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成長至上主義の病から脱け出さないと、日本企業には未来はない。それでは、企業として何を追求するべきなのか。腕時計、ピアノ、鉄鋼などのケースを使って、日本企業が採るべき道を示す。
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Posted by ブクログ
三品さんの本は「戦略不全の論理」「戦略不全の因果」でもそうですが、データに基づいた客観的な分析を出発点にしている点で、とても共感が持てます。さらにデータ分析だけでなく、戦略や経営者の資質など数字にあらわせない視点も取り上げているので、非常にバランスの取れた本という印象を受けますが、本書も同じ特徴を備...続きを読むえていました。 「戦略不全の・・・」と比べるとだいぶ軽い読み物に見えますが、中身はかなり深いところを突かれていると感じました。特に、多くの日本企業が「錦の御旗」にしているイノベーションやグローバル化について、単純にやればいいってわけじゃないよ、と警鐘を鳴らしている点には共感しました(中身が大事だということです)。 「世界でもっとも貧しい大統領」として昨今日本でも有名になったウルグアイのムヒカ前大統領が、国連で「我々は発展するために生まれてきているのではない、幸せになるために生まれてきているのだ」というスピーチをされましたが、これを三品さん流に企業に当てはめると「企業は成長するために生まれてきているのではない、人々を幸せにするために生まれてきているのだ」ということになるでしょうか。我々が当たり前と思っている前提が本当に正しいのか、少し立ち止まって再点検する意味でも本書は素晴らしいと思います。
「心の叫び」を事業にする。 戦略不全シリーズは論理的に日本企業の問題点と処方箋を提示していたが、本書とそのアンサー本である「リ・インベンション」では、マインドや組織文化の部分にまで踏み込んで述べている点において、学びが大きい。 ◻︎概要 日本企業が盲信的に正しいと信じ込んできた解「イノベーション...続きを読むと品質、多角化と国際化」に疑問を呈している(どうする?にあたる)。その根源にあるのが、成長戦略と言う不可思議なモデルであり、成長戦略に疑問を呈するところから本書はスタートする。バラ色の中期経営計画と悲惨な決算発表のコントラストを見ることで、成長戦略に終始する日本企業に異議を唱える。 ◻︎所感 読者も、本書を読むまでは盲信的に「イノベーションや多角化」は絶対解だと信じてきたが、それらは時代と市場によって変わること、さらには「世の中を変えたい!」という卓越した個人の「心の叫び」抜きにしては、水泡に帰すると気づかされた。経営計画やそれに準ずる数値目標に合わせいくことでは、予測可能なものしか生まれない。 企業にとっては既存事業のオペレーションを行う以上、経営計画は不可欠であるが、企業全体を計画に縛り付けていては、個人の心の叫びは日の目を見ないだろう。筆者の言う様に、スピンアウトなどして、既存の枠組みと一線を画すことが求められる。 〜〜<各論>〜〜〜〜 ■イノベーションと品質 (2章/3章) ・イノベーションはパンドラの箱 -いずれ自分の首を絞めることになる -志とマーケティングなきイノベーションに長期の繁栄なし ・コンフォーマンス・クオリティが求められるフェーズなのか ■多角化と国際化(4章/5章) ・滲み出しの限界 これも志ある専業家や狙い打ちして進出してきた企業には勝てない ・国際化はレッドオーシャン+国家の壁 かつての日本も欧米企業に市場の門戸解放しなかった 今の新興国も同じだけでなく、日本企業の相手も増えた(アジア)
