ハンナ・アーレントのレビュー一覧

  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    イスラエルの諜報機関である「モサド」によってアルゼンチンから連れてこられ、裁判を受けさせられて刑場の露と消えた男であるアドルフ・アイヒマンを哲学者であるハンナ・アーレントが書いた裁判傍聴記録です。




    本書はアルゼンチンに潜伏していたところをイスラエルの諜報機関である「モサド」によって拉致同然に連れてこられ、裁判を受けさせられて刑場の露と消えた男であるアドルフ・アイヒマンを哲学者であるハンナ・アーレントが書いた裁判傍聴記録です。

    あまりにも有名でありながらも、有名なアイヒマンの言葉である
    「私は書類に判子をついただけだ」
    は余りにも重く、今の今まで読むことを躊躇していたわけですが、それを

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    2024年06月22日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    ネタバレ

    「哲学者なのにレポートみたいだな」と思いましたが、雑誌ニューヨーカーの記事にするために書いたのでレポートみたいになるのは当然でした。
     解説に詳しく書いていましたが、本編を読んでの感想と同じく、アイヒマンは頭は悪く、命令には従うけどその命令の意図や命令の結果どうなるか、といった思考力や想像力は皆無で反ユダヤ主義はなく、特定の分野だけ有能だがそれ以外無能な凡人にすぎない、ということをアレントは書いています。
     学業成績は大したことなかったみたいで、従って(書いてませんが)大卒だらけの職場ではかなり学歴コンプレックスがあったみたいですね。
     アレントがこの本でめちゃめちゃ非難されたのは
    ①悪の権化

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    2024年05月22日
  • 全体主義の起原2 新版――帝国主義

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    第三部、第一部と読み進めてきて第二部が最後となるけれども、とんでもなく面白かった。帝国主義がもともと経済的な事情に由来すること、その特徴が膨張の運動それ自体にあること、それが国民国家の在り方とはそぐわないこと、人種思想の経緯、海外帝国主義と大陸帝国主義の違い、法を軽視する官僚制、人権という概念のもつ問題など、どの議論をとってもほんとうに面白く、それぞれが全体主義への架け橋として描き出されるので、たしかにこれは第三部から読んでおいてよかったなあと思った。自然とか人工世界とか循環あたりの話は『人間の条件』を彷彿とさせる。カフカの官僚制の話もうれしい。あいだに寄り道していたせいもあって全部を読むのに

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    2022年12月16日
  • 全体主義の起原3 新版――全体主義

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    ヤスパースの助言通り第三部から読んだ、全体主義の特徴として挙げられる首尾一貫した偽りの現実とかテロルの意義とかもすごく面白いのだけれど、そもそもそういったものに溺れてしまう大衆の弱さとか収容所に入れられたひとびとが存在しなかったことになってしまう残酷さとか、人間の孤独や存在の脆さが浮かびあがってくるあたりで泣きそうになってしまう、アーレントの冷徹さの奥には限りない愛の眼差しがあると思う、あと大事なことは何度も言ってくれるのでわかりやすい。

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    2022年10月20日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    旧版を読んだのは5年前。全体主義やホロコーストについて、勉強を始めたばかりの頃。読んだときはかなりの衝撃を受けた。

    その後、この本が出版された60年代前半以降の研究も読んで、この本の歴史的な資料としての重要性は下がって、アーレントの思想を知るための本ということにわたしの中ではなっていた。

    新版になって、字も大きくなり、その後の通例にしたがって、固有名詞や用語の統一がなされ、読みやすくなったとのことで、読んでみた。

    すると、アーレントの歴史事実に関する理解は、最近の研究とくらべて大きく異なるわけでもなさそうなことがわかった。この本のフォーカスは「アイヒマン裁判」であり、「全体主義」や「ホロ

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    2022年05月19日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    特に思想もない平凡な人間が、想像力の欠如により、ただ保身に走り非道な行為をすることの衝撃。思考しないことの恐ろしさ。

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    2021年08月13日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    quote:
    まったく思考していないこと、それが彼があの時代の最大の犯罪者の一人になる素因だったのだ。

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    2021年05月08日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    思ったのは、それが官僚的組織の宿痾であれば、なにをどうすれば正しいことが行われるようになるんだろうということ。

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    2021年02月27日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    カタチ的には一周したが、まだ読めていない。
    読んでよかったし、今読んでよかった(若いころだとたぶん、ほとんど、今よりもずっと、この本の意義がわからなかったと思う。いまは、意義があることだけは、すごくわかる)

