでそしてペルーで原住民の人権が蹂躙されているのを見聞きし、その問題の解決に取り組む。
その過程でアイルランドの問題も未開の部族の問題から敷衍すれば理解できることに想到する。コスモポリタンであるケイスメントがナショナリストになっていくという皮肉。
そしてケイスメントは同性愛者である。
理想と現実の間に挟まれながら、ケイスメントは突き進む。真剣 -
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ネタバレたぶん本書の「正しい邦題」は、「楽園への道なかば」、だと思う。
「ここは楽園ですか」と問うが、
「いいえ、楽園は次の角ですよ」と延々先送りされてしまう。
叛逆者ふたりは、ふたりとも、至れない。
楽園、なんてばかばかしいね、と生まれた瞬間から白けていた読者が、【1983年生まれが、2017年に読む】(何を見ても、はいはい「ここではないどこかへ症候群ね」)
楽園、という概念は発生当初から頓挫していたのだ、とわかっている現代の作者が書いた、【1936生まれが、2003年に書いた】
楽園、を求めて場所も身分も移動した画家の、身体的・精神的挫折や(とはいえ人食いへの無邪気な憧れは保たれていた)、【18 -
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やっと読み終わった〜(1ヶ月以上かかった)
実在した人物、女性社会改革運動家のフローラ・トリスタンと、その孫で画家のポール・ゴーギャンを題材にした小説。
フローラは19世紀パリ周辺、ポールは主にタヒチが舞台。フローラは労働者の団結を呼びかけ各地を回る。ポールはブルジョワの地位を捨て絵を描く。異なる時代を生きる2人が「反逆者」として生きてきた過程を章ごとに交互に描いている。
リョっさんの作品を読むのはは『街と犬たち』に続き2作目。正直なところ、読みながらもうラテアメ文学はしばらく読まない!と決めたほど読み進めるのが大変だったけど、読後感は悪くない。あとがき読むとリョっさんの他の作品読みたくな -
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ネタバレ原題は「La tia Julia y el escribidor」。1977年発表。
で、映画化されたのが、ジョン・アミエル監督「ラジオタウンで恋をして」(Tune In Tomorrow...)1990年。
出演は、ピーター・フォーク、キアヌ・リーブス、バーバラ・ハーシー。
バルガス=リョサ作品は邦訳された3分の1くらい読んだか?
中では一番読みやすかった。
読みやすかったから面白かったか? と問われたら、他の作品の難しさや重厚さ自体が面白かったので、本作は正直微妙。
といっても面白くなかったわけではない、ひたすら微妙。
まずは作者の自伝を反映している、義理の叔母フリアとの恋愛模様が、その