ヴォルテールのレビュー一覧

  • カンディード

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    津村の読み直し世界文学の1冊である。啓蒙主義のボルテールであるが、思想を示したものというよりも、哲学者の冒険を描くことで、教会の権威を借りたデタラメを描いたものである。カトリック、プロテスタント、イスラムについてその聖職者のでたらめな姿を描いている。

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    2023年05月10日
  • カンディード

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    18世紀の啓蒙思想家ヴォルテールの哲学的小説。波乱万丈の冒険譚を通じて「最善説」に疑問を投げかける。

    何やら哲学がテーマになっているというのでどんな小難しい話が出てくるのかと思ったら、冒頭からたたみかけるような災難・悲劇・試練のオンパレードで引き込まれた。息もつかせぬスピード感で波乱万丈の大冒険を繰り広げる主人公。彼はただ運命に翻弄されているだけにみえて、その胸には常に「恩師の教え『すべては最善である』は本当か?」という命題がつきまとっている。この「最善説」という考え方は、本書に反発したルソーのように色々な解釈ができ、多くの人を議論に巻き込んでしまう魔力のようなものがあるように思える。この物

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    2022年06月27日
  • カンディード

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    面白かった。純粋で真面目で師匠の説く最善説をひたすら信奉するカンディード。苦難の旅で信じるものが揺らいでゆき、第二十三章では「この世界はいったい何なんだ」と悩むカンディード。第二十九章礼を尽くしてきた身分の高い恋人の兄を面と向かってとうとう「バカ殿」呼ばわりするカンディード(ここは笑いました)。人間について生きることについて現代でも解決できない同じことを、ずっと昔から人は悩み苦しんできたらしい。「リスボン大震災に寄せる詩」は素晴らしかった。よくも自分はカンディードとこれを読まずに今まで人生に悩んでこられたなと思う。詳しい解説がまた素晴らしく、目を開かされた思い。
    パングロス先生を私は滑稽とは思

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    2021年10月22日
  • カンディード

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    個々の不幸が全体の幸せを作り出す
    盲目的に信じるということの大切さ。
    結果には必ず原因がある。結果は今を見ればわかるが原因は考えないと分からない。
    全ては神によって決められている。全ては最善なのだ。最後には自分の心臓まで食べられてしまうのに人間は自分を飲み込む大蛇を愛おしそうに抱えている。
    働く事は私たちを退屈、堕落、貧乏の3つの不幸から遠ざけてくれる。働こう。休むために生まれてきたわけではない。
    素直に良さを引き受けよう。あまり批判を考えすぎない。
    自分の身の回りの幸せに目を向けよう。

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    2020年12月18日
  • 寛容論

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    「考えの違う人に対して、怒ることなく、寛容でいる」。当たり前といえば当たり前だけども、私にとっても、この本が書かれた当時のフランスの人たちにとっても、実践は難しかったらしい。

    まず、本を読んで驚いたのはキリスト教の教派間で殺人や迫害が公然と行われてきた歴史があったこと。そして、その理由がまさに教派が違うからというものであったこと。本書の書かれた時代のフランスでは、カトリックがプロテスタントやユグノーといった少数派の教派を迫害していたらしい。そうした歴史を述べながら、「それに対して、筆者がそれを戒め、寛容という人徳を持つことを勧めるという流れで構成されていました。

    雑にまとめると、最初の言葉

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    2020年11月15日
  • 寛容論

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    1763年ヴォルテールによって著された『寛容論』

    ある一家に起こった事件に対して憤慨し、
    その要因である宗教団体の「不寛容」な振る舞いに対して、ローマや聖書などの歴史から引用し、「寛容」でないことを弾劾した書。

    そこに日本の事柄も出てくる。
    日本人は全人類のうちでもっとも寛容な国民であると。

    そこにイエズス会の宣教師がやってきて信仰を広めるのだが、
    「島原の乱」として有名なキリスト教徒のあの大静粛は、実はこのイエズス会が自分たち以外の宗教を認めたがらないことが原因だとヴォルテールは言う。
    つまり不寛容だと。

    同様に同じロジックによって、
    ローマを題材などにして、
    寛容によってではなく、

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    2019年02月20日
  • カンディード

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    こんなにも笑える古典は初めてだ。
    たっぷりといたずらな皮肉が効いている。

