中川毅のレビュー一覧

  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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     福井県・水月湖の湖底には約7万年分の「年縞」と呼ばれる地層が静かに刻まれている。一本一本の縞模様は過去の気候変動を克明に記録する「地球の年輪」だ。
     この年縞を読み解くことで人類がどのように寒冷化や温暖化に適応し生き延びてきたかが見えてくる。食料の確保に苦しんだ時代もあれば気候の安定によって文明が栄えた時期もあった。
     今の気候変動は過去の激変とは異なる。人類自身がその要因となっているのだ。化石燃料の使用や森林破壊が未曾有の温暖化を引き起こしている。
     年縞の知見を活かし気候変動にどう適応するかを考えることが現代の私たちに求められている。

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    2025年02月07日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    古気候学者である著者によって、地球気候の最新10万年ほどの様子を福井県・水月湖に堆積した年縞などの解読を用いて解説しながら、そのメカニズムを解析するための挑戦的考察が語られます。

    地球の気候変動というのはとてもダイナミックで、人類が登場してからでも海面の高さが100m以上変動するような事件が繰り返し起こってきたそうです。大きく、氷期と間氷期というように、寒冷期や温暖期が区別されますが、そこで働いている力が何かについて大きな示唆を与えたのが、およそ100年前に唱えられたミランコビッチによるミランコビッチ理論なのでした。

    ミランコビッチ理論は、地球の公転軌道の変化によって、地球と太陽の平均的な

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    2024年11月22日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    気候変動問題は昨今注目を集めているが、古代の気候変動を知るとそのスケールの違いに驚かされる。現代は氷河期の間にある温暖で安定した間氷期に当たり、非常に落ち着いている。気候は線形に変化するものではなく、不安定な変化が内在するシステムである。また、地球の公転自転運動の影響を受けて変化するダイナミックなシステムである。
    筆者の専門は花粉の古代の地質に含まれる花粉をもとに過去の気候を分析することが専門らしい。福井県にある水月湖の年縞特定のエピソードも非常に興味深かった。

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    2024年11月02日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    人の一生からは想像できない時間軸・自然を相手にした謎解きを読んでいるようで面白かった.

    地球はこれまでどのような気候であったか.それを踏まえ未来,人類はどのような気候に相対することになるのか.
    この複雑で難解な問いを紐解いていくにはまず,過去の地球・地域の気候を明らかにしていく必要がある.

    長い年月をかけて蓄積した福井県の水月湖の湖底に眠る年縞は,この難解な問いに対して世界で認められた正確で緻密な物差しを与えてくれている.
    この年縞は現代から遡って約7万年という長い期間に対する非常に正確で緻密な史料を提供してくれており,本書ではその例として放射性炭素年代測定におけるキャリブレーションの提供

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    2024年01月02日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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     地球の気候変動を福井県にある”水月湖”の堆積物から調査し、気候のメカニズムを解き明かしていく。内容は、すっきりしていて読みやすい。ただ、私の場合、気候変動という巨大なスケールについてイメージをつかみにくく、流し読みになってしまった箇所もあった。

     気候変動の歴史や予測は、酸素や水素、炭素の同位体から推測することができ、氷期と温暖期が定期的に入れ替わっていることが発見された。これは、地球の公転軌道の影響、すなわち離心率変動が原因であり、「ミラコビッチ理論」と呼ばれている。通常は、氷期の期間がほとんどだが、地球が楕円軌道を描くとき、温暖になる傾向にある。

     水月湖の堆積物が上質な理由は、酸素

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    2023年09月23日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    昨今では我々人間の活動が地球温暖化を進めていると騒がれている。
    ここ近年のCO2濃度とか気温の上昇とかのグラフを出して、「このままではまずい」、「どうにかしないと」と。
    もちろん人間の活動によって地球の気候が変動している部分もあるが、それは100年とかの話であって、地球からしたら一瞬の出来事だ。数千年、あるいは数億年単位で地球の気候変動を見ると、現代の気候は寒冷な方で、かつ安定している。
    かつての地球の気候は変動が大きく、気候が大きく変わることを予測することは非常に難しい。
    だから未来予測でグラフの線を単純に伸ばすだけは理にかなっていない。そんなのは分からないが正解だ。

