内田由紀子のレビュー一覧

  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    幸福感あるいはウィルビーイングについての卒論を書こうと思っている学生は、まずこれが基本書で手軽に読めるのでこれを読むことをすすめる。また教育で流行しているウィルビーイングの細かい本や教科の本を読む前にこの本を読んでおくといい。
     英国保健協会がSNSによるウィルビーイングの影響を調べているが、それはここで言われているウィルビーイングとはだいぶ違うようである。ウィルビーイングが大げさになっている感はいなめない。いい気分になるということでもいいのではないか。協調的幸福感尺度がこの本では掲載されていないが、共感できたかどうかでもいいのかもしれない。
     美味しいアイスクリームを食べて少し幸せで幸福感があがったということでもいいような気がする。

    0
    2026年03月29日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    何を幸せと感じるのか、の文化による違いについて
    文化心理学という視点から見た本

    以前読んだ、「論理的思考」の文化的基盤も思い出して、面白く読んだ。

    何を「幸せ」と感じるのかは、文化によって特徴がある。さらに、時代や地域、その人の性格も関係する。確かにそれはそう。こういう本を読んでいると、だれか私の「幸せ」を教えてくれないかな、って思ってしまう。


    以下メモ
    ・文化心理学
    文化と心の関係を扱う。人が文化の中でどのように生きるのか。
    命題→一定の社会で共有される習慣、規範、価値観が人々のものの見方
    、考え方、感じ方、行動などの心の動きと相互構成的な関係にある。そのプロセスを明らかにすること。

    ・心理学の変遷
    行動主義→心は見えないので、観察可能な行動そのものをデータとする
    認知革命→それまで対象外とされてきた「認知」や「思考」の理解も試みる
    認知の歪みの発見
    例〉お金への期待度が高い子どもはお金の実際の大きさをより大きく認知する
    認知と文化→認知機能には、その人の生まれ育った文化が影響する

    ・ウェルビーイングとは
    自分や自分を取り巻く状態が良い形で持続的であること


    ・文化による自己感
    〈相互独立的自己感〉
    個人が主体的に何かを選び取り、個人の中にある特性を原動力として物事を動かし目標を達成する
    自分の内側にあるものによって自己が定義されている
    犯罪事件が起こったとき、犯人の性格に重きをおいて報道される。
    獲得的幸福:自分が何を得てきたか
    他人へのサポート:あなたはこのサポートが必要ですか?と確認する

    〈相互協調的自己感〉
    個人の内側にあるものだけでなく、他者との関わりあいや文脈、状況が重視される。
    個人の内側にあるものも、文脈によって変化する。
    犯罪事件が起こったとき、犯人を取り巻く環境についてより報じられる。
    協調的幸福:穏やかな生活、自分だけでなく周りも楽しいこと
    他人へのサポート:相手が求める前に状況を把握して適切なサポートを提供する。


    (日本では価値観の変化がおこっているという。電車で席を譲る問題で、譲られた側がモヤっとするって言うけれど、「どうぞ座ってください」じゃなくて、「あなたは椅子に座りたいですか?」って聞くのもいいのでは?と思ったり)


    ・幸福度ランキングは意味があるのか?各国間で「幸福」の意味が違うのに。
    幸福度を計る方法はさまざま。その国の文化的背景に応じて指標を選択する必要がある。
    主観的指標と、身体的・生物学的指標の併用も望ましい。

    ・測定テクノロジーの変化
    紙の質問紙だけでなくスマホやウェアラブル端末の普及で、感情や感動を繰り返し記録
    SNS解析、テキストからの感情評価
    質問紙と血液検査の分析


    ・近代は個人の自由、尊厳が重視され個人のウェルビーイングが追求されてきた。が、個人のウェルビーイングのためには場のウェルビーイングも必要。

    ・職場のウェルビーイング
    日本において、協調性の高さとウェルビーイングには正の相関が見られる
    ただし、相互協調性の高い職場において。
    逆に競争重視の会社では負の相関となる。

    ・日本価値観の2階建て構造
    1階は小さいころから教えられた協調性
    学校ではみんな仲良く
    2階は後付けで求められる独立性、個人主義的価値観
    自分の意見を持つこと

    独立部の基礎が脆弱なゆえに、逆説的に協調性に対するネガティブ意識が強くなる。
    協調性が高い一方で、関係づくりに躊躇する人が多い。
    日本は、つながりが強い文化と言われるが、放置しておくとそのつながりはうまく機能しない。

    ・職場において、つながりが生まれる環境づくりが重要。他部署と自然とコミュニケーションが生まれるオフィス作り。


    ・日本も個人主義化している?とはいえ、協調性も重視する傾向は残っている。
    アメリカでの個人主義は、個人の幸福の追求は、最終的に社会全体にも良い結果をもたらすという理解がある。
    日本では、限られた資源という背景から、誰かが得たら、誰かが困るという意識も強い。個人主義が自己中として解釈される。

    ・場を良くするために「主体性」「協調性と寛容さ」
    協調性の中ではぐくまれる主体性、他者と協力して主体性を持つ、他者の主体性を認めて考える


    最後にメモ
    私が誰かを見て、あの人幸せそうとか、幸せじゃなさそうとか、そんなのはわかることではなくて。
    その人のなかでの基準があって、感じ方があるんだってことを覚えておこうと思った。

    0
    2026年08月18日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    今まで日本人は先進国の中では幸福度がかなり低いという評価をそのまんま鵜呑みにしていたが、そもそも評価基準が日本にあっていなかったという事実に驚き。
    そして、文化が違えば『幸せ』を感じる部分が違うなんて!

