ジョセフ・E・スティグリッツのレビュー一覧

  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    貧困がどういう仕組みで起こるのかを考える一助になった。クレジットカードによる搾取の仕組みなど、はっとさせられる内容が各所にあった。

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    2021年12月16日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    ケインズ経済学の大家、スティグリッツによる経済面から見たアメリカ社会の問題と解決策の提示。政治と経済の連続性を訴え、新自由主義的な市場原理至上主義を批判している。独占に対する問題点や金融自由化の弊害に対する洞察、批判は見事。ただし、解決策として提示されている政策には(日本の国土の均衡ある発展の展開等を鑑みて)やや疑問のある部分も見られる。政策的な側面が多ければより良かったと思う。
    事前準備なしでも読めるが、可能であればやや経済学の知識があると良い。経済学の論理における前提への疑念がより理解できると思う。スティグリッツは市場原理の自然な機能を否定しているが、市場が潜在的に果たすべき役割までは否定していない。概して、スタンスは明確であるが経済学的な目標に対しては常識的な主張と言うべきである。その主張は市場の限界とともに経済成長のための市場の力の解放も包摂している。さらに言えば、同著で提示される解決策には経済学的には自明な多くの前提、単に分配を求める者にとっては不都合な、がある。政治的に使われるような粗雑な再分配のデマゴーグとは一線を引いて考えるべきであろう。

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    2021年09月02日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    ジョセフ・E・スティグリッツは米国の経済学者で、2001年にノーベル経済学賞を受賞した。クリントン政権時代の大統領経済諮問委員会の委員長や、世界銀行のチーフエコノミストを務め、現在はコロンビア大学教授。

    現代は上位1%が富と政治を独占。中間層が没落し、大きな分断を生んでいる。本書は、経済的、政治的に没落した中間層復活のための提言をまとめている。超富裕層と巨大企業への累進課税と市場競争の促進。そして、より大きな政府の必要性を説いている。

    <要約>

    現代の米国はこれまで以上に格差が拡大している。世界恐慌以前まで視野を広げても、最富裕層が国民所得をここまで独占したことはない。上位1%の超富裕層が富と政治的な権力を手に入れ、99%の万人との間に大きな分断が生じている。

    米国の経済成長は、第二次世界大戦後と比較すると、すでに鈍化している。そのわずかな成長の富を富裕層が奪い取っているのだ。それは国全体での富の創造ではなく、富裕層による富の搾取に過ぎない。

    なぜ中間層の没落が起きたのであろうか。それはグローバリズム、脱工業化、テクノロジー化、金融産業の肥大化によって引き起こされた。
    グローバリズムによる工場の海外移転、工業(工場労働)からサービス業へのシフト、産業のテクノロジー化などによって未熟練労働者が仕事を失うことになった。
    また金融産業の肥大化と彼らの拝金主義的行為の影響も大きい。金融には、富の創造を目的とした長期投資が求められるが、現代では近視眼的な搾取行為のための道具になり果てている。例えば高金利でのクレジットカード融資や学生ローンなど、中間層からの搾取を続けている。また、2008年には金融危機を引き起こし、多くの人々が家と仕事を失った

    中間層が没落していく中で、甘い蜜を吸ったのはごく少数の大企業と富裕層だった。2008年の金融危機の中でも、銀行は保護され、経営者たちは多額のボーナスを得た。また、グローバリズムによる労働者の賃金低下は企業に取って有利に働くと同時に、さらなる労働者への支配を高めた。

    豊富な資金によって政府への影響力を強め、大幅な減税を実現し、さらには反トラスト法の弱体化にまで成功した。少数の企業が利益を独占し、市場支配力を強めていった。市場支配力が高まれば、市場での競争がなくなり、製品価格をつり上げることができる。こうして少数の大企業は莫大な利益を得ながら、経済的、政治的に支配的な地位を確立していったのだ。

