レイモン・ラディゲのレビュー一覧
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248P
レーモン・ラディゲ Raymond Radiguet
生年:1903年
没年:1923年
フランスの詩人・小説家。風刺画家を父として、パリ郊外に生まれる。幼少期は成績優秀な生徒だったが、長じて、文学に傾倒。14歳で『肉体の悪魔』のモデルといわれる年上の女性と恋愛関係となり、欠席が増えて退学処分となる。退学後、詩人のジャコブやコクトーと出会い、処女長編小説の本作で文壇デビュー。ベストセラーとなる。その後もコクトーと旅をしながら『ドルジェル伯の舞踏会』を執筆するが、1923年、腸チフスにより20歳の若さで死去。
肉体の悪魔
by ラディゲ、江口清
ある人たちにとっては不幸なことが、 -
Posted by ブクログ
一般的な恋愛物語ではないと思わせる様な文体。16歳とは思えないほどの思慮が成熟した主人公が歳上女性を愛していく様を描いている。勿論思慮が未熟であるとも取れるが、文体のみで主人公の気持ちを想像するのであれば、常識的な世間批判からも苦しめられ、非道徳と道徳を常に真面目に考えている主人公の葛藤が描かれている。それを読者が肉体に取り憑かれてしまっていたと結論付けて了えば其れ迄であるが、愛するが故にマルトに対する姿勢や言葉が冷徹になりエゴイズム化していく様は、人間誰しもが持っている愛情の裏返しである。
愛しているが故にマルトに自己を投影させ類似性を探っている主人公の想いが何とも可愛くなってくるのは私だ -
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某作家さんがオススメしていたので、ずっと気にはなっていたけれど、内容もラディゲという作家も知らず、今の今まで。もっと早くに読みたかった!という思いと、今でないと理解できなかったところが多数あるのではという思いが混在しています。
恋愛心理をここまで冷静に書けること自体が、異様というか偉業というか。恋愛に陥っている人間の心理を描写すること自体はどこまで珍しくもないと思いますが、全編を通して感じる、どこか冷めた視線がおそろしい。
好きだとか愛しているだとか、好きだから触れたいだとか愛しているから守りたいだとか、そういう単純な仕組みになっていない人間の心の構造をよくぞここまでという風に説明されて、正直 -
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あとがき(訳者)新庄嘉章さん曰く『年上の女性との恋愛,その場合の男性のエゴイズム,そのエゴイズムの犠牲となる女性の死』のお話で『少年から青年になろうとする最も動揺定めない過渡期の魂を,冷徹な目で凝視して』るのがすんごいとのことですが,そう表現されているほどありきたりな感じではありません。
私はこれは優等生のお話として読んだので,俗っぽい設定ではあるけどリアリティがあったしすごく共感して面白かったです。主人公とマルトが共鳴したのはお互い優等生だからだと思うんです。それは戦時中だからだとか,子どもだから女だからという押さえつけではなくて,気質としてのいい子ちゃんがお互いを引き合わせたのではないでし -
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あらすじだけを言えば、まだ十代の若い男が人妻であるマルトと不倫関係に陥り、最終的にはマルトが不倫でできたと思われる子供の出産のせいで死ぬという悲劇的なもの。この話自体で何が言いたかったのかよく分からないが、内容それ自体よりも、その過程の描き方や心情の分析が鋭く、良い作品にしている。
この作品は筆者が若干17~18歳の時の作品であるということに驚く。内容や筆遣いがそのくらいの年齢の人物によって書かれたと思えないものである。印象的なのは、婚約し同棲する夫との寝室の家具をマルトと主人公が選ぶところである。主人公は結婚するマルトの夫に対して嫉妬を覚えるが、マルトとその夫の家具の趣味を否定し、彼ら -
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大学のフランス文学講義の予習で読みました。
フランス文学は人間の内面を緻密に表象していくのが特徴的ですが、「肉体の悪魔」では感情をどこか俯瞰したような機械的な描写で内容が濃かったです。
マルトと僕のお互いのバランスの駆け引きが一文で記されたりしますが、何倍も時間をかけてじっくり読みました。
主人公「僕」もそんな語り方の癖を自覚しているかのように、このように語っているのが面白いです。
『父の首尾一貫しない行動の理由を知りたいという人のために、僕が3行で要約してあげよう。最初は僕を好き勝手に行動させておいた。次にそのことを恥じて、僕よりむしろ自分に腹が立ち、僕を脅した。だが結局、怒りに流さ -
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登場人物を全員張り倒してやりたい・・・この話をここまで高潔な文章で静謐に綴った著者が本当にすごい。
しかも、内容がすべて主人公の少年の回想と独白というスタイルなので「相手が本当はどう思ってたのか」とか「本当のところはどうだったのか」とかが曖昧で何度も読んで色々考えるのも面白い。本当に主人公との子どもだったのか?それとも夫?彼女は最後に読んだのは主人公の名前?それとも子供の名前?
それにしても、妊娠後期の女性を極寒の雨の中歩き回らせる主人公を本当に張り倒したい。それ以降彼女は体調を崩し、産後の肥立ちも悪くそのすぐ後に亡くなるので主人公のせいで彼女は亡くなっているのでは。だけどそれを、彼女は望んで