檀上寛のレビュー一覧

  • 明の太祖 朱元璋
    面白かった!ほんとうに
    朱元璋は、理想を現実にするために、常に前を向いて進み続けた人なんだと思った。実際どうかは知らないけど、そう考えると熱い気持ちになれるから良い。
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    明初体制は「固い体制」 だった。それは里甲制、身分・職業・移動の規制、現物経済の維持、朝貢一元体制などあらゆる面で国家が社会に規制をかけるものだった。この体制はそれまでの①中華と夷狄の抗争、②華北と江南の対立、③大陸中国と海洋中国の相克、これらを克服するのに必要だったのである。それは「近代世界システ...続きを読む
  • 明の太祖 朱元璋
    元朝政治が政治闘争で乱脈をきたし、統治能力を失い叛乱が多発したことから筆が始まる。
    明朝の構成員は功臣武官の淮西集団と知識人文官の浙東集団に大別。双方で対立はあったがいずれも南人であり、北方との統合を朱元璋は期す。
    科挙実施も、合格者(=官僚)が南人ばかりを見て中断。
    南人官僚や地主の不正蓄財を解消...続きを読む
  • 明の太祖 朱元璋
    明王朝を立てた朱元璋は、即位後の残虐性がことさら取り上げられるが、モンゴル支配以来の華南の官民社会構造や、彼の部下たちの派閥争いなどの背景があり、そのモンダイヲ乗り越えるために画一的な価値観を示そうと強権的な手法に走ったのだと理解した。現代中国の構造理解にまでつながる、貴重な伝記。
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    靖難の役(靖難の変)は明朝初期に燕王が建文帝に対して起こした内戦で、勝利した燕王が永楽帝となった。靖難は「君難を靖んじる」という燕王側の主張であり、君側の奸を除くという大義名分だった。結果は権力の簒奪であるが、最初は建文帝側が諸王の勢力を削ぐために、冤罪で諸王を削藩し、庶民に落としたり、自殺に追い込...続きを読む
  • 明の太祖 朱元璋
    1994年刊行のものの文庫版。元末の群雄割拠を勝ち抜いた明の建国者の伝記。知識人や江南人材との関わりを重点に、貧農から儒教的君主への展開が描写される。理想と現実の落差に苦しんだ人物という印象を持った。
  • 明の太祖 朱元璋
    同じ著者の「永楽帝」が面白かったので,読んでみた.清朝の皇帝たちが朱元璋を高く評価していたということを初めて知った.
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    第3巻は明代史。第1巻では中華と夷狄の抗争、第2巻では華北と江南の南北対立、第3巻では草原を含む大陸中国と東南沿岸の中国との相克を描く。筆者は、明初はこれらをなんとか統一王朝に整理・収斂され、多様化・多元化にも一元化・画一化の枠がはめられた時代と説く。この体制はやがて弛緩し、破綻して清朝の時代を迎え...続きを読む
  • 明の太祖 朱元璋
    疾病と政治的混乱の中、最下層民から成り上がった男の記録。日本でいえば豊臣秀吉にあたるがスケールは比べようも無い。
    聖賢と豪傑と盗賊の要素が入り混じっていたとあるが頷ける。戦乱の中で日々勉強して知見を広めた事、鉄の掟で経済力に勝る敵を打ち破る、明の建国後の復興に成功するなどはやはり英雄と言える。彼の資...続きを読む
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    中華王朝の特徴として本シリーズでは3つの対抗基軸があげられている。
    ①中華と夷狄、②華北と江南、③大陸中国と海洋中国
    この3つにまがりなりにもケリをつけたのが明王朝というわけだ。北の権力で豊かな南方を支配する体制だけど、経済と流通の発展が国のあり方を変えていくことになる。そして最後の中華王朝になるわ...続きを読む
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    これまで詳しくなかった明朝について、見通しを得た。
    モンゴル(元朝)の退潮後、どのように立て直すか?が課題だった明初。中国の秦に発する国家が社会をコントロールする流れ、それは見た目は儒家で、やっていることは国家の支配論理(法家)。これはおそらく現代の中国でも流れている、西洋の近代思想とは違う流れ。中...続きを読む
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    明という時代の重みが伝わるコンパクトだが考えさせられる良書。
    明が何を背景に生まれ、何を重荷として滅亡に至るのかを考える重要性を学んだ。
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    岩波新書の「シリーズ中国の歴史④」は、「陸海の交錯ー明朝の興亡」と題された1冊。これまでの3冊とは異なり、単一の明朝300年の歴史叙述にフォーカスされる。

    ①中華と夷狄の抗争、②華北と江南の南北の対立、③草原を含む大陸中国と東南沿海の海洋中国との相克、以上の3つの対抗軸が「明初体制」によっていった...続きを読む
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    明というのは混迷を窮めた時代であったことが痛切に描かれている。
    特に、時の権力者たちについては手厳しい論評が目立つ。

    経済の発展、社会階層の融和。現代の感覚でいうと是であるこれらの要素が国家衰亡の一因であるというのには不思議な感覚をおぼえるが、こと民主的な社会においては治世の巧拙が命綱ということな...続きを読む
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
    「儒教的秩序」というのがどういうことなのかについての理解を深められた。自分には朱元璋みたいな人が一番の理想家のようにも見える。
  • 陸海の交錯 明朝の興亡
     明朝というと、洪武帝が創業の功臣や臣下を何度もかつ大量に処罰し、皇帝専制体制を打ち立てたこと、甥建文帝から永楽帝が帝位を簒奪したこと、鄭和の大遠征、北虜南倭、前期倭寇・後期倭寇、秀吉の朝鮮出兵といった断片的なトピックとしての知識くらいしかなかった。

     
     著者は本書において、明朝の歴史的意義を次...続きを読む