    市場原理主義(新自由主義)によれば、市場に任せておけば市場は成長し、富は社会全体に行き渡る(トリクルダウン理論)はずだった。しかしそうはならなかった。
    もはや市場に任せるだけでは何も解決できない。政府がより大きな役割を担い、雇用の創出や社会保障、教育、インフラを研究に力を入れるべきである。

    まず、グローバリゼーション、脱工業化、テクノロジーの発展によって職を失った人々に対しては、職業訓練など新たな職に就くための支援策が必要である。
    マイノリティーや貧困層への支援も欠かせない。差別や貧困の問題から教育や就労に関しての機会が均等でない場合、才能や労働力の大きな損失となる。また誰しもが努力によって大きな成功を手に入れることができるという、アメリカンドリームの価値観に反している。
    人々の生活を守るためには、完全雇用が必要である。政府の財政支出によりインフラを開発と整備を行う。また、科学やテクノロジーの研究は国富創出の礎であるため、ここにも支出を行う。
    同時に、個人や社会の不安は生産性や経済成長に悪影響を及ぼす。不安があれば仕事に集中できず、またリスクを取って大きな報酬を得るというチャンレジにも踏み込めない。個人や社会の不安を取り除くためのセーフティーネット、社会保障も重要である。

    では、これらの政策を行うための財源をどこからもってくるのか。それは寡占的な巨大企業や富を独占している超富裕層への課税によって行われる。現在の逆進税制(所得が高ければ高いほど税率が下がる)を見直し、累進税制へ移行する。そもそも市場の独占はイノベーションのインセンティブを失くし、自由な競争を妨げるものでしかない。

    合衆国憲法の序文には「一般の福祉を促進する」という理念がある。「一般の福祉」とは上位1%だけでなく、残りの99%を含めた万人の幸福を意味する。
    富や幸福の搾取でなく、富と幸福の創造を目指すための取り組みが求められている。

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    2021年03月20日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    非常に良い。トランプなど右派、新自由主義、格差容認の考えが圧倒的な世の中で、富の再配分、教育、医療、オバマケアなどなど、心のどこかでこういう優しい社会、平等な社会が良いなあと思ってることを描いてくれる。
    でもトランプは経済運営上手いちゅうネタをよく見かけ、このギスギス感も経済運営の犠牲かと思い込んでしまうが、それも幻想で、スティグリッツ的民主党、中道左派?的な経済運営でうまくいくんじゃないかと自信がつく。
    長沼紳一郎の現代経済学の直感的になぜ資本主義は膨張がとまらんのか?それは金利だ的な話があったけど、それと合わせて読むとまたいいと思います。それと、自分も読んだしデジタル界隈で一種神格化されてるピーター・ティールもトランプ主義者てことでディスられてる。彼の有名な、競合のいない市場でビジネスするという言葉は、経営書として読んだときはなるほどなぁと思ったが、スティグリッツに言わせると競争のない独占、寡占のせいで富が偏重し、一般人が困ってるということで、そっちの方がより大きな視点だなあと思いました。

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    2021年01月26日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    とても面白かった。神の見えざる手は間違っていた、という主張からはじまり、経済には政府の介入が必要だという。まさにそうだなぁというのと、対処法的な話なのかなと。

    資本主義は、資本家が儲かり、総貧困化の限界値を超えると、資本主義を変えるしか方法がなくなるような気がする。

    アメリカの政治を見ていると、国家や政府への介入でなんとかなる話ではなく、、(国や政府を動かしているのもまた富めるものであるという事実)10年後前後で世界的な大転換期を迎えるのかもとは思う。

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    2021年01月19日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    ネタバレ

    アメリカの具体的な話に特化し過ぎてて、日本人読者としては少し寂しい。
    もう少し抽象度が高い内容を期待していた。
    とはいえ、他山の石とすべき点は多々あるであろう。

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    2020年10月02日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    アメリカ社会の現状の問題点を指摘していて、それに対する対策ももっともだなという印象。
    ただし、本の中の主張で反共和党が行きすぎている。
    現状の格差の問題は民主党政権時の問題も含まれると思う。