本当に新興国ですか? - 国内は成長余力がないから新興国に打って出るというのは、理にかなっているようで、侵攻される側の視点がはいっておらず、日本企業の独りよがりにすぎない。日本が新興国だった戦後、侵攻してくる欧米企業に対し、日本政府はあの手この手で自国企業の防衛につとめた。日本の優秀な官僚が、外...続きを読む国為替法や外資法を駆使して外国企業の参入を制限した。その結果、富士写真vコダック、キリンvバドワイザー、トヨタvGM、雪印vクラフト、花王vP&G、カゴメvハインツいずれにおいても、日本市場では、外国の名門企業を圧倒している。外国企業で戦後日本への先行投資が実を結んだのは、石油、コンピュータ、化学、医薬の4業種だけである。日本政府は国益に直結するこれらの外資については例外的に参入を認めて保護主義政策の例外としたのである。 日本ですら、自由貿易に門戸を開放したのは、本格的には2000年代に入ってからであるといわれる。対して、今の中国やインド政府の立場は、戦後日本とそれほど変わらない。新興国政府の視点からみれば、日本企業が参入してきたからといって、そう簡単に門戸を広げるわけがなく、技術やノウハウを吸い上げられて、後に撤退を余儀なくされる。 本当にイノベーションか? セイコーが1969年に世界ではじめてクオーツ式の腕時計を開発した。スイス勢のゼンマイ式機械時計が1日20秒狂うのが当たり前だった時代に、1秒に3万回振動する水晶を利用して精度を5000倍に高めた。もっとも、クオーツの原理を発明したのは米ベル研だったので、セイコーの快挙はそれを腕時計サイズに小型化したプロセスイノベーションだった。 1970年代、スイス勢は壊滅的な打撃を受けたが、セイコーの快進撃は80年代に急ブレーキがかかる。80年代、香港勢が10ドルのクオーツ時計を世界に輸出し、70年代には3000ドルしたクオーツ時計の値段をわずか10年で50ドルまで下げてしまった。90年代にはカシオが100ドル前後のGショックで市場を席巻し、2000年になると、携帯電話が普及して、クオーツ腕時計を無用の長物にしてしまう。 皮肉にも、クオーツ革命が実用腕時計の頂点を極めることで、実用時計に幕を引いてしまう。 一方、セイコーの凋落にあわせるように、スイス勢が息を吹き返す。「腕時計は男性が身につけることを許される最高級の宝飾品」といわれ、50万円を超える高級機械式腕時計が富裕層の中国人などにも飛ぶように売れている。 戦略失敗に気づいたセイコーが、Grand Seikoで、高級機械式腕時計に再参入したが、一度傷ついたセイコーブランドはPatekPhilippeやロレックス、オメガ、Breitlingとは釣りあわない。 スタインウェイのピアノは一台2000万円もする工芸品だ。これに対してヤマハの川上源一は、木材を120度のオーブンで強制的に乾かしたうえで画一的な自動化ラインに流すことで、スタインウェイの100倍の規模でピアノを大量生産し、71年にはアメリカのグランドピアノ市場の半分までを占領する。ヤマハは、職人がつくる工芸品のピアノを自動車工場のようなラインにのせて工業品に仕立て、価格も150万円台~として、世界を震撼させた。ヤマハはスタインウェイを何十台も購入し、バラバラに分解して部品単位で素材の出所を突き止めるという作業を繰り返し、「スタインウェイを超えるスタインウェイ」をつくることを目指した。 しかし、80年代に入ると、韓国のユンチャン、サミックという2大メーカーが、60万円台のグランドピアノで市場を席巻しはじめ、ヤマハの凋落がはじまる。工業品としての品質を高めて価格を下げ、量を追う戦略は、短期的には成功しても、長期でみれば利益なき成長という壁に突き当たる。 高度経済成長が終わった60年代から今日まで、売上高は増加しているが、利益率は下降した。「利益なき成長」の図式は、日本企業が海の向うに活路を見出して、対米貿易黒字を積み上げた結果だが、利益という点では何のゲインもなかった。 失われた20年といわれるが、日本企業の利益でみれば、ニクソンショックの71年、石油ショックの73’年ごろから今日まで、半世紀の長期にわたり、「利益なき無理やり成長」を続けている。
