こざわたまこのレビュー一覧
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ネタバレ一穂ミチ先生の「感情旅行」がよかった。いつもそうなんだけど、先生の描く小説に出てくる観光地は、行ってみたくなる。具体的な地名などが出てくるからなのかもしれないが、読んでて、行った気になってる。今回は出雲の玉造温泉。出雲大社では「二礼四拍手一礼」。一穂ミチ先生の小説には毎度豆知識がぎっしりで、そこも魅力の一つ。賢くなったような気がして気分が良い。
肝心の内容だが、今回の私の中でのキーワードは、「通用してる」かどうか。なるほどな、こういう分類もあるんだ。少しどきりとした。当然、いつまでも「通用してる人間」でありたいと思うが、歳をとっていくに連れて、少しずつ不安になる。この小説内での「通用してる」は社会的信用を指していると思うけど、歳をとるに連れて、たとえば、機械操作がうまくいかず、もたついて、後ろで並んでる人やスタッフさんに迷惑かけるだとか、増えていくのかなぁ、少し先だけど、定年をむかえ、会社という組織から離れることで、それって「通用してる」人間から、少しずつ遠ざかることだよなぁとか。違う?
徐々に「通用しない」人間になることを想像して、どきりと恐怖を覚えた。
それはさておき、私が勝手に恐怖を覚えたことはおいておいて、千歳と華の関係は奇妙なものだけど、今は亡き、蒔生を介して、ずっと繋がっていくんだろうな、と。千歳は頑張って医師免許とってね。 -
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久しぶりに小説のアンソロジーが読みたくなって購入。
一穂ミチさん、田中兆子さん、カツセマサヒコさんの短編が良かったけれど、あとは文章に深みを感じられずさーっと流してしまった。
一穂ミチさんは短編が本当に上手で、限られた文字数の中で想像を膨らませさせるような文章が良かった。設定からしてもひねりがあって、やっぱり安定の一穂ミチさん。
田中兆子さんの小説は初めて読んだけど、不機嫌で人をコントロールするタイプの女性の視点で描かれていてとても面白かった。どのように不機嫌な自分と言うものが出来上がるのか、不機嫌を撒き散らした後に回収できない自分のプライドの高さ、だけどそれを俯瞰的に見ている自分もいると言う苦しさ。なんだかとても深かった。
カツセマサヒコさんは話題のエッセイを買ってまだ読んでいないのだけど、小説も読んでみたいと思っていたので、ちょうどよかった。友達がみんな結婚したり、恋人がいたりして、少しずつ友達関係が変わっていく中で、自分だけがシングルであると言う状況と向き合う男性のお話。シンプルな文章の中で、この先どうなるのかなあと好奇心をかき立てられる短編だった。 -
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あまりにも切なく、共感だらけの恋物語だった…
恋って本当に苦くて、キラキラしていなくて…リアルな世界観と言葉たちが胸にズキズキ刺さった。
『感情旅行』 一穂ミチ
ご近所さんで、早逝した蒔生。彼と結婚する可能性のあった主人公の華は、訳あって彼の息子千歳から旅行をお願いされ同行することに… 華の心の葛藤と、千歳の秘められた想いを、出雲の穏やかな大地が彩っているような作品だった。ラストシーンは一穂さんっぽい甘酸っぱく爽やかな感じで好きだな
『独身の女王』 麻布競馬場
ミドサー独身の私は「独身のカリスマ」を「教祖様」とあがめていたが、そのカリスマが結婚した。そんなカリスマや友人の影響を受け、私はマッチングアプリをすることに…そこで出会った彼は大学時代憧れていた人だった。自分の人生や想いを、大切に紡いでいきたいと思えた作品だった。
『オレンジシャドウの憂鬱』 砂村かいり
あずみの元カレが友人の礼奈と付き合い始めたらしい…そこから礼奈はあずみに対してSNSで罵言を投稿していく。あずみの上手くいかない恋愛模様が繊細に描かれ、切ない気持ちが溢れた作品。
『さみしがりやの恐竜たち』 こざわたまこ
バツイチ同士の治癒的恋愛の話かと思いきや、ラストは思わぬ方向に話が進んでいく。ひとりの寂しさがぶっ飛んだラストに繋がっていった本作だが、共感するところもややあって…苦しいけどクセになる作品。
『不機嫌依存性』 田中兆子
不機嫌な人の心理を知れて興味深かった作品。主人公のカリンは、結婚するであろうタカヒロにいつも不機嫌な態度をとってしまう。それが仇となり、彼から別れを告げられるのだが…。今まで不機嫌な人を前に嫌悪感が否めなかったが、本作を読んで可哀想な人なのだと考え方が変わった。不機嫌であることは構わないが、やはり不機嫌であることで大切なものを失ってしまうのは悲しい…ならば自分の気持ちに素直になって、自分で自分の機嫌をとって生きていく方が楽であり、ステキな生き方であると改めて感じた作品。
『出会い』 朝比奈あすか
夢に見ていたアパレルブランドの店長になった美咲。そして勤務先の近くのカフェにいる歳下店員に恋心を抱き、ときめきを隠せない日々を送る。しかし月日が経ち、その店員がいなくなってしまう…落ち込みながらも、美咲が前を向いて歩いていく姿が印象的なラストが清々しい作品。
『振りかぶって、さよなら』 千加野あい