    ヒトラー率いるドイツ帝国の、ユダヤ人問題の〈最終的解決=絶滅〉において、ユダヤ人を殺戮収容所に輸送する任務に着いていた、アドルフ・アイヒマンについて書かれているこの本は、ずっと思っていたように、舌鋒鋭く「陳腐な悪」を断罪するものではなかった。これは裁判記録ーーしかも、不親切なほど注釈が少ないーーである。

    「ザ・ニューヨーカー」で連載されたこの報告(レポート)は、エルサレム裁判の法廷のよ

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    2021年01月18日
  • 暴力について――共和国の危機

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    暴力について―共和国の危機
    (和書)2012年02月01日 16:15
    2000 みすず書房 ハンナ アーレント, Hannah Arendt, 山田 正行


    ハンナ・アーレントさんの本は良いです。自分自身もそれに近づける様にしたいと思うことができる。そういう人の本は非常に有益だし、生きていくのに必要なものだと思います。

    こんかいは『暴力について』でした。アレントさんの他の本を借りにいったら貸し出し中だったのでこの本を借りた。非常におもしろい。次は『革命について』を読んでみたい。

    アレントさんの全集などでないかな?あったら買いたいけど高そうだから借りたい。きっと誰かが企画してるかもしれな

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    2020年09月27日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    ナチスの大量虐殺がどのように生まれたのか、その主犯格の裁判の様子を本にしたもの。
    悪の陳腐さの副題通り、ハイヒマンはただヒトラー、ナチスに認めて貰いたかっただけ。
    入党の理由として、就職難でたまたま入っただけ。
    それが、虐殺の理由。途中から人を殺す感覚が麻痺して来た。

    自分で考えなくなることがいかに危ないか、また人は認められたいという理由でも人を簡単に殺せる。
    人の本質的な一面を捉えた本。

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    2020年01月27日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    アルゼンチンから拉致したアイヒマンをエルサレムで法廷に引きずり出した、その裁判の話。前代未聞の犯罪と、一方で国際法を無視してのこの裁判という、法哲学的にも深い本。
    ヒトラー暗殺計画に携わった人たちは道徳的な問題についてではなく、無謀な戦争でドイツを敗北させてしまうことからヒトラー暗殺を企だてた。アイヒマンもユダヤ人を殺害することそのものには良心の呵責を感じなくなっていて、それは他の多くのドイツ人もそうだったという指摘。ナチに属さない政府高官もヴァンゼー会議で全く反対しなかったことや、ユダヤ人自身が絶滅に協力していたこと。デンマークやイタリア、ブルガリアの抵抗や、反対に過剰に協力したルーマニアや

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    2019年11月28日
  • 暴力について――共和国の危機

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    「暴力について」。ハンナ・アーレント著。英語版初版1972年。山田正行訳、みすず書房、2000年、261頁。

     ハンナ・アーレントさんは1906-1975。ドイツ生まれのユダヤ人?ユダヤ系だったそうです。
    お父さんは電気工事技師さんだったそう。ご両親ともかなりなインテリ教養人。ドイツで哲学を学んで、ナチス政権成立後の1933年(27歳くらい)にパリに亡命。亡命ユダヤ人の救出活動などに関わったそうです。ネットで拾えるレベルの情報で言うと。

    この、パリ亡命までの青春期に。どのような哲学者から影響を受けたのかというと。
    キルケゴールの教えを受け。
    ハイデッガーの愛人の時期を経て。
    フッサールとヤ

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    2017年03月24日
  • 暴力について――共和国の危機

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    「暴力について」の他に、数編論文が収められているが、やはり中心となるのはこれ。
    アーレントは、まず、暴力=Violence=Gewaltをたの混同しやすい概念からの分離でもって、論述を開始する。
    すなわち、権力、力、強制力、権威などからである。
    この暴力についての考察は、ベンヤミン「暴力批判論」と比較することで理解をしやすい。

    「理論的に見て、権力と暴力が生物学的用語で解釈される、政治的な事柄をめぐる有機体思考の伝統ほど危険なものはありえないとわたしは思う。
    …政治的な用語ではなく、生物学的な用語で語るかぎり、暴力の礼賛者たちは、自然の営みの中では破壊と創造は自然の過程の両面にほか

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    2009年10月04日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    ネタバレ