【ポイント】 18/いまだに日本は、「無理やり成長」のつけに苦しんでいるのに、相変わらず 「成長戦略の大合唱」でよいのでしょうか? 32/セイコーが開発競争を勝てたのは、主要部品を内製化できたからだ。 他社は試作品はできても、量産段階で足踏みした。 セイコーの快挙は、製造工程の...続きを読むプロセスイノベーションだったと見るべき。 44/セイコーは量をおって自滅した。 50/スイス スウォッチ(ハイエックCEO)の逆襲 ハイエックは、経営資源を普及帯に集中投下したセイコーに対して、全方位戦略 とした。 売上げと利益が単一のセグメントでは両立しないことを熟知していた。 スウォッチの戦略は、個性あふれるブランドのポートフォリオ (ブレゲ→オメガ→ラドー→ロンジン→スウォッチ) 55/クォーツ革命とはなんだったのか? 第一幕:セイコーは雲上帯市場に投入。 第ニ幕:普及帯市場の出現と中級帯から普及帯へ 第三幕:実用時計市場の喪失 (時計をみにつけなくてもよい) 56/セイコーはどうすればよかったか? →事業立地を移し変える「転地」 時計の副次的な要素(ファッションステートメント)が出現 セイコーは、旧来の事業立地の防衛に明け暮れ、主役の座からおちた。 70/日本人の品質信仰に異議を唱える ?信仰の起源に疑問 ←HPのDRAM品質の発表 おだてられて、舞い上がり、品質のなんたるかも考えないまま、 日本はずっと高品質の国だったのごとく自信を持ってしまった。 ?品質信仰の根拠がゆらぐ。←日本が高品質を占有する時代はおわった。 ?品質信仰の弊害 79/「品質の多様性」絶対的な定義はなく、いくつもの側面がある。 ジャガー:パフォーマンス・クオリティ ◆顧客の期待を上回る程度 カローラ:コンフォーマンス・クオリティ◆顧客の期待を裏切らない程度 パフォーマンス・Qは、顧客に見える素材や仕上げがかもし出すので原価が上がる コンフォーマンス・Qは、製造工程からバラツキを排除するので、あげればあげるほど 材料・作業のムダがへり、原価が下がる →「品質を上げれば原価が下がる」 80/スタインウェイのピアノには個体差があり、はずれがある。 107/コンフォーマンス・Qを訴求すれば中国でも勝てるという決めつけは危うい。 米国が欧州を追い抜いた時、日本が米国を追い抜いた時も、新たに豊かになった国に 旺盛な内需があり、その内需が大量生産を支え、大量生産がコンフォーマンスQを鍛える という図式があったが、次には中国に次のヤマハがでてくる。 113/日本の「地縁」信仰 ホンダは、総合エンジンメーカー、トヨタは、総合量産車メーカー、 麒麟麦酒は、総合飲料メーカ:「どこへ」多角化するかなく、ビールにちかければなんでも 一方、米国は、ビールのブッシュ、ワインのモンダビと自分のアイデンティティを鮮明化。 114/「滲み出し型」の日本、「狙い撃ち型」の米国企業、 独立した事業を買い集め、事業ポートフォリオを組む。 125/日本企業は良好な労使関係をを維持する代価として、人件費を固定費化した。 ←余剰人員がでる局面で大きな支出を強要する。 127/手当たりしだいの多角化に走った。←雇用を守るため 139/そもそも余剰人員を抱えないように細心の注意をはらって採用を進めるべき 147/「国内は成長余力がないから、新興国に打って出る」は、そもそも日本企業の自己都合 でしかない。「侵攻」される側の視点が入っていないどうみても動機が不純。 173/日本で成功した外国企業(自由化以前に地歩を固めた)は、日本政府が政策を実現する上で 必要不可欠な製品を提供していた。しかも、固有の資源や技術を保有していて他社にかわれない。 →新興国に進出するにあたり、この「固有の資源や技術」をもつ会社はどれだけあるか。 182/しんこうこくでは、汎用品にてをださず特殊品(ニッチ)で勝負すべし。 192/ウェルチは事業の選択で、日本がやらないものを選んだ。テレビ、半導体などは切り捨て 日本のちからがおよばないジェットエンジン、医療用診断装置、ガスタービンなど。 日本を適にまわさないポリシー。 193/主戦論か不戦論か 194/日本の技術は世界一というが、それは日本の尺度で測った場合のこと。←砂漠での太陽電池 196/日本の得意戦法は、実行部隊を意思決定に関与させ、計画の推進力で勝負するもの 実行部隊の技能形成を促して、現場で判断をさせるようにするための工夫 しかし、この戦法が機能するには、推進力を発揮する場を定める指揮官が必須。 