    多くの要因が存在して

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    2023年02月13日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    現在は来る2050年・2100年に向けての温暖化対策が世界で講じられているところですが、本書で扱う時間軸は10万年であり、2度や4度をはるかに超えるスケールで寒冷期を含む気温サイクルがあることがわかります。果たして現在の脱炭素化取り組みは正しいのかとふと考えてしまいそうですが、それだけ地球の歩んだ歴史が人類史対比であまりにも長いということの証左であるといえます。

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    2022年07月20日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    水月湖、年縞。聞きなれない言葉だが、考古学と気候をつなぐ貴重な場所とそこからだけ得られる尊い過去の記憶。研究に対する熱量にあふれた著者が、過去の気候変動の波の中に誘ってくれる。緩やかにそして唐突に訪れる激しさに、気候さながらに導かれる先には、すっかりこの分野の魅力を感じる自分を見つけることでしょう。良い本です。

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    2022年05月10日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    地球は温暖化が進みつつあるが、果たして100年後の気候がどうなっているかは誰にも分からない。
    本書はそれを想像するヒントを与えてくれる。

    水月湖の特殊性や世界基準となった経緯、数万年単位の気候変動など初めて知る事が多く、知的好奇心も満たしてくれる。

    この先の気候変動がどうなるかは分からないが、氷期も生き延びた人類の賢さと多様性が今後ますます問われると思う。

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    2022年02月23日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    数万年という過去を探りだすという気が遠くなる作業。エジプトやシリアなどに砂漠があるのも、ヨーロッパが平野になったのも森林を焼き尽くしたからだし、この100程度のエネルギー革命が気候の変動も起こしている。
    しかし地球の歴史からいえばほんの刹那。
    日々の営みを見返すことから始めよう。

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    2021年12月07日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    2021年のノーベル物理学賞を真鍋氏が受賞したことで、二酸化炭素の温室効果による地球温高にあらためて注目が集まっています。
    ですが、地球の気候変動を考えると、現在の「地球温暖化」問題が実は産業革命のはるか前、8000年前から起こっていたとも言え、さらにはその「人類による地球気候の影響(温暖化)」によって、本来であれば到来するはずであった氷期(人類文明の危機)を回避しすることができたとも言えるのです。
    さらに、この後の世界で「地球温暖化」が進むのか、あるいは「氷期」が再来するのか、その分析を過去の地球の天候の歴史を紐解くことで分析しよう、というのが本書の内容です。

    未来を予測することは難しく、

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    2021年10月16日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    気候変動や気温の上昇は、人間の活動によるところが大きいという点が現在クローズアップされています。本書では、地球規模の気候変動のより長期のサイクルが存在し、それが10万年単位で楕円と円に変形する地球の公転軌道であったり(ミランコビッチ理論)、2万3千年ごとに変わる地軸の傾きの変化(歳差運動)によることが説明されています。加えて、火山活動、大陸の移動、人類の活動によるメタンや二酸化炭素の排出など、複数の要因が関連しあって気候や気温に変化を与えているわけですが、こうした複数要因の関連性により、二重振子運動の軌道を予測することが不可能であるように、初期条件のわずかな違いが増幅されてカオスを発生させるよ

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    2021年05月08日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    人類の不自然な行動が地球の寒冷期を遅らせているのかもしれないといった考察が面白かった

    最近のよくある地球温暖化問題をメインに扱う書籍かと思いきや、タイトル通りでこれまでの地球の気候やその研究について書かれていた
    無知な分野であったため大変勉強になった
    また難しい用語などもなく説明も丁寧でストレスなく読めた

    水月湖の研究について詳しく書かれていて興味が沸いた
    機会があれば水月湖を観光し、再びこの本を読んでみたいと思った

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    2020年06月11日
  • 人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

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    気候変動を語る際に我々の暗黙の前提として、これまでの有史以来気候が安定していたというバイアスがある。つまりこれから起こり得る気温上昇はイレギュラーな事態であり、人類の歴史上未曾有の危機が訪れるといった気候危機論が言われるのは、標準となる安定的な気候があってこそである。

    しかし本来は、地球の気候は安定していない。とくに10万年というスケールで捉えると、実はたった数年で7℃も気温が上昇した時もあれば、今よりも10℃以上低い時代もあり、海面は±100mも上下していた。そんな過去の気候の積み重ねを調査する年縞と呼ばれる地質調査上の標準が、実は日本国内にある。

    福井県三方五湖の一つ水月湖には、湖底に

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    2024年07月07日