あらすじ
★Amazonベストビジネスブック2024に選出!
★ノーベル賞経済学者が描くこれからの経済社会に関するビッグピクチャー
「オオカミにとっての自由は、
往々にしてヒツジにとっての死を意味する 」
トランプ後の世界はどこへ向かうのか?
傲慢な超富裕層による搾取をどう食い止めるのか?
公正で自由な優れた社会を推進するのはどのような経済なのか?
The Road to Freedom: Economics and the Good Society
待望の邦訳!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
効率的競争という幻想への盲従から生じた新自由主義の失敗・結果を痛烈に批判。
よりよい自由、民主主義の活力ある社会を築くためにどうすべきかをビッグピクチャーとして示す。
冒頭にある『オオカミにとっての自由は、往々にしてヒツジにとっての死を意味する』(オックスフォード大学 哲学者アイザイア・バーリン)は、フリードマンの少数の自由のための多数を犠牲にする新自由主義による不平等、利己主義や不正などの失敗を批判するツールであるとともに、結果としての現代の巨大企業による独占寡占や、分断や格差が生じている状況も批判。
あるべき自由としては、社会正義が成り立つ進歩的資本主義を推奨。資本主義と銘打ちつつも、『資本』の概念は広く物的、金融、人的、知的、組織、社会、自然なども含み、それをベースとして民間企業や政府の共同行動によりバランスをとり、政治的な自由も担保しうるという論調。
民主主義社会を維持するために、資本家の利益により社会・経済・政治システムが歪められないように、過剰な格差や政治、メディアにおける金銭の力を制限するとともに民主的価値観を育むほかない。
バランスの取れた見方ができるようになることが、公正な社会への第一歩。
内容は興味深いが割と長い。途中少し眠くなってしまった…
Posted by ブクログ
読む前は身構えたが、読みやすかった印象。ただし根拠や具体例に乏しいところが一部あるように感じた。
印象的だったのは、現代の負債は未来への投資でもある、という考え方。ただ単にお金を借金すると考えるだけでなく、見方を変えれば必要な公共投資であることを考えさせられるのかなと思い、納得させられた。
Posted by ブクログ
スティグリッツ氏が新自由主義の誤りを説明し、あるべき未来の方向性を示そうとする本。
氏がこの本をトランプ二次政権前に刊行したのは余程の危機感があったと考えられる。結果は残念ながら氏の懸念を払拭できず、より一部の富裕層の富が政治的法的に守られていく方向になっている。本を読み、アメリカはよほど自由の国から離れてしまったのかと改めて思った。
中身としては、新自由主義の誤りを説明することはわかりやすい。特に印象的なのは、
ある自由が別の自由を制限する際、トレードオフをよく考えるべき 例銃を持つ自由 銃にさらされる危険からの自由
選好は環境によって左右される
新自由主義が育てる人間性はそもそも信頼を損ない市場を効率的効果的に機能させない人間性を育ませるという課題
市民感覚からして、当たり前と思う前提を抜かして計算したり分析する経済学の欠陥はどうやらまだ修正できないらしい。
とはいえ、本来経済学者であるスティグリッツ氏が政治や法律、哲学に越境してリスクを冒してでも議論する姿勢は素敵だと思う。
一方、新自由主義を是正し適切な規制や分配を行う政府が機能不全になっている点についての解がこの本には記載されていないのがとても残念。範囲外なのだろう。別の著書にて期待したい。
Posted by ブクログ
主に自由と言う観点から現在の新自由主義的資本主義を批判する。
ある人の自由は他の誰かの自由とトレードオフであり、一方の自由の拡大はもう一方の自由の縮小になるとして問題点を指摘する。
資本主義を自由と言う概念から解説するのは個人的に面白かった。
誰かがお金を集める自由を行使すれば誰かのお金を使う自由を制約する。
いわゆる搾取。
自由な市場は効率的であり、効率的な社会は自浄作用のように行き過ぎた問題を解決するため、政府による働きかけを否定する。
いわゆる見えざる手。
ケインズ主義の否定と氷河期世代の誕生。
こういった自由と権利を主張する旧経済学の間違い、修正点を事例を挙げながら批判している。
このあたりはとても納得感があり首肯することも多い。
しかしながら、ではどうすれば良いのかという方法として進歩的資本主義への移行を奨励しているが、政府の適切な介入、公共財(コモン)の共有、協調行動、道徳的知見など、人間の善性、道徳、教養に拠りすぎている気がする。
再生された社会的民主主義を目指す道のりは遠く険しい。