佐宗鈴夫のレビュー一覧

  • 死者と踊るリプリー

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    リプリーシリーズの5作目であり、最終作。
    2作目『贋作』の続編にあたるため、3、4作目をすっ飛ばして、つい読んでしまった。

    「ディッキー・グリーンリーフだ。おぼえてる?」リプリーが若き日に殺したディッキーを名乗る者から電話がかかってきた。一体誰が?なぜ…?

    今まで殺人を犯しても罪悪感ゼロで過ごしてきたリプリーが、最終作では嫌がらせを受ける立場になる。
    じわじわと追い詰められるリプリーを見ていると、最初は嫌いだった彼が可哀想に思えてきた。
    シリーズを追うごとに、リプリーへの感情が「嫌悪」から「共感」へ、最終作では「応援」へと変化していったのは、自分でも驚きだった。

    家政婦マダム・アネットの

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    2025年09月12日
  • 太陽がいっぱい

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    The Talented Mr. Ripley
    Patricia Highsmith, 1955

    有名な映画「太陽がいっぱい」の原作。映画も見てストーリーは知っているのにそれでも面白い。
    いかに彼が冷淡で神経質で、いかにイタリアの広い青い空と対照的か、

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    2025年08月06日
  • 太陽がいっぱい

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    映画『リプリー』が大好きなので、原作をずっと読んでみたいと思っていた。

    イタリアに行ったまま帰らない息子ディッキーを連れ戻して欲しいと、富豪に頼まれたリプリーだったが…

    読んでいると、マット・デイモンとジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウの映像が自然と脳内再生される。

    倒叙が大好きなので、「バレる!バレる!もうダメだ!」と何度も叫びたくなるような、ハラハラどころではない緊張感がたまらない。
    肩が凝るほどの張りつめた空気に、「早くバレて、楽にしてくれ」と何度も願ってしまった。

    イタリアの明るくて美しい景色と、リプリーの内面に渦巻く劣等感や不安が対照的。
    リプリーは、あれほどの知性と鋭い

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    2025年08月03日
  • 太陽がいっぱい

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    素晴らしい…
    なぜも、こんなに、惹き込まれるのか。
    まるで動く絵画を観ているかのような小説。

    しかし、二度と叶わない望みとしては、、
    映画を観る前に原作を読みたかった。
    私は『リプリー』→『太陽がいっぱい』→『原作本』の順だったのだけど、
    リプリーの印象があまりにも強烈すぎて……
    終始マットデイモンとジュードロウ、ホフマン、パルトロウの姿で物語が進行していく笑笑笑
    かなり不思議な感覚だったなあ

    もしかしたら、このイマジネーションは映画を観た故のものだったのか……
    ガチ記憶喪失でもしない限り、映画の影響ゼロで読むことは叶わないというもどかしさ。

    しかし逆に言えば、だからこその楽しみ方ができ

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    2025年08月01日
  • 太陽がいっぱい

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    ネタバレ

    2023年一番の作品でした。
    初めはグレート・ギャッツビーと同じ系統かと思ったものの、まったく違うものでした。
    トムの行動や、できごとにどう思ったかということは細かく書かれているものの、心情についてはあまり書かれていないよう思う。けれども、トムの閉塞感や焦燥感、嫉妬なんかがじわっと迫ってくる。トムとフィリップとマージの関係が、よくある痴情のもつれた三角関係におさまらないとことが興味深い。

    映画も見てみたけれども断然こっちがいい。
    アラン・ドロンの色男ぶりはすごいですけど。
    リプリーも見てみたい。

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    2024年01月30日
  • 太陽がいっぱい

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    ネタバレ

    ニューヨークで国税庁職員のふりをして詐欺をはたらいていたトム・リプリーは、かつての友人ディッキー・グリーンリーフの父親から「ヨーロッパへ行って帰ってこない息子を呼び戻してほしい」と依頼を受ける。トムがイタリアのモンジベロを訪ねると、ディッキーはマージという女性と共に悠々自適に暮らしていた。トムは徐々にディッキーと距離を縮め一つ屋根の下で暮らすまでになるが、二人のあいだには常にマージがいた。そしてある決定的な事件を境にトムはディッキーから疎まれてしまい、傷心のトムはディッキーを殺し彼になりすますことを思いつく。サンレモへの二人旅の途中、ディッキー殺害計画を実行したトムの危険な逃避行がはじまる。映

