ラグナル・ヨナソンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
どんどんダーク化が進んでいるラグナル・ヨナソン。その中でもあまりにダークすぎるスタートを切った女性警部フルダ・シリーズ第二作。第一作で読者側の概念をまず思い切りひっくり返すところから始めたヨナソンという作家は、本書でもフルダというダーク・キャラな中年女性警部をヒロインとして、彼女の出生の秘密に迫りながら、複雑に絡み合った人間関係のもたらす二つの事件を描く。
一方で孤立した別荘での殺人事件、さらにフルダが十年後に偶然担当することになった孤島での女性の謎めいた死のあまりに強い関連性に読者は、あっという間に引き込まれることになる。前作でフルダの運命に絡んだと言える、警察内部の悪辣な上司との絡み、そしてフルダの持つ不運とも言うべき試練のいくつかが並べられるに及んで、シリーズを覆う緊迫感はまたスケールアップするかに見える。
アイスランドという国の遥かさにまずは眼がくらみそうなのだが、作中で明かされる地名は無人島も含め、グーグルで検索することができるし、無人島なのに実際に建つ謎の別荘の画像は、一際目立つ状態で紹介されており、アイスランド在住の作家だからこそ書ける地の利は、警官三部作でもフルダシリーズでも紛れもなく表れている。
ましてやフルダは山登りを趣味とする孤独な中高年女性警察官であり、人口の極めて少ないアイスランドの大自然を前作ともども本作でも利用しながら、その絶海の雰囲気や孤立感を、人間世界の愚かな業(カルマ)に絡めてストーリーを構築しているように思えてならない。
全編、ページターナーでブレーキのかからない快作(怪作?)だと思うが、是非前作を読んでから本作を読んで頂きたいと思う。正常な神経の方であれば、さらに未だ見ぬ第三作から逆に読みたい(それでもどうやら楽しめるらしい)と感じるはずである。なぜ前作『闇という名の娘』のあまりにショッキングでフラストレーションのたまるラストシーンからこのシリーズを逆行しなければならないかの疑問は未だ解けていない。
本書のラストシーンは、そのフラストレーションを味わったものだけが感じられる深淵を覗き込むような感覚となるので、この響き合う谺のような奇妙で嫌な感じのシンクロ感を是非順番に読むことでしっかりと受け止めて頂きたい。 -
Posted by ブクログ
1978年10月、アイスランド西部フィヨルドへ秘密の週末旅行に向かう若い男女がいた。数日後、地元警察のアンドリェスは別荘で死亡している女性を発見する。
残されたセーターから彼女の父親が犯人と見たレイキャヴィーク警察のリーズルは、アンドリェスに嘘の証言させ、父親を逮捕する。
10年後、殺された彼女を偲んで4人の仲間が集まった。ベネディフト、アレキサンドラ、クラーラ、そして死んだ女性の弟・ダーグルだ。向かったのは、絶海の孤島・エトリザエイ。島にひとつしかないロッジで、4人は夜を過ごす。
その夜、ダーグルはベネディフトの何気ない思い出話に違和感を覚え、クラーラは暗闇に“彼女”の姿を見たと言いだすなど、次第に不穏な雰囲気に。そして翌朝、仲間の一人が崖から転落死しているのが発見される。
レイキャヴィーク警察から捜査に向かったフルダは、彼らから聞き取りを行ううち、10年前の事件に隠された、深い闇へと潜り始める。
やがて少女たちに起きた悲劇の真相が、フルダ自身の父の秘密とともに語られるのだが‥‥。
フルダの実父探しのくだりが、むしろ救いになっている。最後の最後はなかなか意味深であった。 -
購入済み
あっけない最後に絶句
もともと三部作の第一部がこの”闇という名の娘”だそうで、第二部以降は主人公ブルダの若い時代になるという。ネタバれになるので最後については書けないが、いわばどんでん返しのような舞台が用意されているので、読み手は、あれっ!そういうことなのかと驚くだろう。この作家が好きで全部読んできたが、常に次を期待させてくれる作家だと思う。アイスランドの風景も実によく描写されていて、すぐにでも行きたくなる。でも、常に死と隣り合せているような厳寒の地は、私のような軟弱者には、夏以外ちょっと無理だろうなあ。
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Posted by ブクログ
