末國善己のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
(山本周五郎ファンではなく、少年小説好きの感想です)
表題作「少年間諜X13号」に感じる寒々しさ、一種の凶気は果たして意図的な皮肉なのだろうか。
それとも「"時代の熱狂"」に流されたものなのだろうか。
「少年間諜~」では少年兵たちが自らの命を捨てて戦う。
主人公率いるのは死を厭わない少年兵だけの部隊だ。
「一人残らず死ぬんだ」は主人公が仲間を鼓舞する言葉である。
また後年「特攻」と呼ばれる、捨て身決死の戦術も描かれる。
狂気と熱気。愛国ありきの理不尽と無茶。始終それが続く。
「でも戦前ならそんな感じなのでは…?」と思われるかもしれないが、本作とほぼ同年(昭和9年)に書かれた平田晋策の作品などは無闇矢鱈な「決死」は描かれない。
同じ日米戦を描きながらも、戦うのはあくまで軍人=大人であり、彼らも矢鱈めったら死ぬことを美徳と叫ばない。
逆に敵に撃墜される味方をみて「可哀そうだ」と涙ぐむシーンもある。
また優秀な主人公たる少年少女も、敵要塞破壊を単身命じられたり、すぐさま地元勢力を率いて決死隊を組むという無茶苦茶な命令を受けることもない。
彼らは軍と行動を伴にして、時に役に立つだけの存在だ。
子供だから怖がることもあるし、ビックリすることもある。そんななかで勇気を奮い立たせたり、味方の無事を祈る。
平田晋策が軍事ジャーナリストであったということもあるのだろう、人物や作戦に突飛なところは少ない。(日本側の兵器はさすがにチートだが)
同じ年代の作品でも「捨て身」や「決死」は当たり前ではないのだ。
(なので、本書収録作が戦前軍国小説!と思われるのもあれなので、平田晋策作品なり山中峯太郎作品も読んでほしいなぁと思うことしきり)
この作品には熱病のようなものが見える。それは戦争末期の特攻や苛烈な標語の持つものに似ている。
要所要所で「勇敢に死ぬためにこんな無謀な作戦・戦法をとってるのか?」と思ってしまうようなシーンも多い。
素人目にみても「それは犠牲前提のやり方では?なぜ?」となる箇所が多々。
平田作品なら、秘密兵器を出さなくても犠牲者を強いることなくきちんと作戦だてて撃退するだろう。
そして「わが日本海軍はこれほど強いのだ、きちんと組織された我々だからアメリカにも負けないのだ」と説くだろう。
少年兵の犠牲を描かなくても。
死を厭うなという台詞、読者と同じ年頃の少年兵の死に様。
これらは、小国民を鼓舞するためだろう。
しかし、それは著者の本心なのか、時代にあわせたものなのか、それともこの狂気のような熱気は皮肉の現れなのか。
時代背景は承知の上で、戦前の少年小説・冒険小説を楽しんでいるが、そういう自分でも嫌悪感がともなう作品だった。
「生きてお国のために働くのも本当だ」というヒロイン?の言葉が作者の本心なのだ、と思うよかない。
あ、突飛なら突飛に降りきってくれたほうが面白いという立場からすれば、「血史ケルレン城」の少年軍事探偵・東くんはキャラもたって、相棒ともどもいいキャラだと思いますです。
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Posted by ブクログ
「野村胡堂」の連作時代小説『櫛の文字 銭形平次ミステリ傑作選(英題:Letters On a Comb)』を読みました。
ここのところ、時代小説が続いています。
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捕物帳のスーパーヒーロー、謎に立ち向かう!
なぜ、犯人はわざわざ櫛に暗号を彫ったのか?
神田明神下に住む、凄腕の岡っ引「銭形平次」。
投げ銭と卓越した推理力を武器にして、子分の「ガラッ八」と共に、江戸で起こる様々な事件に立ち向かっていく!
