あらすじ
映像化! 女性警部フルダ・シリーズ完結編。
本シリーズの第1作『闇という名の娘』(英題:The Darkness)の映像化が進んでいる。第1作は「翻訳ミステリー大賞シンジケート」の月別ベストを始め、多くの書評家に取り上げられ、第2作はミステリ作家の阿津川辰海氏など、日本の作家たちにも注目されている。
本国アイスランドや英米で人気を誇る女性警部フルダ・シリーズ、ファン待望の完結編!
真冬のアイスランド高原地帯。猛吹雪が襲う人里離れた農場に、一人の男が訪ねてくる。農場主の夫妻は、あり得ない天候の下での来訪を不審に思うものの、男を招き入れる。男はレオと名乗り、ハンティング中に仲間とはぐれたと言った。
やがて男は、夫婦の隙を見て家の中を探り始めた。
真冬にハンティングに来たという男の言い分がそもそもおかしかった。夫のエイナールが男の荷物を調べると、多額の現金とナイフが見つかる。疑念と怒りを抱いたエイナールはナイフを手にレオと対峙する。
妻のエルラは恐怖にかられて母屋を飛び出し、地下室へと逃げ込んだ。しかし、そこで待っていたのは底知れぬ闇と、永遠に続くかと思われる時間だった。
その頃、レイキャヴィーク警察の女性警部フルダは、若い女性の失踪事件を追っていた。
男優位の警察社会で自分の能力を示す必要があった。
一方、娘のディンマがフルダに心を閉ざしている様子なのが気がかりだった。家族の中で、思わぬ悲劇が進んでいた。
名うての書評家たちから絶賛された第1作『闇という名の娘』から、シリーズを追う毎に時間が遡っていくユニークな構成。最新第3作は、第1作で孤独な死を迎えたフルダの身に何が起こっていたかが、ついに明かされます。
警察小説としてだけでなく、女性刑事の人生を描く人間ドラマとしても読み応えのある本シリーズ。本作が手始めでももちろん可。ぜひご一読ください!
(底本 2021年7月発行作品)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アイスランドの女性刑事フルダ。夫と13才のかわいい女の3人家族でバリバリ仕事をしている所から始まる。
前2作を読んでいるとその後の悲劇がわかって余計に辛いが、フルダの孤軍奮闘ぶりは身につまされる。ジョンダーギャップの小さいアイスランドと言うが1980年代だとこんな風なんですね。
3作通してアイスランドの美しくも厳しい自然が登場人物の心象風景にも重なって印象的。
行きたいなぁ。
殺人事件なんてレアケースだと、書いてあるし。
Posted by ブクログ
フルダシリーズ三部作の完結編。
レイキャビークという首都の名前も、海岸線を縁取るニョロニョロとしたフィヨルドに囲まれたサイの横顔のような国の形も、随分身近に感じられるようになった。
前作から更に10年遡り、フルダは40歳。夫のヨンも娘のディンマもまだ生きている。
今回はクリスマスの時期に起こる事件で、舞台は人里離れた雪深い高原地帯の農場だ。読むだけで体が冷えるので、暖かい上着と熱いルイボスティーは必須だな。
近くの一軒家で一人暮らしをしている娘と過ごすクリスマスを楽しみにしているエルラと、その夫のエイナール。しかしドアをノックしたのは心待ちにしていた娘ではなく、一緒にきた猟の仲間とはぐれたという謎の男だった。
単なる遭難なのか、それとも別の目的があるのか。外は猛吹雪で、電話は繋がらない(雪のせいなのか、意図的に切られたのか)。おまけに停電になってしまう。ドアの外に出ることはできるが、これははっきり言って雪によって作られた密室に近い。
一方、レイキャビークにいる女刑事フルダは、娘のディンマに手を焼いていた。難しい年頃なのかもしれないが、親と一切口を聞こうとせず、自室に鍵をかけて閉じこもっている。楽しいクリスマスにしようと奮闘するものの、すべて無駄になってしまい、空回りする自分に焦るフルダ。そしてあの悲劇が起きてしまうのだ。
わたしは元々フルダに好意を持っていなかったが、これを読んで更に好きじゃなくなった。
「病院に電話してよ」と夫に頼むんじゃなくて、なんで自分で電話しないんだよと思った。刑事として優秀で、行動力があり洞察力もあるはずなのに、なぜそれは自分の家庭の中で発揮されないんだ。おかしいだろう。しかもまた肝心な時に、電話に出ないし。
事件の方は、非常にスリリングで面白い。3作の中でも断トツだと思う。一旦真実を知った後で、もう一度男が訪ねてきてからのやり取りを読み直すと、全く違った楽しみ方ができるので是非試して欲しい。
そして、クリスマス。やはり本場のクリスマスは雰囲気があるな。
クリスマスに必ず食べる料理、クリスマスイブには新しい本を読み始めるという習慣、ラジオ局から流れる讃美歌。
ここに出てくる女性は、みんな何かに閉じ込められてしまう。
ディンマもエルラもウンメルも、そしてフルダも。
そうそう、巻末におまけでクリスマスの短編が載ってました。
主役はアリ=ソウル。これから読むからね、待っていてくれ!