    不幸の域値を越えて爆笑となる。
    だが中盤、あまりにも悲惨なので笑えなくなってくる。

    だが、終盤はもはやめちゃくちゃで哲学コントと言われるのもよくわかる。


    だが、ヴォルテールは至って本気でこれを書いているのだろう。

    本書を通じて一貫してあるテーマは、
    「人が生きるということは、善なのかそれとも悪なのか?」
    という人や人生の本質への問い。


    実は、ヴォルテールはルソーから批判の手紙を受け取っていた。
    「君の考えには人間の原始状態への考察への配慮が足らないよ」と。

    この『ガンディード』は、そのルソーへの暗黙の返答

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    2019年02月20日
  • 哲学書簡

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    物事の本質を見抜く目を養うのに格好の書。

    1734年にヴォルテールが著したこの『哲学書簡』は、すぐさま発禁にされた。

    あらゆることに批判的な眼をもつことで、物事の本質を突き、自分の頭で考えることの大切さが表わされた書だ。

    時流ではなく本質的な観点から、自国フランスに関係する愚行も批判している。

    パスカルの「パンセ」に対する批判も素晴らしい。
    権威を鵜呑みにせず、かといって素晴らしいことは素晴らしいと認めつつ、極めて理路整然と合理的に批判を行う点だ。

    例えば、
    パスカルは言う。
    人は知性が豊かになるほど、世の中で個性的な人間をますますたくさん見つけるようになる、
    と。

    だがヴォルテー

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    2018年12月03日
  • カンディード

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    「最善説」についての是非。世界は最善にできているのか、できるいるとしたら、不幸な人はなぜいるのか。個人のせいなの?悪いことをしたから。全体としての善。主人公カンディードが遭遇する様々な出来ことを通し、隣人と対話しながら、考えていく物語。頭でごちゃごちゃ理論を考えるでなく、目の前にある畑を耕そうというラストシーンがプラグマティックな印象を受けた。ドイツの観念論、フランスの構造主義、イギリスの経験論、アメリカの分析哲学、プラグマティズム。これらのもとになっているような、なっていないような。啓蒙の時代の17、18世紀であり、近代合理主義というか科学発展の時代の始まりに書かれた本で、現代のように、高度

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    2018年01月13日
  • 寛容論

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    1700年代に書かれた内容を、普通に今の時代に日本語で
    読めるということがとても奇跡的に幸せなことだと
    思いました。また、やはり200~300年前から
    読み継がれているという古典のパワーというものを
    感じました。
    18世紀以前のヨーロッパ、フランスでの宗教対立から
    くる虐殺や殺戮、宗教のなのもとでの不寛容な事象が
    多く発生していころの内容で。。。
    宗教史をあまりわかっていない私にとっては、本来
    理解しがたい内容や文章になっているはずのところを
    新訳ということで、非常にわかりやすく理解しやすい
    内容で書かれてあり感動ものです。

    また200年以上も前のことなのに、今の世界や日本で
    起こっている、

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    2016年10月23日
  • カンディード

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    普段、ニュースに現れるものは事故や事件、災害など人々におこる不幸である。
    というよりも、そういうものこそがニュースになるという面がある。
    起こりうる「災害」や「不幸」を、その理不尽さをどのようにとらえるべきなのか。「カンディード」はまさにその「不幸」を引き起こすもの、つまりはこの世界を創り出した「創造主」に対する抗議、皮肉である。この世界は全能の「神」である創造主が創りだしのだから、間違いなど無い、「全て最善」である。毎日報道され、存在する無数の「事件」や「事故」も最善なのだとしたら、「そんなことはない」と反発を覚えるのではないだろうか。私は最初にそう感じた。ヴォルテールが本書で言いたかったこ

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    2016年01月19日
  • 寛容論

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    都度に有名なヴォルテールの「寛容論」。
    内容はタイトル通り《寛容》を説くものである。ヴォルテールが生きた時代の知識や教養が無いと読み辛い個所が多々あるが…
    (注釈を読むだけでも結構苦労する)

    ヴォルテールの言う《寛容》は主に宗教上の対立であり、キリスト教のみを正しいとし、その中でも派閥間での争いが多々あることに対する戒めであったのだと思う。
    狂信的な信仰・不寛容が生む悲劇を憂い、信仰の異なる人々の間での和解なき闘争に心を痛めていたヴォルテールは、人が人を認め合う《寛容》な人間関係を深く望んだ。

