あらすじ
国や地域別の幸福度ランキングが、しばしば注目を集める。だが、そもそも幸せの基準は文化によって異なる事実を文化心理学が実証した。一例として幸福感は、欧米では個人的な達成感、日本では対人関係と関連する。本書は国際比較を通し、日本社会における幸せの特徴を探る。また、個人の一時的な感情にとどまらず、地域コミュニティ、職場、学校などの現場における持続的な幸福(ウェルビーイング)についても考える。
目 次
第1章 文化心理学とは何か
文化とは何か/文化心理学とは/「当たり前」を疑う/心理学における認知革命/人類学の知見/比較するということ/文化的自己観/選択をめぐる文化差/文化的自己観と自己認識/認知と文化/分析的思考と包括的思考/文化学習が起こるプロセス/教育やメディアが与える影響
第2章 幸福の国際比較
幸せの統計学/幸福というあいまいな概念を測定する方法/ヘドニアとユーダイモニア/幸福の国際比較/平均値の比較、ランクづけの問題点/幸福の意味の歴史的変遷/獲得的幸福と協調的幸福/「幸せすぎると怖い」?/幸福を長続きさせる戦略
第3章 対人関係、集団意識、自己
スモールワールド現象とは何か/個人を超えた集団レベルの資源/結束型と橋渡し型/つながりが多ければ多いほど良いのか?/友達とはどのような存在か/友達を選ぶ国・アメリカ/人付き合いの日米比較/評価懸念と同調圧力/言葉遣いは自己意識にどう影響するか/どんなサポートが幸福感を高めるか/他者理解にひそむ文化差
第4章 主観的なウェルビーイングをどう測定するか
そもそもウェルビーイングとは/経済指標中心の限界/幸福・生活満足・生活の質/協調的幸福/主観的ウェルビーイングをどう用いるか/比較文化的視点から見た課題/測定テクノロジーの進化/国際的な調査・政策枠組みに見る指標/国内の政府機関の調査/指標活用の展望/場のウェルビーイングを動的に把握する時代へ
第5章 幸福をはぐくむ地域コミュニティ
個人の幸福と制度の関係/場のウェルビーイングとは何か/地域コミュニティのウェルビーイング/場所の影響か、個人の影響か/集合活動と相互調整/地域の社会関係資本/地域の幸福感を測定するプロジェクト/自殺率の高い町、低い町/愛着感から開放性へ/幸福、信頼、向社会性の循環/社会的ネットワークの分析から見えること/アートの島が住民にもたらしたもの
第6章 働く人が幸福な職場とは職場のウェルビーイング/企業の組織風土の4類型/職場の協調性の効果/「保険」としての協調性/2階建てモデルで日本社会を読み解く/組織の設計/日本で求められるリーダーシップ像とは/雇用の流動性が社員に与える影響/採用文化の日本的な特徴/なぜ日本の職場は関係性づくりに消極的なのか/自然とつながりが生まれる「場」をつくるには
第7章 教育現場のウェルビーイング
ウェルビーイングは新たなキーワードなのか/これまでの活動に新たな意味づけを/多様なルートをつくり出す/PISAによる国際比較/第4期教育振興基本計画がめざすもの/全国学力・学習状況調査の結果から/教員のウェルビーイング/ハブとしての社会教育主事
第8章 これからの時代のウェルビーイング
価値観はどのように生まれ、受け継がれるのか/グローバル化による価値観の変化/日本は個人主義化しているのか/日米それぞれの個人主義観/ひきこもりが増えた理由/自己肯定感の低さは何をもたらすか/「場の正義」から脱出する/「裸の王様」に見る多元的無知/どのように主体性をはぐくむか/開かれた協調性を
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Posted by ブクログ
ウェルビーイングを国際比較すると、日本人の幸福度は他の先進国に比べて低い数値が出ると言われる。日本人は幸福感が少ないのか。文化心理学者の著者はウェルビーイングの国際指標の測定に用いられてきたものは個人主義的傾向の強い欧米を基準とするもので、その質問項目では日本人の反応度は低くなる。欧米人の自らの主体行動で達成しようとする「獲得的な幸福」ではなく、他者との関係とそれを形成する「場」による「協調的幸福」をウェルビーイングの尺度とする日本社会では日本独自の指標が必要だと言う。日本人は「他者との共同」「穏やかな生活」「人並み感」に幸福度の重きを置くのである。
これからの日本人がウェルビーイングであるためには、どのような社会を目指すべきなのか。日本人の協調的に人々の相互作用を重視する傾向。その利点と欠点を踏まえ、また、現在の近代化とグローバル化により日本社会にも浸透しつつある個人主義的傾向をも見据えながら、他者との協調的な関係の維持を保ちつつ、個人の自由な選択により主体性をも発揮できる社会を築きていくためには何に留意すべきか。地域社会や職場、教育現場などを中心に考察が行われる。
Posted by ブクログ
幸せの基準は文化によって異なる。日本社会のさまざまな「場」を例にしながら、ウェルビーイングの在り方を考えることができる1冊。筆者の専門が心理学なこともあり、日本社会・文化の中で見られるさまざまな心理傾向の特徴を述べながら説明されていた。あ~あるあるという具体的な場面や状況が取り上げられており、読みやすい。私たちを取り巻く具体的な「場」を思い出しながら読み進めるとその真価を発揮するのではなかろうか。いま自分が置かれている状況を俯瞰し、それらをより良くするための助けとなり得る内容だった。
Posted by ブクログ
ウェルビーイングを研究している方の著書。
最初の1/3ぐらいは文化心理学とは何かみたいな話で、ちょっと理屈っぽさも感じた。
4章は興味深かった。
Posted by ブクログ
幸せやウェル・ビーイング(良い状態)は人の心や文化に深く根ざしていて、一概にこのような状態が幸せであるとは決めつけられない。国別ランキングが注目されるようになって久しいが、国際比較において「過度に自己批判的にも自己肯定的にも陥ることなく」との指摘は重要であると感じた。
地域や企業等の協力で得た分析もあり、日本社会の等身大の「幸せ観」のようなものがおぼろげながら見えてくる。
一方で、SNSや自己啓発ブーム等の影響による経時的な変化も気になるところで、今後そのような分析も可能になるか注目したい。