Posted by ブクログ
終わったところから始まる物語。時間を逆行して発表されてきた女刑事フルダのシリーズ三部作、早くもその完結編である。
これを読んだのは、北海道までをも巻き込んだ猛暑のさなかだったのだが、作品世界は雪に閉じ込められたアイスランドの一軒家である。とりわけ、三人だけの登場人物による恐ろしい駆け引きの第一部は、大雪で閉じ込められ、血も凍る恐い心理小説なのである。まさに猛暑対策にはこの上ない一冊なのだった。
アイスランドという国、その特色を生かした寂しさと孤独と、辺縁の土地を襲う暴風雪。それらが重なるだけでも、いわゆるヒッチコック的スリラーの完成度が極めて上がる。そこに加え、前二作によるヒロインの運命と、娘についての叙述を読者は知っているという困った事実である。
本書は、恐ろしく少ない登場人物による300ページ強の小説でありながら、いやな汗をかきそうな第一部の怖さ、そして一気にその世界をひっくり返してしまうかのような第二部への驚愕の展開が、何といっても読みどころである。
その他にも、フルダが担当することになる行方不明の少女はどこへ消えたのか? という付きまとう謎がある。これは本ストーリーとの関係性はどうなのか? 読者は何もつかまされぬままに、本書の恐怖と不思議に立ち会ってゆくことになる。この恐怖の館の驚くべき仕掛けとは? 物語の主たる装置はどこにあり、どう動いているのか?
近年、登場人物や舞台装置の目まぐるしい展開が多くページ数も費やして説明に終始した小説の多いなか、この作品のシンプルさはどうか? それでも作られてしまう驚愕の展開とストーリーテリングは、何なのか? この作者の作品は、おしなべてそう厚くない長編でありながら、しかし、外れがない。アイスランドという国の人口の少なさと犯罪の希少さ、そこに生きる人間の寂しさのような風土まで含めてミステリーの素材としてしまう作者の力技が素晴らしい。
本シリーズは三作を時間的に逆順で書かれることにより、読者側はヒロインの未来を知りながら読むことになる。また、未来において語られていた事実をも知っているからこその不思議も感じることになる。だからこそ過去の時系列にヒロインとともに遡行することで、怖さが高まる、という経験を珍しくさせて頂いた。
おそらく逆に時系列で三作を読んでみても良いのかもしれない。そうしたチャレンジ体験者のレビューについても改めて伺ってみたいものである。
Posted by ブクログ
フルダシリーズ三部作の最終巻。
重い内容ながら読みやすく、あっという間に読んだ。
三部作を通してフルダが対応している事件よりも彼女の家庭が気になる。
二作目までで家庭で何が起こったのかは匂わされてはいるが、本作でもフルダの心情は描かれるが実際家庭で起こった出来事が詳細に語られることはない。
本作が読めるのを楽しみに待っていたのでその辺をもっと詳しく読んでみたかった気もするが、重すぎるテーマゆえ、娘と夫に関しては淡々と事実が描かれるだけでも胸が苦しくなる。
三作通して、アイスランドの凍てつくような寒さも相まってひたすら重い雰囲気の作品ではあるが、名作である。
Posted by ブクログ
フルダシリーズ、最終章。3作め。
遡ってシリーズになっているので、彼女の、苦しみを、わかりつつも、最後は、結果的に、~なんだよね。って!
事件における物語は、いつも解明される段階で、味わい深い。もう一度、1作めから、読みたくなった。
Posted by ブクログ
そういうことか、、うまいな、とうなってます。アイスランドの厳しい冬が少しだけでもイメージできました。全く外に出られず、外と繋がる手段もない、テレビもない、なんてとても無理です。誰もがそうしたくなかったのにな、、とため息が漏れます。
Posted by ブクログ
(アイスランドに雪が積もっていない時期があるのかわからんが)雪のせいで停電したり、交通機関が麻痺したり、平気で外界との連絡が取れなくなる時があり、恐怖ともに「都合悪いことは嘘ついちゃえばまずばれねえ」みたいなのある。(新潟県などは道路にお湯じゃばじゃば巻いているので滑らない、凍らない、雪かきしなくていい)(その分言い訳きかない?)
なんか雪国に限らず、都合悪いことは隠蔽します。でもなんかあったら警察とかはばっちり助けてくださいね、みたいなの、うーん。でもやっぱり日本人って大真面目で少しはサボれ。と思った