三品和広のレビュー一覧
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経営とは立地と構えと均整である、と喝破した著者の日本企業論。立地と構えが悪化しているのに、それにしがみついて小手先の商品改良や事業の幅だしをしても利益率を回復することはできない、ということをいくつかのデータで示しており、それなりに説得力はある。特に戦後日本と現在の中国のアナロジーはその通りだと思われる。
ただ本当に飛び地へのリインベンションしか手がないのかは、甚だ疑問である。滲みだしの悪い例として新日鐵を挙げているが、これは出向先確保のためにでたらめな多角化を進めた特殊な例であり、これを以て滲みだしがすべて成功しないと言い切るのはやや乱暴と思われる。むしろ飛び地に手を出して成功する企業の方が少 -
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日本企業の戦略が有効に機能していなかったという仮説をデータに基づいて検証しようというものだが、
前半3章までの論証はどうも怪しい。。
が、4章以降は真面目で有用な議論が進められている。
以下は各章のまとめと感想。
概ね良い本だったので、少し丁寧に書く。
最初は「環境要因を取り除くために超長期で業績を見る」として1960年から2000年の40年間の日本企業のデータを持ってくるが、ここに他国との比較はない。
続いて、90年から2000年の10年間をタームで日米有力企業の比較を行う。
(超長期はどうした・・・しかも失われた10年から・・・明らかな選択バイアス)
戦略不全を主張するロジックもおか -
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179件の戦略暴走例(多額の特別損失計上)を1ケース数ページでまとめてある。
「暴走」にも不動産バブルに合わせてリゾート開発を行ったような例もあれば、国際化・多角化等、当時の状況をふまえれば真っ当な打ち手にも見える(実際に上手くいった競合もいる)が、最終的に撤退することになった事例について、経営者の考えとその盲点を簡潔に記載してあり、多額の投資の難しさが伺える。全て終わった現在の視点だからこそ、不動産や半導体への投資が上手くいかないであろうことは予想がつくが、現代もITベンチャーへの投資が再び過熱しており、これらのどれが暴走につながるかは判断が難しい。
各経営者は大きな投資を行う前にこの本を読 -
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引き算の美学。
・ラジカセ - 録音機能、スピーカー =ウォークマン
・パソコン - キーボード、マウス、USB =iPAD
・扇風機 - 羽根 =ダイソン・エアマルチプライヤー
大量生産、大量消費を前提とした製造業の時代は終わった。物質的な豊かさから、精神的な豊かさへ。テレビの画面サイズ、画素数、太陽電池の変換効率。車の燃費競争も危ない。数値的なパラメーター、価値観はすぐに模倣され、過当競争になる。
モノが溢れた今、人々が求めるのはより充実した時間の過ごし方とか体験だ。評価軸自体をつくり替える必要がある。質感、操縦感、乗り心地など数値化できない価値は模倣できない。 -
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戦略不全の論理を読んで以来、その鋭い指摘に共感できるところが多く、気になる存在になった三品先生の最新刊。
さまざまな事例紹介も興味深い。
リ・インベンションではやりたいことを持った個人が先にいて、あとからプロジェクトが立ち上がるのが普通であって、安易な社内公募に走ると、顧客にそっぽを向かれるだけという指摘に、思わず苦笑い。事業が厳しくなると、新規事業を検討するワーキンググループが各地で立ち上がるが、一過性で終わることが多く、本当に真剣に考えている人は一体どれだけいるだろうと首を傾げることが多い。
一通り読み終えると、大企業が大企業として生き続けることが厳しいと思わざるを得ない。特に日本の大企業 -
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ネタバレ<本当に大雑把な概要>
戦略は長期的にしか効果をもたらしえない以上、経営者がコロコロ変わっては戦略は機能しないであろう、ということで電機業界に関して経営者の在職年数と企業の収益性について統計的に分析したところ、有意な結果が得られた。
