バルガス=リョサのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大変興味深かった。
ブラジルで実際に起こったカヌードス戦争(1896-97)の話。
救世主と呼ばれたアントニオ・コンセリェイロ。彼が説教をして歩いていると次々と人が集まり、彼と彼を崇める何万もの人がカヌードスに定住する。国家をアンチキリストと称し軍と戦い、軍に全滅させられる。
読んでいると、そこから生じた様々な思いや考えが頭を占めてしまい、のろのろ読みになって読み終えるのにだいぶ時間がかかってしまった。
感想とかどんな本なのかとかまとめられるような作品ではなく、人間の、社会の、全てがある気がする。
上巻は矛盾について皮肉を込めて書いているという印象。
例えば、人殺しが信仰に目覚めてやっと人を殺す人生から抜け出せたと安堵するのに結局その信仰の為に多くの人殺しをしなくてはいけなくなるとか。思想や主張、宗教や戦争の矛盾を強く感じた。
下巻は人間の本能的な欲について書いている印象。
生きたい、愛し愛されたい、性への欲望、怒り。
登場人物が多様で、犯罪者(犯罪者から信者になる複数人)、革命を見たいと願う者、記者、農園主、権力者、軍人兵士、体に異常がある人々、商人など、それぞれが語り手となって個人の思いや人生を語ったり同じ時をそれぞれの立場から語ったりする。
そのような構成であるのに発端となるコンセリェイロだけは何を考え何を思っているのか全く書かれず、彼が語り手となることはない。彼の言葉は神の教えだけ。
私にはそのことがこの作品を名作にしているように感じた。
本当に色々なことを考えてしまう本だった。 -
Posted by ブクログ
南米の先住民族
伊坂幸太郎が、わけがわからないけど、すごいとほめてゐた。
語りがひきこまれる。だいたい脱落するのは3章以降だと思はれる。
第1章は、語り手が、南米部族を撮影するカメラマンの写真展を見つけた話。
第2章は、顔に痣のある語り手の友人が、だんだんとペルーの部族にひきこまれて狂信的になる話。教会での母親とのじゃんけんエピソードがよい。
第3章は、タスリンチ族がジャングルで苦難をつきすすむ話を、語り手=顔に痣のある友人が語る。部族にとっての神や悪魔、占い師の名前が出てきて、意味が取りづらい。呪術的・神話的である。ピラコチャはおそらく定住者の白人のこと。 -
Posted by ブクログ
何か物足りなさを感じた。
『緑の家』のような複雑に絡む物語と同じ手法を取っているのだけど、登場人物が少ないので平易に理解することができる。
しかしながら物足りなさも感じた。
そこまで面白い話ではなかったというか。
自分の読解不足かもしれないが、語り部がそこまで重要な人物であるのかがどうも掴み切れなかったので。
秘密の存在ならば他民族が語り部になりえるのだろうか、という疑問ばかりが残ってしまった。
青春小説として自分は読んだというのが正直なところ。
ジャンルは違えどもクラカワー『荒野へ』にも似た読後感があった。
青春・自我・文明の間で煩悶する青年像は優秀な人材にのみ許された特権だと思う。
ただそれも古臭い感は否めないのだけど。
またこの作品の場合、きっちりと現代文明を描写していることから、その対比としてのマジックリアリズムが鮮明になっており、そういった意味で非常に分かり易くなっている。
バルガス=リョサはこの作品に随分執心しているようだけど、そこまでのものかなと個人的には思ってしまった。
その辺を踏まえて読むとまた違った味わいが出るのかもしれない。