読み始めたら止まらないというのも、北欧ミステリの特徴なのかもしれない。本シリーズはアイスランド語から英語に訳されたものを日本語に訳した後、ようやく、ぼくら日本人の手に渡るという経路を辿るが、英訳化した出版社が、何とも頼りないことに、キンドル首位として有名になった作品から英語訳してしまったために、第一作→第五作→第二作と順番を前後させてしまい、シリーズとしての面白さを著しく損ねている。アイスランド語翻訳者が日本では希少なため、英語版からの邦訳となるから、英語圏出版社の通りの順番で書店に出回っているのが現状。作者にとっても読者にとってもそれはとても不幸なことだと思う。
北欧ミステリに関わらず、シリーズものには大きなシリーズならではのストーリー展開というものがある。とりわけ北欧ミステリは、人物の関連がシリーズの面白さの重要なファクターである。この大きな流れは一作一作の個々の謎解きの中ではなく、全体を通した大河の流れのように、個々の小さなエピソードという川が合流したり分岐したりして作り出されてゆくものだからだ。
その思いをより強くしたのは、第一作の後、キンドル売上が良く早めに翻訳されたという第五作に先に手をつけることなく、今春邦訳発売されたばかりの本作(第二作)を読み始めてすぐのことである。
第一作における主人公とレギュラーキャスト陣の流れをそのまま受けて、第二作ではそれぞれのその後の物語を紡いでいる。時にそれらは、第二作の主たるミステリプロット以上に重要な、シリーズの根幹に関わる要素となりそうで、さらにこの太い幹は、そのまま読者が甘受すべき本シリーズ最大の魅力であるように見えるからだ。
『太陽にほえろ!』で言えば、マカロニ刑事の登場を観た後に、彼の殉職を知らずして、いつのまにかジーパン刑事の主役物語を展開されてしまうのは酷ではないか? ということだ(いささか例えが古いのは、どうかお許し願いたい)。
そのくらい、読む順番とは重要なことなので、ぼくは二年も前に発売されているシリーズ第五作『極夜の警官』は、次の第三作、第四作を読むまで待つつもりである。たとえ一二年待たされようとも(宜しくお願いします>出版社&翻訳者様)。
さて、本書、主人公の若手警察官アリ⁼ソウルは、事件よりも前作より持ち越しの女性トラブルに悶々としている。この辺りのリアリティも本作独自の恰好悪さであり、それがまた良かったりする。土台カッコいいキャラクターなど、このシリーズには一人として出て来ないのだ。いずれのキャラクターも、何かの煩悩に引きずり回され、心理的葛藤を繰り返しながら、人口34万のアイスランドでは滅多に起こらないとされる犯罪の運悪い被害者は、あたかもその狂言回しのように、周囲の人間たちを真実の光で容赦なく照射し、世界を攪拌する。それらの動的に連関した個々のストーリーが実はとても良いのだ。
毎作毎に、レギュラーキャラが増えたり減ったりするのかどうか、今のところ不明だが、本書ではまさにそういう現象をも作者は示してくれている。シリーズの出だし二作目でこれほど掻き回し、人間たちの距離間を動かしてしまう作家というのは珍しいかもしれない。しかし、むしろそれを売りにするという点で、抜きん出た書き手、と言えるのかもしれない。
とにかく事件を軸として、人間たちを掻き回す。本書では、新しく極北の街にやって来るイースルンという女性が、まるでシリーズ・ヒロインのような存在感を見せ、事件の解決に対しても、実に重要な歯車の役割を果たす。同時に、ヒーローたるアリ⁼ソウルは、またも人生の重要な選択の局面に立たされる。連作シリーズとしての面白さとともに、白夜ミステリの流れもしみじみと楽しんで頂きたい。特に一作目では吹雪続きだった世界が、2年後の6月初夏を迎え、がらりと環境を変えている。極北の人口1200人の街は、首都レイキャヴィークのように、経済危機、噴火による火山灰大気汚染といった国家的マイナス因子から遠く、相変わらず美しい風景を見せてくれる。
極北という個性に、ミステリ、そしてそこに生きる人間たちの運命と、絡み合いが、心を釘付けにする物語。次作がとても待ち遠しい。傑作シリーズの一つであると思う。 -
Posted by ブクログ
アイスランドの作家ラグナル・ヨナソンの長篇ミステリ作品『白夜の警官(原題:Myrknaetti、英題:Blackout)』を読みました。
ラグナル・ヨナソンの作品は、8年前に読んだ『雪盲』以来なので久し振りですね。
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英国でドラマ化の人気シリーズ、第3弾!