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    2020年09月27日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    本書は、左派の政治家やヒューマニストではなく経済学者が「格差の拡大が経済発展を蝕む」と主張し「大多数の人々に中産階級の生活を」と訴えた本である。
    あくまでも経済学的な主張として格差拡大に反対していることに目を引かれる。
    本書の表題を直訳すると「進歩的資本主義」となるが、その内容は限りなく「社会主義の香り」が漂っている。
    政治も経済も、今世界中が不安と不満に満ちている。その答えを探して世界中の人々が首を傾げている現在、本書には多くの閃きがあると思った。
    2008年リーマン危機後の対策が結果的には富裕層のみを潤した結果となった
    。今回のコロナにおいても同じだろう。各国政府の巨額のバラマキは、経済システムを守りつつ果実は上層に集中することが見えてきた。本書の「格差を拡大する行為は成長を鈍化させる」には卓見であると思った。
    本書はアメリカ社会についての考察だが、明日の日本の姿でもある。本書の課題は当然日本にも当てはまる。アメリカの多くの人々にとって既に失われた「中流の生活」。「万人にまともな生活を」との主張には強く共感する。
    日本においても多くの若者たちが、結婚・子どもをあきらめ、持ち家をあきらめて「中流の生活」をかろうじて維持している。こんな明日のない社会をなんとかしなければと本書を読んで痛感した。本書を高く評価したい。

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    2020年06月13日
  • スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)

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    左派ケインジアン経済学者であり2001年のノーベル経済学賞受賞者であるスティグリッツによる資本主義の適切な見直しとその実行のために必要な政治改革についてまとめた論考。

    スティグリッツが問題視するのは、アメリカで顕著に発生している1%の超富裕層と、低所得者層の格差/断絶である。その原因は、伝統的な共和党及びドナルド・トラソプ政権での政策が、超富裕層を優遇しており、資本力と政治力の相互依存関係を打破すべきと説く。

    具体的な処方箋としては、
    ・累進課税的な税制により富裕層への増税を課す
    ・民間での投資インセンティブが低く、公的な投資を行わなければならない社会インフラ(教育、基礎研究、医療・社会保障など)へ、富裕層からの増税分を原資とした投資を行う
    ・フェイクニュースの流通の原因でありながらも、メディアとしての責任を取らないITプラットフォーマーへの規制の強化
    などを訴える。

    個々の処方箋に目新しさがあるわけではないものの、スティグリッツは経済的・政治的な問題よりも、トラソプ政権移行に顕著になったような「伝統的なアメリカンドリームに代表される機会の平等性を軽視する価値感の変容」こそ、喫緊の課題であるとする点は、慧眼に映る。

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    2020年01月02日
  • スティグリッツのラーニング・ソサイエティ―生産性を上昇させる社会

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    経済を発展させるのはイノベーション。
    イノベーションを起こす土壌はラーニングによる知識のインプット。
    知識へのアクセスを向上させる社会の形成が必要。

    ラーニングの重要性、ラーニングを促進する環境、ラーニング・ソサイエティの形成に必要な政策について。

    政策部分について、他国との関係において、市場の開放・金融市場の自由化では比較優位を形成できない因果関係は、新しい観点だった。
    (将来を考慮に入れた)動学的比較優位形成のためには、知識の展開が望める、ラーニングの大きな産業を保護する必要がある。(現在の)静学的比較優位に囚われない決定が必要とのこと。

    国の話だから政策による決定。
    一方、自分の話になると、ラーニングの大きな仕事ができてるんだろうか。将来のある仕事って何だろうか。

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    2018年10月16日
  • ユーロから始まる世界経済の大崩壊 格差と混乱を生み出す通貨システムの破綻とその衝撃

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    経済統合を政治統合より優先させたことにより、巨大資本優先の政策が強まり、国家間、個人間の格差拡大に通じている。
    ヨーロッパの連帯と協調が進み、課題が解決していくことに期待したい。