    1961年4月~にエルサレムで行われた公開裁判を傍聴して著者が報告したもの。1962年に死刑を言い渡されその二日後に執行される。

    初版出版は1963年。増強版は1964年。邦訳は、初版が1969年、この増強版の邦訳は2017年、と新しいです。

    始めの章ではイスラエル政府による見せしめ裁判ともみなされるような裁判所の様子や一個人に徹底的に焦点を当てることで見えてくる、ナチス政権化の犯罪の実態を浮かび上がらせる。

    増強版は技術的な訂正や追記が少しなされたらしい。

    執筆時も、まだ明らかにされていないことがあったり、新たな事実が浮かび上がってくる中で報告された模様。

    解説では、この本はユダヤ

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    2025年09月23日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    イスラエル・パレスチナ問題、そして関連するテーマについて考えたいと思ってリストアップした中で最初はこれと選んだ本。ナチのホロコースト政策の詳細や関連する裁判等の戦後処理の経緯について細かくは知らなかったので前提知識が足りなすぎてなかなか読むのが大変だったし、有名な本なのである程度の骨子というか位置付けは知っていたけど、それでもやはり読んで良かった。「悪の陳腐さ」という本文最後の一節があまりに有名で、確かに重要なポイントではあるけれど、裁判全体のそもそもの位置付けや検察・弁護側そして判決に対してのアーレントの視点からの考察も重要。アーレントがいま生きていたら、現在のこの事態について、そしてイスラ

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    2025年01月15日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    やっと読み終えることができた。全部読んだ自分に拍手。

    訳者である大久保和郎さんの解説、その後にある、山田正行さんの新版への解説の二つを読んで、本編に入ることをお勧めする。基本的にエピローグと追記以外は、アイヒマン裁判を傍聴したアーレントの報告書的な感じなので、彼女の思想だったり、悪って何?みたいな問いは登場しない。最初からそういうのが出てくると思ってた自分は、肩透かしを食らった。なので、二つの解説を読んで、本書の流れ、時代的立ち位置、出版後の論争などを知った上で、読んだ方が数倍面白いはず。

    にしても、ドイツ生まれのユダヤ人である彼女が、全く感情的にならずに、どちらかに肩入れすることもなく、

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    2023年06月16日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    なんとまぁ438ページ。ぶっちゃけ、エピローグと追記を読めば、筆者の意図はわかる!が、なるほど…となるので、できれば全部読むのがおすすめ。

    深井龍之介さんがYouTubeで言っていた本のフルマラソンでいうと、30キロくらいでキツかったぁ…

    p.33 もしアイヒマンが殺人の共犯として告発されていたとしたら、果たして、彼は有罪を認めたであろうか?認めたかもしれないが、ただそれには重要な条件がついていただろう。つまり、彼が行っていた事は、遡及的にのみ罪となるのであり、彼は常に法を遵守する市民だったのだ。彼が最善を尽くして遂行したヒトラーの命令は、第3帝国においては法としての力を持っていたからで

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    2023年02月26日
  • 全体主義の起原1 新版――反ユダヤ主義

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    はじめに読んだ第三巻に比べると具体的な歴史の記述が多いので苦労した。第三巻で書かれていたユダヤ人が秘密結社なんかと結びつけられていたという話はそのときはまじでそんなことあるのかと思ったけど、さまざまの迫害を乗り越えて最終的には社会から孤立して国家のもとで生き延びようとしたその歴史を知ると、ひとびとの感情として確かにそういうことはあり得たのだなと感じる。ドイツでは労働者の間にマルクス主義が行き渡っていたから、社会階級の側ではなく国家の側に属するユダヤ人への敵対心が当初生まれづらかったというところが、ささやかな記述だけれど面白かった。

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    2022年11月11日
  • エルサレムのアイヒマン 新版――悪の陳腐さについての報告

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    理系大学受験のため、世界史は試験をパスする程度の知識しか学んでいなかったため、本書の前半は読むのに相当苦労した。出てくるカタカナの人物名・組織名を把握しきれず、相関関係なども分からなかった。それゆえほぼ流し読み状態であったが、当時のナチス政権が広範に渡ってユダヤ人の絶滅を、かなり熱心に行っていたという事は充分理解できた。

    アイヒマンという人物は「ユダヤ人を絶滅させる熱意に満ちた極悪非道な人物」ではなかったようだ、という記述は本書で何回も出てくる。ナチスという政治団体で、上からの命令に従って動いた歯車に過ぎなかったのである。その事を言い訳にして、罪はあまり重くはないかのようにアイヒマン自身は思

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    2022年11月11日