アイスランド北部の町、ソイズアールクロークル近くの建設現場で、撲殺された男性の死体が発見された。
被害者は建設業者のエリアス・フレイソン。
シグルフィヨルズルに住民登録をしていたため、アリ=ソウルが捜査に駆り出される。
慈善事業にも関わっていたというエリアスだが、自宅からは大金の入ったスポーツバッグが見つかり、同僚からは陰の仕事に手を染めていた可能性を耳打ちされる。
一方、首都レイキャヴィークのニュース編集室に勤める女性ジャーナリスト、イースルンがこの事件の調査のため北に向かう。エリアスの元妻によれば、被害者は金や女性関係に汚かったらしい。さらに捜査関係者は、エリアスが行っていた不正の先で、ある少女が命の危機に瀕していることをつかむ。
その頃、アリ=ソウルの同僚であるフリーヌルに、脅迫めいたメールがいくつも届いていた。ある過去を抱えていたフリーヌルは、精神的に追い詰められていく。
噴火の影響で火山灰雲が垂れ込めるアイスランドの、白夜の二日間――。
捜査の先に見えたのは、日の沈まない極北の町に隠された暗い記憶の数々だった。
解説/小島秀夫
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2011年(平成23年)に発表された作品……首都レイキャヴィークより北極圏に近く、環状に連なる山とフィヨルドに囲まれて、空はいつも雲に覆
われ灰色にくすんでいて、かつては漁業の中心地として栄え、特にニシン漁は最大の漁獲量を誇ったこともあるという、アイスランド北端の人口1,200人ほどの小さな港町・シグルフィヨルズルを舞台にしたダーク・アイスランド・クライムシリーズ の第2作目です。
建設現場で撲殺された男性の遺体が発見される……アリ=ソウルは事件の背後にある人間関係の影を追い、レイキャヴィークからやって来た女性記者イースルンンは、別の角度から真相の断片に触れていく、、、
複数の視点が交錯しながら、町に眠る秘密が少しずつ輪郭を現していく……そんな構成が本作の魅力のひとつです。
警察小説としては十分に愉しめる内容でしたね……小さな町の人間関係、自然環境がもたらす不安、そして過去の出来事が静かに現在へ滲み出してくる構図はシリーズらしい味わいがありました、、、
ただ、個人的にはアリ=ソウルの公私混同”ぶりがどうにも馴染めませんでした……彼の若さゆえの未熟さ、と言ってしまえばそれまでですが、事件の捜査と私生活の問題が絡み合う場面では、どうしても引っかかりが残りましたねー もちろん、それが彼という人物の弱さであり、シリーズを通して描かれる成長の一部なのかもしれませんが、読者としては少し距離を置いて眺めてしまうところがありました。
アリ=ソウルのキャラクターにどこまで寄り添えるかで読後感は変わりそうですが、静かに進むミステリが好きな方、北欧の風土が生む独特の空気感に惹かれる方には、しっかり応えてくれる一冊だと思います。