ウイリアム アイリッシュのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
おもいっきり作者の罠にはまってしまった。
久しぶりに推理小説のトリックに驚きました、若かりし頃読んだクリスティのアクロイド殺しやオリエント急行殺人事件を読んだ時いらいかもしれません。最近は推理小説をよんでも謎解きにこだわらず、物語を楽しむようにしていたので余計にそう感じていたのかもしれません。
探偵役のロンバートが歌手のメンドーサには下手から、ケティーシャには上手から攻略します。私は彼の成長を楽しく読んでいたのですが、その頃には作者にとって理想的な読者になっていたのです。
幻の女に対する幻想が読んでいくうちにどんどん変化して、最後には予想もしない本性をあらわします。一気読みしてしまう面白さがある上に、こころの中に濃い満足感がのこる小説です。 -
Posted by ブクログ
とんでもなく面白かった!
古い作品だが、ハラハラドキドキの展開。
主人公の無実を証明してくれる「幻の女」は誰で、今どこにいるのか?なぜ誰もそんな女は見なかったと証言するのか?そして真犯人は?というメインストーリーが非常によいミステリーになっている。最後まで犯人が分からず、そして見事に真犯人のミスリード(絶対ミスリードするように描写されてますよね?)に引っかかった笑
トリックや推理部分は実は全然複雑ではなくむしろアッサリしている。
でもトリックのみではなく、この一連の出来事を非常に緊迫したストーリーとして読ませる描写力にとても引き込まれた。
そして、アイリッシュの文章の上手さ。
「高架電車が、通りの向こうを地蛍(つちぼたる)のようにのたくり這っていた」
「頭上にまばらに並んだ電灯の薄汚れた黄色い光りのもと、ふたりは水槽の中を物憂く泳ぐ2匹の魚のようだった」
文章がオシャレだしまるで舞台を見ているかのよう。
翻訳もので日本語文体がぎこちなくて意味が取りづらいとき、元の文章がこんななの?翻訳家が上手く日本語に訳せていないの?と常々思っていたけれど、色々海外小説を読んで来て最近、おそらくほぼ前者で、作家の元の文章のせいなんだろうなと言うことが最近思えて来た。
訳者後書きを読んでもわかるように、ウィリアム・アイリッシュの英文文章自体がとんでもなく上質のようだ。それをまた再現出来るよう最大限に日本語化してくれる翻訳者の方々も素晴らしいです。 -
Posted by ブクログ
妻殺しの罪を着せられた男に死刑執行の時が刻一刻と迫る中、事件当夜のアリバイを証明できる「幻の女」を探すというタイムリミット・サスペンス。最近似たような設定の国内作品を読んだが、本作は冤罪とか法曹の問題とかに焦点を当てるわけではなく、あくまで謎解きを中心に据えた作品なので、余計なことを考えずシンプルに楽しめた。
今から80年以上前に発表された作品であるにもかかわらず、古臭さをあまり感じずに読めるというのが何気に凄い。文体も特徴的で、格調高さに最初はやや違和感があったんだけど、すぐ慣れて途中からこの作品にはこの文体以外考えられないと思うに至った。真相は言われてみればなるほどといった感じだけど結局読めなかった。てっきりもう一人のキーマンのほうが怪しいと踏んでいたんだけどなあ。
さすがオールタイム・ベストのミステリランキングに毎回選ばれるだけのことはある。面白かった。 -
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「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」
冒頭のお洒落な一文から一気に物語へ引き込まれた。
妻と喧嘩した男は、街で出会った謎めいた女と過ごして帰宅する。そこで待っていたのは、変わり果てた妻の姿だった…。
誰も自分のことを信じてくれない。
彼の唯一の目撃者である女は幻だったのか?
