レイモン・ラディゲのレビュー一覧
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「『あんただって僕を捨てて、ほかの男たちが好きになるだろうよ』すると彼女は、自分には、決してそんなことはしない自信があるとはっきり言った。」
「どうして彼女はそうしたすべてを耐え忍んでいたのであろう? 彼女があまりにもものを重大に考えすぎ、くだらないことを気にするのをひなんした僕の躾の結果だろうか? 彼女はこれまでよりも幸福そうだった。だが、それは、何か異様な幸福で、彼女はそれに気詰りを感じているようだった。」
「だが、と僕は考えた。すべての人間が、自分の自由を恋愛の手に引き渡すところをみると、恋愛にはよほど大きな利益があるのに違いない、と。僕は早く、恋愛なしですますことができるほど、した -
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予備知識なしで、「ドルジェル伯の舞踏会」を読んでみて、良かったんですよ!解説にラディゲの作品ならこの「肉体の悪魔」が一番だ、と書いてあったので、不穏なタイトルだけど読んでみた。
肉体のこともあったけど、ドルジェル並みに精神の揺らぎが緻密に描かれていました。ドルジェルと違うのは、思考がマイナスなこと!ドルジェルはプラスだったので、悩みつつも爽やかで青春ぽい煌めきが良かったのですが、まあ主人公のこじれっぷりったら!!
若い男性あるあるなのかもしれないですが、考えすぎ回り道しすぎ素直じゃないのに、根だけは真っ直ぐ。
タイトルらしく肉欲のほとばしりが強く感じられたのは、一緒に収録されている「ドニーズ -
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ネタバレ友人に勧められて読んだ本。
恋愛の心理描写のある本を読みたくて。
全体の8割が内観的な文章なのに、
しつこさを感じさせないラディケの文才に驚く。
だらだらとなりがちな物語を、若くして書いたとは信じられない、人生を達観したラディケの一文が引き締める。そういう箇所が随所にあって、いちいち唸ってしまった。
恋愛の感情の波をよく表現していると感心しつつも、あんなに情熱的になれるなんてタフだなと若干の尊敬がわく。まあ主人公にとっては、本当の初恋なので、その情熱に納得しつつ。
後半は、この先どうなるのかとハラハラしつつ読み進めた。
ラストが切なくて複雑な余韻を残す。
フランス映画的な「人生なんてそんなもの -
Posted by ブクログ
恋愛。青年と人妻の悲劇。(まぁ大抵は悲劇になりますよね…´д` ;)
ラディゲは『肉体の悪魔』から、戦争が原因の"放縦と無為"によって一人の青年をある型に入れ、一人の女性を殺しているのが見てとれるだろうと語っている。戦争の影など微塵も感じさせない本だが、改めて考えると、戦争のためにジャックはマルトから離れないといけなかったのだから戦争の鋭い影が主人公とマルトを殺したんですね。
これは恋愛悲劇です。
恋愛した心情が驚くほど分かりやすく描かれている。なるほど、面白いッ‼コロコロ様変わりする気持ち、不安がってたのに次には喜んでる!なんて忙しいんだ。「少しは休め」、といいたくなる…けど違うんだろう