山川方夫のレビュー一覧
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山川方夫のエッセイ集。ここには30代で没した作家の永遠の若さが封じ込められていると言ってよい。しかし、その「若さ」は「未熟さ」とは異なる。『三田文学』の編集長を務め、江藤淳や曽野綾子などの才能を世に送り出した山川は、すでに20代のころから文学のその先を見通すことのできる、新鋭でありながら老練な作家でありプロデューサーであった。
山川は高名な日本画家の息子として、裕福な家庭に育った。「神話」というエッセイで、戦前に鎌倉へ「36年型ビュイック」で叔父の家族と一緒にドライブに行き、8ミリでホームビデオを撮った時のエピソードが語られている。山川は、「その日、叔父の8ミリの目が私を狙い続けたことへの恐 -
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終戦直前の疎開先で起きたある出来事のため、少年だった男は暗い記憶を持ち続けてきたが、長じてその地を再訪してある場面に遭遇し、自らの責任はなかったと解放の感を持ったのも束の間、思いがけない事実を知ってしまうという「夏の葬列」、教科書で読んだその作品が、作者の作品を読んだ初めてだった。どんでん返しの面白さとともに、戦争の悲劇とは言え救いようのない結末に恐ろしさを感じた記憶がある。
その後、作者は山川方夫という人であり、芥川賞の候補に何度もなったこと、ショートショートと呼ばれる作品を多数書いたこと、若くして交通事故で亡くなってしまったことなどを知った。
本書は、著者のショートショート全編を -
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山川氏は所謂純文学とエンタメの境界領域で活躍した作家さん。教科書に採用されたこともあって、代表作と目される「夏の葬列」も〝オチ〟の後に、主人公の独白が続くという、ショートショートとしては異形なもの。巻末の座談会にもあるようにショートショートに明快な定義なんてないのだけれど。とはいえ、望まない結婚を強いられそうになっている女性の屈折と飼い猫の死を重ね合わせた「猫の死と」や、発表媒体が三田文学だという「昼の花火」が、一般的なショートショートの概念を外れているのは間違いのないところ。他にもショートショートとしては歪さを感じさせる作が多い。むしろ、きちっとまとまっている方の作が、今の眼では古さを感じさ