暗号が彫られた櫛をきっかけに殺人が起こる『櫛の文字』。
世間を騒がす怪盗・鼬小僧の意外な正体を暴く『鼬小僧の正体』。
383編にも及ぶ捕物帳のスーパーヒーローの活躍譚から、ミステリに特化した傑作17編を収録した決定版。
解説=「末國善己」
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捕物帳のヒーロー「銭形平次捕物控」シリーズ全383篇から書評家「末國善己」を編者として、ミステリに特化した傑作17篇を厳選した決定版です。
■振袖源太
■人肌地蔵
■人魚の死
■平次女難
■花見の仇討
■がらッ八手柄話
■女の足跡
■雪の夜
■槍の折れ
■生き葬い
■櫛の文字
■小便組貞女
■罠に落ちた女
■風呂場の秘密
■鼬小僧の正体
■三つの菓子
■猫の首環
■編者解説 末國善己
「銭形平次捕物控」シリーズは初めて読みました… ミステリとして読み応えがあったし、「平次」と子分の「ガラッ八」の掛け合いのテンポの良さ等も魅力的でしたね、、、
「平次」が人情派なので、哀しい事件でも後味が良いものが多かった印象です… そんな中でも、特に印象に残ったのは以下の3篇ですね。
身投げした盗賊の妹「お楽」を助けた「平次」だったが、「平次」が「お楽」を家に連れ帰ったのを機に女房の「お静」が出ていき、その留守中に二人の美女が押しかけてくる等、「平次」が女難に見舞われるという展開が一転… 「お楽」が殺され「お静」が疑われるシリアスな展開への発展や、「お楽」の身体にあった傷の状態から「お静」の無罪を証明する等のミステリ趣向が盛りだくさんの『平次女難』、
呉服屋「四方屋次郎右衛門」の家で後妻の連れ子「お宮」が殺され、「三輪の万七」から犯人の疑惑をかけられた先妻の娘「お秀」を救うため、「平次」が乗り出すが、主人の「次郎右衛門」、手代の「喜三郎」、当の「お秀」、さらに「平次」に捜査を依頼した奉公人の「お谷婆さん」までが、自分が犯人だと主張するという不可解な展開となり、「平次」は鋭い観察眼をもつ「四方屋」の食客「寺本山平」と推理合戦を行い、「平次」が「寺本」の推理の矛盾をつき鮮やかに謎を解く『女の足跡』、
「ガラッ八」が叔母の知り合いから櫛に刻まれた暗号の解読を頼まれ、「平次」が見事に暗号を解読するとともに、暗号を作った動機を探ることで真相にたどり着く『櫛の文字』、
この3篇はミステリ要素が強く、謎解きを一緒に愉しめたので印象強かったんでしょうね… 機会があれば、「銭形平次捕物控」シリーズの別な作品も読んでみたいですね。 -
Posted by ブクログ
先日読んだ、木枯らし紋次郎シリーズのミステリー傑作選がなかなか良かったので、たまたま見つけたこちらの作品も読んでみた。
初めて読む眠狂四郎シリーズ。
円月殺法くらいしか知らなかったので、どんな男かと思っていたら、紋次郎とは真逆のキャラクター。
編者あとがきによると、作家さんが当時流行っていた正統派時代物ヒーローとは真逆にしようと、眠狂四郎というキャラクターを作り上げたらしい。
水野忠邦の側頭役・武部仙十郎の依頼で様々な事件の解決に取り組むことが多いものの、武部に飼われているというわけでもなく、好奇心のままに事件に首を突っ込むこともある。
何より女好き。気ままに女に情を掛けておいて気を持たせたり突き放したり。それでもモテるのだからよく分からない。
女だけではない、狂四郎と何かとコンビを組むスリの金八まで懐いている。天然の人たらしなのか。
信仰を捨てた『ころび伴天連』の父と、父に襲われて自分を産んだ武家の娘である母との間に生まれた狂四郎。
作品集の中では父に復讐の刃を向けるシーンもある。
さしたる故なくとも刀を振るう、生きる凶器のように感じる場面すらある。
だがそういうダークヒーローを徹底したから人気があったのかも知れない。
ミステリー傑作選という割には一編が短いので、謎解きをする間もなく終わってしまうものもある。
それと、結構艶っぽい話が多い。現代のような生々しい描写はないものの、大人向けだろう。
ただ凶器や物の消失、密室殺人、花嫁の首が斬られ代わりに罪人の首が繋ぎ合わされているという、横溝先生の作品のような話もあってワクワクした。
しかしやはり一話が短くて、あの人は、あのことはその後どうなったのか置き去りな感じがちょっと勿体無い。