    だが、ヴォルテールの《寛容》は、世界には多様な意見を持つ人々が存在することを認め、互いの違いを排

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    2025年10月18日
  • カンディード

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    人間が思う「正しさ」など幻想だ。そうでないならば、なぜ人間の欲望は直感的にその正しさに反するのだろうか。反するからこそ、誰かが暴走しないように約束事を決め、その遵法精神により「都合の良い正しさ」を人間社会共通の価値観にしているだけである。所詮、我々には我々の範囲で語り得る信仰を生きるしかないはずだ。

    私はこのように考えるが、この思考と響き合うはずの書がこのヴォルテールの『カンディード』。だが、単純な読み解きはできない。

    ライプニッツの「最善説」は、私にとってはカルヴァンによる「予定説」を想起させるもので、起こり得る事は〝人間の価値によらない“という類の思想である。人間にとっての幸も不幸も時

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    2025年10月05日
  • 寛容論

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    痛たましい事件を題材に、ヴォルテールがドラマチックに当時の歴史的出来事を描く。寛容性について深く考えさせる。

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    2025年07月22日
  • カンディード

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    ライプニッツの最善説、カトリックに対する痛烈な皮肉だが、そうならざるを得ない苛烈な現実認識があり、その元となった「リスボン大震災に寄せる詩」も収録されている。
    カンディードは、どんな無体な現実の体験をしても、哲学の眼鏡を通してしか認識することができないが、最後になってようやく、目の前の畑を耕すことの方が重要である、と言う事実に気づくことになる。
    カンディードのあまりに過酷な経験に目を覆いたくなったり、キリスト教的な道徳や、救いの少ない結末に違和感を持つ読者もあるだろうが、それが、リスボンの大震災の経験に基づいている、と思うと日本人としては途端に親近感を覚えることも事実。

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    2022年03月14日
  • カンディード

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    バーンスタインがミュージカル化しているこの作品。ミュージカルは観てないけど、気になっていたので読んでみた。登場人物が皆悲惨な目にあってるのに結構あっけらかんとしていて、コメディタッチで読みやすい。途中で著者の私怨も盛り込まれていたりしてもう何でもあり。机上の空論より身体を動かして働こう、と登場人物たちがオプティミスティックな思想が最後リアリスティックになるのがなるほどと思った。途中で出てくる登場人物ですべてを批判する人、一般の人が美しいと思っているものに欠点を見つける人は、それを楽しめないことを楽しんでいる、と分析しているのはとても腑に落ちた。

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    2018年11月17日
  • 寛容論

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    真偽不明な情報を狂信し、徹底的に「悪」と定義されたものを叩くことを是であるかのように振る舞う現代に読むべき1冊だった

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    2025年05月08日
  • 寛容論

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    18世紀(1763年)の本。
    主にキリスト教の宗派間の血みどろの闘争を諌め、寛容を説く内容。

    発端は、ジャン・カラス事件における大誤審。最終的には冤罪と認定され、名誉回復されるのだが、死刑執行後ではほぼ意味がない。

    ヴォルテールは延々と狂信の悪例をこれでもかと挙げていく。その一方で、イエス・キリストへの敬愛は揺るがない。

    八百万の神の国に住むものとしては、この世に一神教が無ければ、人類はもっと幸せに暮らせているだろうと思ってしまう。イエス・キリストに救われた人もまた無数にいるだろうけれど。

    「賢者ナータン」と同じくらい、一神教の信徒に読んで欲しい。



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    2024年12月20日
  • カンディード

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    東浩紀が書いた『観光客の哲学』に本書が参照されていたので、読んでみた。梅毒にかかったり、絞首刑で死にかけたりしながらも、最後まで「最善説」を肯定するパングロス博士が滑稽で仕方がない。ところで、今の時代で最善説を信じている人はどれくらいいるのだろうか。もし私が災害などの不幸にあって苦しんでいる際に、「全体の善のために、あなたの不幸があるのだ」とか彼らに言われたら、間違いなくブン殴るだろうな(笑)

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    2019年06月02日
  • カンディード

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    レナード・バーンスタインのオペレッタ「キャンディード」は、この物語をベースにして作曲されたとのことである。確かに、その序曲からは主人公の波乱万丈の物語がよく表現されている。
    この物語のキーワードである「最善説」とは、「性善説」と勘違しがちであるが、それとは少しく異なっている。「この世にある個別の悪は、ことごとく全体的な善である」という考えである。作者ヴォルテールは、どうやらカトリック教会が中心になって流布していた権威的な「最善説」をこの作品で批判したかったようだ。

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    2017年08月15日