また部下の管理を行う管理職と、戦略を考える経営職は分離すべきであり、(CEOとCOOみたいに)これらに求められる適性が異なるために、経営職の社内外での専門教育が必要である。
<所感>
・因果が逆の可能性について検討が不十分じゃないかと。つまり収益性が低い企業は経営者がコロコロ変えられてしまう、っていう因果も十分あり得ると思うのだけれども、その話への言及がない…
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職場ボスおすすめ本の1つ。
日本企業がなぜ米国企業と比べて戦略"不全"になりやすいかを説明した本。
戦略不全:戦略があるのにそれが機能しない状態を指す
日本企業と米国企業の大きな違いは、組織構造にあり、
日本企業は現場が権限を持ち民主主義的な指揮系統なのに対して、
米国企業はトップダウンで中央集権的に判断が決められる。
そのため、日本企業は戦略の共有ができていないと戦略不全に陥りやすい。
しかし、米国企業はトップが戦略を決めるとそれを実現する役割の従業員がしっかりと実行をする。
過去の優良企業をみると、一度成功してから成長戦略を再度立て、それを実行している企業が強い。
日 -
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三品教授による経営分析だが、長任期の経営者とその期間の業績との関係性を見たもので、なかなかこういうものは見たことがない。一般的に、長任期だと老害と片付けてしまいがちだが、そうではなく、長任期に耐えうる年齢で就任した経営者を取り上げている。
経営者は責任感が強いだけに、自分の任期中に成果を出さねばならないと考え成果が出る課題にばかり注力し、従業員は任期中はガマンすればいいとだんまりを決め込む。そういうことが往々にして見られるということ。最初から長任期であれば、時間が掛かる課題にも取り組めるし、従業員もやらざるを得なくなる。
特にGEの章が良かった。仕事のプロセスとそれを支える言語の体系が、GEの -
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・一般に企業は市場経済の供給を担う部品とみなされるが、市場と企業は実は同じ機能を司る代替的な組織であるという事をコースは看破した。大企業は市場を侵食しているというのである。
何が違うのか。大企業の中では、指揮を受ける側も指揮を発動する側も、市場経済の原動力たる利己心を少なくとも一時的にサスペンド、または保留しているのである。かくして大企業は利害を一にしない多数の人の間の、利己心を保留した継続的な協業の上に初めて成立する。そうであるがゆえに、ここには宿命的な問題がついてまわる。端的に言えば、「人を動かす上で何が利己心にとって代わるのか」という問題がそれである。「利害を一にしない構成員をいかに動機 -
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膨大な企業事例をもとにして、個別の問題点を深掘りしながら、共通する組織や個人の問題を抽出し、体系化した力作。著名な企業が多数登場し、非常に分かりやすく、身につまされる思いがする。
個別事例もいいが、最後の終章の総括が更にいい。なぜ戦略が暴走するのか、経営者の立場、企業のステージなどの要因に基づき分析している。また、過去の類似した研究との相違点を示しながら、研究のあるべき姿も提示している。取締役会が監督機能を果たせていないことが定量化されているのも説得力がある。
結果を見て、それをまとめているだけという批判もあろうが、個人的には高く評価したい書籍である。 -
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「経営戦略を問いなおす」や「戦略不全の論理」などで有名な三品先生の最新刊。
現状の不景気、不幸のなかになにがある?
どうするんだ、日本企業?
やれるのか、日本企業?
著者の熱い想いが終始一貫して伝わります。
「リ・イノベンション」が今後の活路だと著者は論じてます。
歴史に残る発明を取り上げて、一からやりなおそうとするものです。
ここで言いたいのは、技術力以上に構想力やデザインが必要だということ。優れた人材がこのリ・イノベンションを実践し、新事業を立ち上げることができたのであれば、経営を束ねることくらいはやってもよいというのことです。
ヤマハやセイコーなどの事例を取り上げ、事業の興亡を