    日本人ならではの良さを損なわず、グローバル社会に順応できるような社会や教育の在り方を見直していくにはかなり骨が折れそうだけど、著者の言う通り今は過渡期。なんとかして良い方法を見出して行けたらいいなぁ。

    未来を担う子どもたちが、より生きやすい社会になるように、自己肯定感を育み、自分で考え自己主張ができるように。そして、協調性も育めるように…
    めっちゃ難しいけれど、そうなれたら幸福度がとっても向上しそう。

    0
    2026年06月23日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    ウェルビーイングを国際比較すると、日本人の幸福度は他の先進国に比べて低い数値が出ると言われる。日本人は幸福感が少ないのか。文化心理学者の著者はウェルビーイングの国際指標の測定に用いられてきたものは個人主義的傾向の強い欧米を基準とするもので、その質問項目では日本人の反応度は低くなる。欧米人の自らの主体行動で達成しようとする「獲得的な幸福」ではなく、他者との関係とそれを形成する「場」による「協調的幸福」をウェルビーイングの尺度とする日本社会では日本独自の指標が必要だと言う。日本人は「他者との共同」「穏やかな生活」「人並み感」に幸福度の重きを置くのである。
    これからの日本人がウェルビーイングであるためには、どのような社会を目指すべきなのか。日本人の協調的に人々の相互作用を重視する傾向。その利点と欠点を踏まえ、また、現在の近代化とグローバル化により日本社会にも浸透しつつある個人主義的傾向をも見据えながら、他者との協調的な関係の維持を保ちつつ、個人の自由な選択により主体性をも発揮できる社会を築きていくためには何に留意すべきか。地域社会や職場、教育現場などを中心に考察が行われる。

    0
    2026年01月12日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    幸せの基準は文化によって異なる。日本社会のさまざまな「場」を例にしながら、ウェルビーイングの在り方を考えることができる1冊。筆者の専門が心理学なこともあり、日本社会・文化の中で見られるさまざまな心理傾向の特徴を述べながら説明されていた。あ~あるあるという具体的な場面や状況が取り上げられており、読みやすい。私たちを取り巻く具体的な「場」を思い出しながら読み進めるとその真価を発揮するのではなかろうか。いま自分が置かれている状況を俯瞰し、それらをより良くするための助けとなり得る内容だった。

    0
    2025年12月30日
  • 資本主義と倫理―分断社会をこえて

    Posted by ブクログ

    シンポジウムの記録というスタイルのおかげで分かりやすく、内容も刺激的だ。
    資本主義の未来を予見するとともに、経済学がそこでどんな役割を果たせるのか、同時に経済学の限界についても語られる。
    自然科学が突出した今こそ、社会科学の出番だと思っていた。期待できるのかもしれないね。

    0
    2019年06月05日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    ウェルビーイング、ぼやっとしているからこそ、この言葉を研究する意味を感じた。自分の持つ価値観の良し悪しではなくて、比較しながら気づくことができる。文化心理学や文化人類学のような捉え所のなさそうなものを研究し、まとめている本はとても面白いと思う。
    海外で生活して自分の普通を変えてみたいと感じる本です。

    0
    2026年02月19日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    ウェルビーイングを研究している方の著書。

    最初の1/3ぐらいは文化心理学とは何かみたいな話で、ちょっと理屈っぽさも感じた。
    4章は興味深かった。

    0
    2026年01月21日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    幸せやウェル・ビーイング(良い状態)は人の心や文化に深く根ざしていて、一概にこのような状態が幸せであるとは決めつけられない。国別ランキングが注目されるようになって久しいが、国際比較において「過度に自己批判的にも自己肯定的にも陥ることなく」との指摘は重要であると感じた。
    地域や企業等の協力で得た分析もあり、日本社会の等身大の「幸せ観」のようなものがおぼろげながら見えてくる。
    一方で、SNSや自己啓発ブーム等の影響による経時的な変化も気になるところで、今後そのような分析も可能になるか注目したい。

    0
    2026年01月21日
  • 日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較

    Posted by ブクログ

    ウェルビーイングの詳細を、分かりやすく説明している。単純な国際比較の無意味さが、分かっただけでも、良かったら、

    0
    2026年01月12日
  • 資本主義と倫理―分断社会をこえて

    Posted by ブクログ

     「分断社会を超えて」の副題に興味を惹かれて読んだが、「分断」のとらえ方が各論者ごとに違っているか、その定義がないので、全体として統一感がなかった。
     また、題名も「資本主義と倫理」となっているが、内容は経済学者が、経済学を好きなゆえに、経済学には限界もあって他の学問分野と協調して倫理も含めて再構築しないといけないけど、やっぱり経済学自体は有用だよね、という確認を遠回しにしてるだけな気もする。
     それでも、契約関係から信任関係へという岩井論文や、「幸福」に関して社会関係的資本の必要性を説く内田論文は、参考になった。

    0
    2022年05月19日