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    2018年03月03日
  • ユーロから始まる世界経済の大崩壊 格差と混乱を生み出す通貨システムの破綻とその衝撃

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    ばら色の夢を描いてスタートした単一通貨ユーロが格差と混乱を生み出しているとして糾弾、経済と政治は不可分として政治的な統合を推し進め規制などで市場を管理するか、円満な離婚を提唱。ブレグジットに際して、エマニュエル・ドット氏が「問題は英国ではない、EUなのだ」と看破したのは決してフランス人お得意の皮肉ではないのだ。

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    2017年01月29日
  • スティグリッツ 資本主義と自由

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    市場任せの資本主義には限界があるため、政府の介入が必要であることや民主主義を取り戻す重要性を説いていた。無知のベールがあるとき、自分がどういう社会をよいと思うかという視点を初めて知り、今求められることだと思った。

    ピケティの本とほぼ主張は同じだった。政治家や大企業は既得権益を手放さないから簡単に是正されないんだろうな。
    ひとりひとりの意識を変えて選挙の結果や世論を変えていくしかないんかな。

    この本では具体的な提言などはなく、あくまで資本主義の行き過ぎをとめ、別の道筋を示すだけだったので物足りなさはあった。

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    2026年08月09日
  • あなたの知らない「世界の新常識」(インターナショナル新書)

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    難しいテーマは丸々1冊だと読み切れないけど、インタビュー形式で読みやすい。
    人口動態が変わっていわゆる白人中心・優位な時代が終わりつつあり、多極化やトランプ政権など国際政治の状況も様変わりで、価値観や政治が不安定化している、という現状分析が多かったかと。世界がどこにどう向かうのか、帯の「「常識」の時代は終わった。「力が正義」の時代が始まる」は暗澹とするけど、ある程度ニューノーマルとして現実を認識する必要はあるのだろうな。

    興味深かったのは、ジョセフ・ヘンリック(人類学者)のパート。
    ・WEIRD(西洋の、教育水準の高い、工業化された、裕福な、民主主義の)な特性(個人主義、他人への信頼、傾向性主義、分析的思考)は世界的には少数派。
    ・日本人や韓国人は欧米化著しいかと思いきや、相手との関係性によって態度を変える。
    ・宗教の中でも西方教会がいとこ婚を禁じたことで、氏族社会が解体。親族ベース制度から一夫一婦制の核家族→人が移動しやすくなったり、血縁以外の共同体が生まれたりして、ヨーロッパの発展・産業革命の基礎となった。
    ・「子ども時代に引っ越しを繰り返した若者は、友人と初対面の相手をあまり分け隔てしなくなるという」←個人的に思い当たる。

    量子コンピュータ(ミチオ・カク)の話は異色、そして難しい…
    水が基礎インフラ(ジェレミー・リフキン)、これ最近よく聞くな。

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    2026年05月25日
  • スティグリッツ 資本主義と自由

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    引用事例に重複が多くて、議論がもどったり進んだりするように感じる。翻訳はいまひとつで、日本語として理解に躓くところが多い。主張することは明快。

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    2026年05月24日
  • スティグリッツ 資本主義と自由

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    行動の自由とトレードオフを切り口に、「なるべく多くの市民の自由を向上させられる可能性が最も高い経済・政治・社会システム」として、進歩的資本主義を提唱します。それは、「あらゆる市民のウェルビーイングを中心に据え、物質的な財にとどまらず安心や自由まで組み込んだ枠組み」であり、ルールや規制などによる「力の分散が中心的課題」で「社会正義という目標」があります。

    ある新聞に2025年にエコノミストが選ぶベスト書籍に本書がなっていたのですが、何か腑に落ちない感じがします。「現在こそが、失敗が明らかになった新自由主義を放棄する歴史的瞬間なのだ」という言葉に、勇気づけられた方が多かったのでしょうか。著者の考えはともかくとして、論述が冗長に感じられ、編集でどうにかならなかったのかな、という印象が残りました。