会社の部下平に恋心を抱く燈子。それと同時に同僚に勧められていたマッチングアプリの相手野々宮とも食事を重ねていた燈子だが、野々宮に共感のようなものを抱くものの、やはり平のことを忘れられない。純粋な恋心と年相応の現実の恋のどちらを燈子が選ぶのかー、恋ってやはり難しいなと唸ってしまった作品だった。
『となりの独り』 カツセマサヒコ
主人公のヨイチは、定期的に集まる友人グループで唯一の未婚者。彼はグループのみんなに「USJに行こう」と提案するものの、皆家族がいて難色を示す。そのこともあり彼はマッチングアプリで友人をつくるべく出会った女性に、思い切った行動を取るが…。
『結婚をすると
USJに行く対象や目的が変わってくるー。』
この言葉は直截的で、首肯が止まらなかったな。
1番好きな話は、『感情旅行』だった。
どんなにうまくいかない恋でも、自分の成長のためには必要なもので、それを乗り越える強さをこのアンソロジーから教えてもらった気がした。
うまくいかない恋も悪くないなと思わせてくれた作品。 -
Posted by ブクログ
うまくいかない恋 アンソロジーなので
どの短編も単純なハッピーエンドではない。
けれど8人の作家さん其々に、30代ならではの主人公たちの個性的な恋模様が描かれていて面白かった。
収録作は以下の8作品
「感情旅行」・一穂ミチ
「独身の女王」・麻布競馬場
「オレンジシャドウの憂齢」・砂村かいり
「さみしがりやの恐竜たち」・こざわたまこ
「不機嫌依存症」・田中兆子
「出会い」・朝比奈あすか
「振りかぶって、さよなら」・千加野あい
「となりの独り」・カツセマサヒコ
私は「出会い」と「となりの独り」が好みだった。
「出会い」は一歩踏み出せない片想いのお話。
スタートすらしなかった恋もまた、生活に彩りを与えてくれるから素敵だと思う。
「となりの独り」は男女の考え方の違いが如実に出ている作品。経験を積んできてる筈なのに、お酒が入ると油断しちゃうのか、勇み足になるのか、なんとも愛おしい。
今回は、初めての作家さんも読めて新鮮だった。
人の恋愛だと、客観的に見られて冷静に考えられる。
人の恋だからこそ、いいも悪いも含めて羨ましい。
サクサク読める短編で軽めの内容なので、恋愛小説を読まない方にも、気晴らしにオススメしたい。
雑誌CLASSYに掲載されていたようなので、人生の転換期が多いこの辺りのターゲット層に一番響く内容だと思う。
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相手の真意を理解する。
相手との性格の違いや、人生観の違いを許容する。
そこにリスペクト出来ないのであれば、好きだのなんだのは、ただの戯言だと思う。
相手の身勝手を頭ごなしに否定するのではなく、その前段階にどんなロジックがあるのか探し出すもの。
無数の恋愛模様がある中で、相手を否定して自分を正当化する事がどれだけ無意味な事か。
少なからずある失敗を元に、それでもまた誰かを好きになるという事が美しいと思える小説。
「恋は中央線」という言葉があった。
中央線は、阪急京都線のように河原町を出て梅田に到着する、ゴールのある線。
でも僕は、環状線みたいなものだと思う。
同じ駅に何回着いたとしても新鮮を味わおうとする努力だと思う。
「好き」と言われることを馴染ませないようにする心持ちを持つ。
僕はそんな電車に乗りたい。 -
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田舎の閉塞感と息苦しさ。村を出る選択肢が「ある」者と「ない」者。
この本を読んで改めて考えたけど、進学とかのタイミングで親元を離れる選択が「ある」人というのは環境に恵まれている人だと思うんだよな。親からの金銭的援助の有る無しもそうだけど、「自分は親元から離れても生活できる」という自信と、「自分が親から離れてもこの家は大丈夫」という二重の自信があるかどうか。
もちろんそれとは別に親から逃げる為に家を出る選択もあるんだけどね。その場合は逃げ切れる人はやはり強い。
何気にいちばん共感できるなと思ったのはヒデジの章かもしれない。一度は村を出るも、結局ふるさとの呪縛から逃れられずうだつの上がらない生活…。
それぞれの生活の何となく鬱蒼とした感じの空気感が上手くて、こざわさんの書く雰囲気結構すきだなーと思った。
しかし、最近紙の本がなかなか読み進められず1ヶ月くらいかかってしまった……。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとある会社で働く人達のそれぞれの仕事模様の話。ひとつひとつの話が、ちょっとだけいい方向に向かったように終わるけど、別になにもかもが好転しているわけではないところがよかった。
優紀の優しさがかおりにはなにひとつ届いていなかったところや、内野が酔いつぶれてダンスを披露できないまま終わり、その後も人間性が特に変わっていないところ、ママさん社員に悩まされる沙也、自身の酒癖の悪さで粗相をしまくる岸、幼少期から輪に入ることが苦手だったかおり、ひきこもりだった栄太など、それぞれの苦しさがあってよかった。それらが簡単に解決するわけでもないところもよかった。人間そう簡単に変われないよなと思った。
キャラクターとしては沙也が好き。一番共感ができた。タイトルが示す通り、どれだけ嫌なことがあっても、明日も会社にいかなくちゃ、なんだよなあ……と思った。