真相が気になって夢中でページをめくった。
章立てが「死刑施行日の○○日前」となっているので、執行日が迫るたびに自分まで焦ってくる。
ネタバレを見ずに読めて本当に良かったと思える作品だった。
事件の面白さだけでなく、劇場へ向かう夜の街など、海外作品ならではの都会的な雰囲気にも惹かれた。
この作品をきっかけに海外ミステリーの魅力を知り、ここから私の本棚は海外ミステリーだらけになっていった。 -
Posted by ブクログ
“夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。”
80年前に出版された古典ミステリーの新訳版。
無実の罪で死刑判決を受けた主人公の無実の証拠となる女を探していくのだが、章ごとに死刑までのカウントダウンになっておりハラハラしながら読んだ。
内容も面白かったのだが、詩的な文章がとくに好みだった。
お洒落な言い回しが随所にあるので、普段ミステリーを読まない方や文学好きも楽しめるのではないだろうか。
ちょうど読んだ時期が某漫画家さんの悲しい出来事があったあたりなので、作品に携わる人の原作者や名訳をした故稲葉明雄氏へのリスペクトが感じられたのも良かった。(あとがきでは新訳者の熱い思いが綴られている)
原作者の大切にしたいものをしっかりと護って送り出して欲しいと思う。
古い作品だがミステリー好きに是非おすすめの1冊。
こんな人におすすめ.ᐟ.ᐟ
・ミステリーが好きな人
・どんでん返しが好きな人
・詩的な文章が好きな人
・サスペンスが好きな人 -
Posted by ブクログ
まさかアイリッシュがこんな悲恋の物語を書こうとは思わなかった。
冒頭、別人になりすました若き淑女の登場から、度重なる齟齬から発覚する、花嫁入替りの事実。その事実が発覚すると同時に主人公の巨万の富を持ち出して逃亡する花嫁。復讐の鬼と化した主人公は1年と1ヶ月と1日を費やし、とうとう彼女を捕まえる。しかし、そこで彼女の巧みな話術によって誑かされ、結局彼女とまた2人の生活を始める。それが彼の正に人生の大きな過ちの始まりだった。
花嫁の捜索を頼んだ探偵を自ら殺めることで闘争の日々が始まり、拠点を転々とし、ついに私財も底を尽く。彼女に唆されて博打ぺてんを仕掛けたものの、呆気なくばれて、ついに一文無しになり、彼女は昔付き合っていた悪党に手紙を送り、とうとう主人公の保険金殺人を図るのだが・・・とまあ、波乱万丈な物語で特に主人公が復讐を成し得なかった辺りから正に先の読めない展開となり、主人公は人生の落伍者へと、花嫁は希代なる悪女へと転進していく。
この花嫁、ボニーの造型が素晴らしい。
時には天使のような、時には状況の犠牲になったか弱い乙女のような、そして時には人生の酸いも甘いも経験し尽くした売女のような女として描かれ、しかもそれが全て違和感なく1人の女性としてイメージが分散しない。特に最後の辺りで主人公に毒殺を図る鬼気迫るやり取りは背筋が凍りつく思いがした。
こういった人物造型含め、心情を暗示させる風景描写、移ろいゆく人々の心情描写がアイリッシュは抜群に上手い。真似をしたい美文・名文の宝庫である。
恋は惚れた方が負けである。それは自分の人生経験でもそうだった。
しかしアイリッシュは最後までその愛を貫くことで人間は変わる、そんな美しくも儚い物語を綴ったのだ。 -
Posted by ブクログ
ミステリの醍醐味とは
いかに鮮やかに
読者を裏切るかだ。
この作品は思いきり
裏切ってくれる。
海外ミステリ
オールタイム・ベストの
上位に入る名作!
帯に書いてある
この言葉に間違いはなかった。
冒頭、男が仏頂面で
街を早足で歩いている。
男は不意に入ったバーで
風変わりな帽子をかぶった
見ず知らずの女に出会う。
彼はその女を誘って
食事をし、劇場でショーを見る。
しかし、帰宅した男を
待っていたのは、
絞殺された妻の死体と
刑事たちだった。
男の名前はスコット・ヘンダースン。
ヘンダースンは殺人罪で
死刑が確定する。
ヘンダースンは親友の
ジャック・ロンバードに
幻の女を探してくれるように頼む。
また、ヘンダースンの彼女で
彼を愛するキャロル・リッチマンも
幻の女を探し始める。
しかし。
二人が出会う証人たちは
次々と不可解な死を遂げていく。
刻一刻と迫る死刑執行日。
果たしてヘンダースンの運命は。
出だしは風変わりな帽子をかぶった
幻の女の正体が気になる。
当初、ヘンダースンは
刑事たちと
その晩に訪れた場所を訪ね歩き
自分と女がいたことを
証言してほしいと頼む。
しかし、誰もがヘンダースンは
一人でいたというのだった。
不思議さが加速する。
さらに証人と思しき人物が
次々と死んでいくのに
恐ろしさが搔き立てられる。
そして。
クライマックスのどんでん返しへ。
鮮やかに裏切られる。
この作品はやはり
ミステリ史に残る傑作だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレおすすめされた一冊。あまりにも文章がおしゃれすぎてびっくりした。もともとの文章もおしゃれだったんだろうか。内容は妻殺しの罪を被せられた男と、その親友たちが死刑執行までに、アリバイを証明してくれる唯一の女性を探し出すこと。まさか真犯人が親友で、しかも証明してくれるはずの女性が入院してたというオチが凄かった。証言はできないから自白に持って行かせようとした刑事さんの頭の良さも素晴らしい。ネタばらしした状態で読み返すと、確かに女を見つけた、の意味が大きく変わってくるのも上手いなあと思った。ただラストまでの溜めが結構長いので、ちょっと中盤を読み進めるのが大変だった。