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    2020年07月25日
  • 太陽がいっぱい

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    ちょっと、三島由紀夫さんのような。
    水面下に脈々と流れる、異常で変態な、ぞくぞくぬめっとする不安感というか。足下の地面がぐにゃっと軟化しそうな味わい。この本には、それが上手くマッチしていていました。

    若くて才能があるのに、努力してもどうにもならない境遇の自分と。
    なにもしなくても親の巨額な財産で、優雅に文化的に恋愛と芸術を謳歌する友人と。

    物凄い格差を挟んだふたりの若者の、うたかたの交流と愛憎。

    「格差の葛藤」という、まさに今現在の世の中の仕組みの脆さを突きつけて、突き刺し貫くようなキケンな小説でした。

    #
    嫉妬。軽蔑。
    絶望。羨望。
    屈辱。怒り。

    そんな主人公の心の襞を、舐めるよう

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    2017年10月09日
  • 太陽がいっぱい

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    アラン・ドロンの映画で知って、ずっと気になっていた作品。
    まず印象的だったのは、リプリーのゲイ的視点。
    ライバル的女性への感情や人間の観察具合がとてもゲイゲイしい。
    そしてこの作品の読みどころは、自分がだんだんリプリーなんじゃないかと感じるくらいの心理描写だろう。
    昔のサスペンスらしく、
    たまたま運がよかっただけでは?
    と感じるところがいくつもありながら、どこか洗練された印象を受けるから許せてしまう。

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    2017年04月30日
  • 太陽がいっぱい

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    金持ちの息子を連れ戻すよう頼まれるが、当人のイタリアでの自由な生活が羨ましくなり、なりすまそうと考える…というサスペンス。
    映画版も続編も気になる。

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    2025年09月28日
  • 太陽がいっぱい

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    これは…正直アラン・ドロンよりマット・デイモンのほうがリプリーっぽさあるな。翻訳めちゃ読みやすかった。

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    2025年04月03日
  • 太陽がいっぱい

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    破滅に向かってほしいのに、全然向かってくれない!彼が不安に思う未来に対してヨーロッパ描写の何と美しいことか!リプリーを応援してないはずなのに周囲の人の間抜けさにイライラさせられる!
    ただのヤバいやつをこんなに魅力的に見せられるとは!

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    2024年04月27日
  • 太陽がいっぱい

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    これは完全犯罪と言えるのだろうか…
    トムの衝動的で突飛な殺人と、臆病なまでに練るに練られた計画的な偽装工作の連続。
    そして、あまりにも幸運すぎる逃亡劇とその最後。

    この作品では、事件自体の完全さというよりも、トム自身の感情の浮き沈みと、はたまた何があってもうまく立ち回る身のこなし、そして綻びをうまく拾っていく彼のスキル等々、“トム”という人間にスポットライトを当てることでこそ、主人公の魅力が表に現れ、非常に興味深く感じられる作品になっている気がする。

    誰かを演じることでしか(ここでは“ディッキーだが”)今の自分を保てない不安定とも言える精神状態、自分から墓穴を掘るような言動や行動に走りかね

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    2022年08月01日
  • 太陽がいっぱい

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    ルネ・クレマンとアラン・ドロンの映画「太陽がいっぱい」は封切られた時に観た。映画全盛時代ゆえ鮮明に覚えている。テーマ音楽と明るい青い海とドロンの美貌が強烈な印象だった。

    マット・ディモンのリメイク「リプリー」はTVで観た。これはこれで「トム」と「ディッキー」の関係を同性愛的に色濃く描いていて陰影があった。マット・ディモンの雰囲気があずかりあるのかもしれない。

    パトリシア・ハイスミスの原作「太陽がいっぱい」を読んでまた異なった感想を持った。「トム」が「ディッキー」を殺すに到る心理が丁寧に描いてあり、犯罪の良し悪しでなく、わかってくるものがある。