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    2026年04月15日
  • スティグリッツ 資本主義と自由

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    新自由主義を一方的に批判している本。ミルトン、ハイエクという20世紀に台頭した新自由主義の2大巨頭を全く分かっていない人達と断ずる。著者のスティグリッツは、民主党の経済的顧問だったからか、共和党を真っ向から批判する。新自由主義においては、小さい政府が望ましいが、そのせいで適切なルールが形成されず、富裕層の自由ばかりが優先され割を食う不自由な人達が増えたとする。本書でも例えられていた信号機の例は分かりやすい。信号機というルールがないと、交通ルールが制定されずまともに車を運転するという自由を失うというロジック。信号機と経済主義をアナロジーで語るのは若干無理があるように感じるが言いたい事は何となくわかる。
    いずれにせよ、「自由」という物をアメリカ以上に考えている国は他にないのだろう。自由こそがアメリカのアイデンティティであり、自由の形は変わっても「自由の国」というイデオロギーで多民族をまとめるという構図は変わらないのではないかと考える。

    経済理論と統治のゆくえ:知性と実務の相克
    1. 経済理論の根底にある「情報」と「人間観」
    核心的問い: スティグリッツとハイエクの違いは、単なる「政府の大きさ」の論争なのか?

    論点:

    ハイエクは、知識が社会に分散しているため、政府による計画は不可能であり、「価格」こそが情報を統合する唯一の装置だと説いた(情報の分散)。

    スティグリッツは、情報の偏り(非対称性)が市場を失敗させるため、政府による修正が不可欠だと説く(情報の不完全性)。

    この対立は、「自生的秩序(市場)」を信じるか、「設計された秩序(理性)」を信じるかという哲学的な人間観の違いに基づいている。

    2. 歴史の教訓:自由の果てに生まれる「反動」
    核心的問い: 世界で最も自由と言われたワイマール共和国が、なぜ反動としてヒトラーを生んだのか。現代の格差が同様の独裁を招くのではないか。

    論点:

    市場の暴走が伝統的なコミュニティや生活基盤を破壊すると、社会は自己防衛として「強い指導者」を求める(ポランニーの「二重の運動」)。

    ハイエクは大きな政府を「隷従への道」と呼んだが、現代では「小さすぎる政府が生む格差」こそが独裁(ポピュリズム)への舗装道路になっているという逆説。

    3. 「賢い政府」という名の現代的寡頭制
    核心的問い: スティグリッツの説く「賢い政府」は、古代の寡頭制や法家思想に似ている。情報が氾濫する現代、国民を納得させる「説得コスト」は高すぎて非現実的ではないか。

    論点:

    リベラル派は政府を「民間の独占を監視する審判」と定義するが、価値観が分断された現代では、エリートによる「正解」の提示は逆に不信感を煽る。

    「納得させるコスト」を払えない政府は、経済的な実利(中間層の再生)を事後的に示すことでしか、その正当性を維持できない。

    4. 西洋的OSの限界と「覇権国」の苦悩
    核心的問い: スティグリッツの主張は西洋的観念が強すぎ、非西洋圏では通用しないのではないか。また、現代のアメリカが抱える分断は、南北戦争時のような再生を可能にするのか。

    論点:

    彼の理論は「西洋文明の延命パッチ」であり、宗教や独自の統治観を持つ地域には適合しない。世界は「多極化したブロック」ごとに異なるOSで動く時代へ向かっている。

    米国は「外部の敵(中国等)」を設定することで国内を統合しようとしているが、これは覇権国ゆえの「内乱(システム停止)」を避けるためのアクロバティックな手法である。

    5. ヘーゲル的「意識改革」への回帰と右派の拒絶
    核心的問い: スティグリッツは「人間の意識改革」を前提としているが、これはヘーゲル的な社会的後退ではないか。また、なぜ自由を重んじる右派がトランプのような強権を許容するのか。

