吉川信のレビュー一覧
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作品内に数多の謎を仕込んでおくというジョイスの戦略にまんまと乗せられて、とうとう本書まで読まされてしまった。
『ユリシーズ』における「輪廻転生」とは「翻訳」ではないだろうか?
あるいは、「翻訳」としての「読書」といってもいいのかも知れない。
「翻訳」さらには「読書」によって、『ユリシーズ』は何千万回となく「輪廻転生」を繰り返していくのではないだろうか?/
【ジョイスが一四歳から五五歳までの間に書いた評論を執筆順に収め、それぞれに梗概を添えたこの書は、(略)作家ジェイムズ・ジョイスの「自伝的」著作集に他ならない。それがジョイスのフィクションを理解するうえでも極めて有効な糸口を提供している点は -
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表紙裏
「肘掛椅子の人類学」と断じ去るのは早計だ。ただならぬ博引旁証に怖じる必要もない。典型的な「世紀の書」、「本から出来上がった本」として、あるいはD・H・ロレンス、コンラッド、そして『地獄の黙示録』に霊感を与えた書物として本書を再読することには、呪術・タブー・供犠・穀霊・植物神・神聖王・王殺し・スケープゴートといった、人類学の基本的な概念に関する世界中の事例が満載されているだけでなく、資料の操作にまつわるバイアスをも含めて、ヨーロッパ人の世界解釈が明瞭に看取できるのだから。巧みなプロットを隠し持った長大な物語の森に、ようこそ。
目次
第一章森の王
第二章魂の危機
第三章王殺し -
Posted by ブクログ
表紙裏
著者は二つの問いを立てた。「第一に、なぜ祭司は前任者を殺さなければならないのか?そして第二、なぜ殺す前に、〈黄金の枝〉を折り取らなければならないのか?」森の聖なる王、樹木崇拝、王と祭司のタブー、王殺し、スケープゴート、外在魂・・・大きな迂回とおびただしい事例の枚挙を経て、探索行は謎の核心に迫る。答えはある意味であっけないが、モティーフは素朴ではなかった。ロバートソン・スミスのセム族宗教史に多くを負いながら、それと微妙な距離をとると同時に、ルナンへの傾倒を韜晦してやまないフレイザー。本書を手の込んだ文明相対主義的キリスト教起源史と読むこともできる。さて、再び、「金枝」とは何か?初版完訳、 -
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書かれた当時の「未開」や「野蛮」といった視点はまぬがれていないが、比較的ニュートラルで押し付けがましくない(とはいえ、
考え、見解は示される[「仮に私が正しければ、」p540など]。一般的には小説作品に近い感覚で読めるし、読み飛ばしても十分面白い。忘れることは忘れてしまうが、残るものはずっと残る(これって神話的)。個人的には、第三章の第四節から七節ぐらいまでにはどうしても興味を持てない。
第一章第一節の終わりに全体を貫く問いが示されている。「なぜ[イタリアのネミの]祭司は前任者を殺さなければならないのか?」「なぜ殺す前に、「黄金の枝」を折り取らなければならないのか?」の二つである。この二つの