    「トム」の不幸な生い立ちとあがいても上昇しな

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    2021年09月04日
  • 太陽がいっぱい

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    ネタバレ

    三人称で書かれているけど 気分は犯人目線なので
    すっかり犯人気分になり ハラハラしながら進んでいった。最後は予想外

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    2021年08月14日
  • 太陽がいっぱい

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    ネタバレ

    昔映画の『リプリー』を観たことがあったけどほとんど記憶がなかったので新鮮な気持ちで読めた。

    リプリーが二件の殺人を犯すまではとても面白く読めたけどそれ以降は少し冗長に感じたかな。
    追い込まれるスリルはあったけど。

    特にディッキーと仲良くなってから次第に憎悪に気持ちが流れていくあたりは圧巻だった。
    リプリーはどうしようもなく身勝手で運が良いだけの犯罪者だとはおもうけど、ディッキーの同性愛嫌悪の態度も読んでいて気分が悪かった。
    あんな態度をとられ続ければ辛くなって憎むのも当然だと思えた。
    だからといって殺すなんてのはどう考えても許されないことだけど。

    フレディが階段を引き返してくるときのハラ

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    2021年02月04日
  • 太陽がいっぱい

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    ミステリー小説、という事前情報だけで読み進めた。
    主人公リプリーはクズと評されることも多いけれど、誰もが持っている側面の一つを演じているに過ぎないように思う。
    彼は偶然にも機会と、閃きがあった。
    きっとそれだけなのだ。
    そのように思う私もまた、クズの素質があるということなのだろうか。
    犯人視点の小説は久しぶりで、いつ捕まってしまうのか、いつ罪が露見するのか、最初から最後までドキドキが止まらなかった。

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    2020年04月15日
  • 死者と踊るリプリー

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    ネタバレ

    "天才犯罪者、最後の物語”

    リプリーの数々の悪が暴かれ、異常な日常が崩壊する様を
    目の当たりにできるのか、というわけではない。
    作者が亡くなったからシリーズが終わってしまった、
    というだけ。
    リプリーは過去の犯罪の暴露の危機(?)に
    『ジワジワ』『執拗に』追い回されて
    怯えたり焦ったりするかと思いきや、鬱陶しいと
    イラついたり、妙に興奮したり、解決するために
    助力とを準備したり、でも日常はあくまで平穏に
    普通の人として過ごしている。
    過去が暴かれることより、日常が乱されることの方が
    問題の様だ。
    純粋で、俗で、あまりに普通なマダム・アネット
    (癒し系)があってリプリーの危ういバラン

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    2018年10月16日
  • 太陽がいっぱい

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    以前、アラン・ドロン主演の映画「太陽がいっぱい」を観て面白かったので、いつか原作を読んでみたいと思っていた。本屋で探しても見つからなく残念に思っていたら、最近新訳で再出版された。

    有名なリプリーシリーズの一昨目である本作は、原題は「太陽がいっぱい」ではなく「The Talented Mr.Ripley(才能あるリプリー)」。このタイトルのままだったら、きっとあの映画は日本ではそんなに流行らなかっただろう。
    「太陽がいっぱい」、このタイトルは素敵だと思う。
    リプリーが憧れたディッキーの暮らすイタリアの太陽の眩しさと、ディッキーそのものが眩しく見えたリプリーの思いとが重なっており、実に見事だと思

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    2016年07月02日
  • 太陽がいっぱい

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    アラン・ドロンの同名映画も知らず、そのリメイク版『リプリー』も知らず、海外文学が最近読みたいのと、版元が河出、カバーの絵のセンスから読もうと手に取った1冊。青く未熟で自意識過剰なトムの逃亡劇。なかなか良かったです。シリーズ化されてるらしいので続きを読みたい。

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    2025年11月19日
  • 太陽がいっぱい

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     1955年作。
     1960年、ルネ・クレマン監督による、アラン・ドロン主演の映画が名作としてすこぶる有名で、「太陽がいっぱい Plein Soleil」というタイトルはこの映画によるもの。小説の原題は「才能あるリプリー氏」という、ちょっとつまらなそうなタイトルである。
     犯罪サスペンスもの、ということになる。全体の3分の1辺りで主人公トム・リプリーが殺人を犯して、そこからサスペンス風になる。が、私は何となくこの小説に没入できなかった。主人公の性格が曖昧でとりとめなく思われ、その心の動きに近づくことが難しかったせいだろう。
    「犯罪を犯したのちの、追い詰められる切迫感」は、もっとシンプルな描写の

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    2023年05月02日