松重豊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
松重さんを見ると、仕事ついでに訪れた街のなんてことのない定食屋でラーメン屋で、旺盛に時間を忘れて食べるあの姿が浮かぶ。でも、実際は少食で撮影前日は食事を摂らずに本番に臨まれるとか…。
今日は腹の空かした営業マン、明日は謹厳実直な検事、ある時は不妊の原因を抱える若妻を娶った夫、その前は警視庁マル暴刑事…と善人から悪漢まで様々な役が役者という『器』に、入ったり出たり。
松重さんは、時にその器をしげしげと眺める。溜め込んでいるように見えるが、その実、そこは何も入っていない『空洞』なんだ。だから、良いんだ。その中身をあれこれ考えるのが役者の作業。そう、与えられた役を自分なりに思案し演じるのが役者の -
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松重豊さんの短編小説+エッセイ集。
松重さんの声で脳内で再生される。YouTubeは読み終わるまで観ないと決めてたのだが、脳内で聞いたあの声、そのまんまだった。そんな鍛えられたFMヨコハマのリスナーひとり。
短編小説は、2、3編よむと、次は何がはじまるんかと構えている自分に気づく。私たちは役を背景とともに、神の視点から、前後の文脈も含めて理解するけど、それは鑑賞者側の特権なのだと改めて思う。
ここに登場する主人公は目の前にあることからしか世界を理解する方法がない。自分が誰であるかなんて、鏡がないとわからないし(そもこも鏡は楽屋くらいにしか無いし)誰かとの相対的な関わりの中でしか自分の立ち位置 -
Posted by ブクログ
某番組のイメージもあり、グルメに対して一家言ありそうな著者による、雑誌連載のエッセイの単行本化です。主として著者の好きな食べ物について、その思い出や豆知識を語られています。著者の独特な詩的センスのあるタイトルと、イラストレーターのあべみちこさんのおいしそうな食べ物のイラスト。それらによって、一話一話が心に残る個性を発揮されています。取り上げられてる話題じたいは特別なものではなく、誰にでも日常にありそうなものであり、それを特別なものにしている著者の感性に学ばされるものがあります。日常を、普段の街を、生活を、好奇心の目でとらえ直す方法を思い出させてくれます。