普通の少女よりも小柄でひ弱な少女が、最終的には国のために化け物じみた某国の王子に対して弓を引く。
凄い物語でした(語彙力)
戦争ではなく武器を用いた競技会で国々のことを決めていく世界。
戦争がなくても、結局は、常識でも正義の心でもなく、力あるもの、強いものの意見が通ってしまう理不尽な世界。
その極み
...続きを読むが前述した、暴虐の限りを尽くす某国の王子。
そんな王子を競技会で倒すための切り札として連れてこられた少女は、本当に小さくて、剣もまともに振れないほど弱い。
体力もないし、足も速くない。
ただ、短弓だけは、他の誰にも負けない正確性を持っていた。
彼女が非凡でなかったところは、そのただ一点。
但し、それも彼女の兄で優秀な騎士から見れば、長年短弓しか扱えず、それだけを練習してきた努力の結果。
つまりは、天才という訳でもない。
防御力は人並み以下、短弓では距離も稼げないし、剣ほどの速攻性もない。
それでも、彼女の才能を信じ、彼女の盾になろうとした青年との出会いで、彼女は変わっていく。
彼女が背負ってきたコンプレックスや弱みというのは、想像以上に大きくて深い。
優秀な兄と比べられるし、そんな兄の片目を潰してしまった罪の意識も強い。
自分の意志も弱いし、自信がもてない。
途中、盾になろうとしてくれた彼への気持ちや、彼の想い人(?)の件で心が揺れて、弓が引けなくなったこともあった。
それでも、彼女は最終的に自分の意志で、某国の王子に戦うことを決めた。
これまでの彼女のことを見てきた読者としては、彼女のこの決断が、どんなに勇気のいることで、尊いことで、そして成長の証だったのか分かる筈。
だからこそ、あの兄も彼女を止めなかった。
この兄、堅物で妹想いの不器用ないいお兄ちゃんだったんですけどね。
それはさておき。
最後の最後まで諦めず、彼のため、仲間のため、国のために立ち上がった彼女の一撃が何を射抜いたか。
それは是非実際に読んで体感していただきたい。
その最後には、シンデレラな結末も待っている。
盾の青年の正体、そして打ち明けられた想い。
それも是非実際に読んでニヤニヤしていただければ幸い。
いい結末でした。
最後のお兄ちゃんの台詞が特によかった。
つまりは、そういうことだ。