ジェリー・トナーのレビュー一覧
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風変わりなスゴ本。
奴隷のしつけ方というマネジメント本というよりは、古代ローマ時代の奴隷制度について生々しく語ったという仕立てで読み易い。奴隷を資産、物として扱い、時に足の骨を折り、目を潰し、ウツボの生き餌にしようとし、女奴隷には我が子を生ませようと好き勝手に振る舞いながらも、一部で感情移入して金品を与えたり、奴隷身分を解放してあげたり、師弟愛のような奴隷との家族感情を育む一面もあって、この辺りは現代人の感覚では容易に理解し難い。もっと理解に苦しむのは、奴隷に生ませた子も奴隷だという事。まさに、唯我独尊、欲望の真骨頂、ファミリアという独裁国家だ。
現代人も欲望の奴隷だとか、資本主義の奴隷な -
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仮託された著者マルクスは2世紀頃のローマ市民(軍人でない者はない)で名家の名に恥じぬ勲功を挙げ、現在はカンパニア(イタリア半島)とアフリカにある所領を管理している。日本でいえば江戸時代初期の大名か。カルタゴ戦争の記憶は生々しく、当時も蛮族との戦いが絶え間ない。もちろん帝国は勝利し、奴隷が発生するが、1世紀にもなると奴隷同士や主人の種などで家内出生した奴隷も多くなり、市場が設けられた/複数を使役するときには奴隷の出身地はバラバラにして共通語による共謀を避けるべきとか、食事は最低限であるべきで、たまに褒美に主人家族の食べ残しをやるぐらいがいいとか、なかなか参考になる
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古代ローマ帝国市民であり貴族である、架空の人物に、
当時の奴隷について、扱いのノウハウ等を語らせた本。
実際は、解説のトナー氏が多くの文献を基に書いている。
古代ローマの奴隷制について、ここまで詳しく書かれた本は、
なかなか興味深いものでした。それも、使う側という架空の人物に
語らせたことがユニークでわかりやすかったです。
奴隷の買い方、しつけ方、罰し方、奴隷の楽しみとは・・・。
マルクス氏、尊大な上から目線で語っています。
しかし、長い慣例とはいえ、奴隷の身はしんどい。
解放されてもファミリアという制約に縛られる。
更に・・・“交配”ですか!男女の営みは家畜も同然とは~!
あぁ奴隷にならなく -
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いつの時代も歴史観というものは強者側によってつくられているものである。当時の奴隷たちは主人の好き勝手に扱われ不当な理由で鞭打たれ、性的虐待をも受けていた。それは男女の別なく一方的な欲望のはけ口となっていた。しかしこれは過去の遺物では決してない。現代においても発展途上国等の貧しい国々においては、今も奴隷的搾取が行われている現実がある。それは貧困で喘ぐ親を言葉巧みにだまし子供をさらい、農村部で働かせたり売春させたりしている。人間の権利を搾取し被害者の心の傷を深く残すこの行為が今も続いている事には悲しみを禁じえない。世界の人々の理解と力を合わせて奴隷制の全世界での撤廃がされる事を強く願っている。
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本書のタイトルを見て、眉をひそめた方も多いかもしれません。
「奴隷」などという理不尽な存在を「しつけ」るなんて、まるで奴隷制を正当化しているようではないか、と。
いえいえ、そんな意図は毛頭ありません。
奴隷制は今やどの国でも違法ですから、本書も当然、過去の「奴隷制」を扱っています。
しかも、それは当時、「当たり前」のものでした。
過去に「当たり前」にあったものを、現代の価値観で断罪する態度はいけません。
謙虚に受け止める姿勢が必要でしょう。
と、前置きがやや長くなりました。
ローマ帝国時代の奴隷制とは、実際にどのようなものだったかを紹介しているのが本書。
奴隷の買い方から活用法、罰し方まで、豊 -
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ネタバレ古代ローマ等の文献をつぎはぎし、奴隷管理についてHOWTO本風に仕上げてある。キケロやセネカ、プルタルコスなどで読んだ覚えのある話も多かった。奴隷は人間であり資産でもあり、管理の観点からその扱いは一様に残酷なわけでもないようだが、奴隷のむち打ち専門の業者の存在、奴隷の証言には拷問が必須だったり、主人に子供を産まされて子供ごと奴隷として働かされるなどぞっとする話もあった。
単に現代の視点からローマの奴隷制について書くのではなく、奴隷は自由人より劣った存在であり、厳しく使役して当たり前であるという概念を内面化した当時のローマ貴族が書いているという設定なので、読みやすく面白い。 -
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ネタバレケンブリッジ大学ジェリー・トナー氏による古代ローマ貴族が当時の奴隷について語る形式の本。語り口調の文章は取っ付き易く、内容も興味深い。
奴隷を度々卑下しながら「奴隷とは運命次第で自分が身を置くかもしれない身分なのにそれでも奴隷を軽蔑できるだろうか」など理想と現実の乖離を感じる。
女奴隷が産んだ自分の子は「自分の血を引いた奴隷」扱いのようだが、もしかして売りに出すこともあったのだろうか。
おもしろい本だが、分かりづらい箇所がいくつかあった。例えば、女奴隷を解放し主人の正式な妻とすることが書かれている。一方「皇帝の奴隷や解放奴隷が特別な地位にあることは、クラウディス帝によって法的にも認められた。ク -
Posted by ブクログ
代々奴隷を扱ってきて奴隷の扱いはお手のものという架空の人物・マルクスが語る奴隷管理方法の本。ケンブリッジの教授さんこんな遊び心のある本だしちゃえるんだなぁ。
これを読んだ誰もが思うでしょうが、現代の会社と似ている。勿論ここまではしないよってこともあるけど奴隷の方がマシじゃないのこれってこともある。
奴隷を不当に傷つけたり殺したりが禁止されていたり、自殺未遂歴を開示しなきゃいけなかったりしたのは知らなかった。また開放された後も主人のために働くのが当たり前だと思われてたことも。この辺りもプライペートの時間って何それな会社に通じるところがあって微妙な気分になった。