    論点:

    「賢い我々が導く」という啓蒙主義的姿勢は、エリートへの生理的拒絶を生む。

    右派は「見えないシステム(官僚・専門家)による永続的な支配」を最も恐れており、それに対抗するために、あえて「見える独裁(強力な個人)」を武器として選択している。

    6. 実務から見たインセンティブと「負の財産」
    核心的問い: 企業の成果を「共有財産」とする議論は、研究開発の動機を削がないか。また、共有を謳うなら、企業の権益だけでなく「赤字や責任」といった負の財産も共有すべきではないか。

    論点:

    「独占的利益」という報酬がなければ、誰も困難なリスクを背負わなくなる。

    正の成果だけを社会化し、負の責任(自己責任)の所在を曖昧にすることは、社会の駆動力を奪い、モラルハザードを招く。実務の現場は「責任」があるからこそ維持される精度がある。

    7. エリートの再生産と再配分の副作用
    核心的問い: 「賢い人たち」はどう再生産されるのか。富の再配分は、かえって資産の逃避や社会の分断を加速させるのではないか。

    論点:

    現代の能力主義は世襲化し、現場の「実践知」を持たないエリートを量産している。

    再配分は「奪う側」と「奪われる側」というゼロサム・ゲームの戦場を作り出し、社会の統合という本来の目的とは正反対の「相互不信」を生むリスクがある。

    まとめとしての感想
    スティグリッツの理想は「理性の美学」に基づいた洗練されたシステム構築を目指していますが、実務や現場の視点から見ると、そこには「人間のエゴ、能力差、責任の所在」といったエンジニアリング的な変数の欠落が目立ちます。
    社会という巨大プロジェクトを動かすには、理論上の「正しさ」以上に、参加者の「納得感」と「リスクに見合った報酬」の設計が不可欠です。この「知性と実務の断絶」こそが、現代の政治・経済が直面している最大のバグであると言えるでしょう。

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    2026年01月02日
  • スティグリッツ 資本主義と自由

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    公正な経済システムであれば市民は誠実で共感的になり、他人と協力できるようになる。
    公正な経済システムは実現するの?

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    2025年11月16日
  • スティグリッツ 資本主義と自由

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    読む前は身構えたが、読みやすかった印象。ただし根拠や具体例に乏しいところが一部あるように感じた。

    印象的だったのは、現代の負債は未来への投資でもある、という考え方。ただ単にお金を借金すると考えるだけでなく、見方を変えれば必要な公共投資であることを考えさせられるのかなと思い、納得させられた。

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    2025年10月21日
  • スティグリッツ 資本主義と自由

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    スティグリッツ氏が新自由主義の誤りを説明し、あるべき未来の方向性を示そうとする本。

    氏がこの本をトランプ二次政権前に刊行したのは余程の危機感があったと考えられる。結果は残念ながら氏の懸念を払拭できず、より一部の富裕層の富が政治的法的に守られていく方向になっている。本を読み、アメリカはよほど自由の国から離れてしまったのかと改めて思った。

    中身としては、新自由主義の誤りを説明することはわかりやすい。特に印象的なのは、

    ある自由が別の自由を制限する際、トレードオフをよく考えるべき 例銃を持つ自由 銃にさらされる危険からの自由 

    選好は環境によって左右される

    新自由主義が育てる人間性はそもそも信頼を損ない市場を効率的効果的に機能させない人間性を育ませるという課題

    市民感覚からして、当たり前と思う前提を抜かして計算したり分析する経済学の欠陥はどうやらまだ修正できないらしい。

    とはいえ、本来経済学者であるスティグリッツ氏が政治や法律、哲学に越境してリスクを冒してでも議論する姿勢は素敵だと思う。

    一方、新自由主義を是正し適切な規制や分配を行う政府が機能不全になっている点についての解がこの本には記載されていないのがとても残念。範囲外なのだろう。別の著書にて期待したい。

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    2025年09月16日