挑戦のしがいのある戦場を対極的な立場に立って「指揮官」が定めたこと →ところが今は「集団経営」になっている。 199/創業経営者と操業経営者の区別が徹底的に必要。 203/ねらい目は、「さらなる拡散市場の先取り」 戦略ポイントは、「特定の顧客グループにフォーカスすること 207/リ・インベンション 技術的イノベーションは、最初の着想も大切だが、それに続く実作業の割合が高く、 組織戦や持久戦になりがち。 今後は、日本発の着想が韓国や中国で量産化される時代になる。 208/り・シンベンションでは、技術力以上に構想力を要求する。 技術力は組織に宿るが、構想力は秀でた個人に宿る。 216/成長は結果として実現するもので、目標は「事業活動を通じて世の中にもたらす 変化」という言葉で語るべき。 企業に期待される社会貢献は、 ?すでにあるモノやサービスを今より安く提供する。 ?いまだ世の中で買う事のできないモノやサービスを変えるようにする。 ◆自分の「やりたい仕事」を精密に定めることこそ経営戦略の第一歩となる。 集団が、合議で決めることではない。卓越した個人の心の叫びに従うもの。
現代の日本企業(主に製造業)の直面する問題を鋭く指摘した一冊。個人的に一番興味のある分野だけあって、非常にためになり興味深い内容だった。著者が母校で勤務するの教授というのも親しみの持てる点。 日本企業の抱える問題を総称すると、「成長至上主義」。不安定な時代においても中計は総じて売上増・益増の右肩上...続きを読むがり。リーダーが描いたビジョンを実行するための経営ではなく、やることを合議で決める手段としての集団経営の蔓延。高度成長期の終焉から20年余が経つこの時代においても、日本企業のDNAが悪い意味で根付いてしまっているのだと感じる。 窮地に陥った企業にありがちなイノベーション戦略、多角化戦略、新興国戦略が果たしていかほどの効果を持つものかということについても分析があり、今後の企業のあり方を考える上でとても勉強になった。
成長の奴隷になっている日本企業。本来は事業を通して「やりたいこと」を実現するのが企業なのに、そうなっているか。成長は結果として実現するもの。
最近、外資系勤務の人の本ばっかり読んでたせいか、大学教授からみた企業論は違った視点でとても面白かった。実例を上げて、企業の方向性をどのうにもっていくのがいいか、読者に考えさせるようになっており、非常に読み応えがある。押しつけるような回答がなく、問題提起、事実に基づいた検証のみで終わっているところが、...続きを読むこの本のいいところではないかと思う。 今の日本企業が置かれている立場、「成長」の意味、ぜひ就職活動をしている学生に読んでもらいたいと思う。
日本企業のたたされる厳しい現状とその原因を構造的に分析した本。経済の知識がなくても読めるようにはなっているが、見慣れないグラフが出てくることもある。 筆者の主張は一言で言えば「日本企業は今までのように商売を続けては儲けられない」ということかと。 それに対して人々が解決策として考えている"イ...続きを読むノベーション""新興国市場""技術の卓越性"などのウソを暴いていく。 しかし筆者のいう解決策は非常に短い分量しか割かれていない。 日本企業の現状とその未来を考え始めるのにはとてもよい本だと思う。
日本企業の成長至上主義に対して警鐘を鳴らす良書。今起きている世界的な変化を無視して、安易に成長戦略を描いてもうまくいかない。図に出てくる過去の出荷数量と出荷額推移のグラフや売上高と利益率のプロットを使った分析が実にわかりやすい。「体を入れ替える」「リ・インベンション」。常識を創りに行かねば、埋没する...続きを読むのみ。
「戦略不全の・・・」で有名な三品先生の著書。読み物になっていて、読みやすい。が、中身は結構濃い。「成長戦略」に対しての強烈なアンチテーゼから入るが、なるほど正しい。経営にとって、やはり重要なのは、「志」と「撤退する勇気」だと思った。
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