田澤拓也のレビュー一覧
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津軽富士と言われ地元で親しまれている岩木山。1,625mの単独峰は
登るのに難しい山ではない。
しかし、この山で遭難事故が発生した。東京オリンピックを控えた
1964年1月。山頂への登頂を果たした大舘鳳鳴高校山岳部の
5人が、吹雪の中で遭難した。
夏の岩木山になら経験している山岳部員だったが、冬山には
初めての挑戦だった。それが5人中4人死亡という悲劇を起こした。
本書は唯一の生存者の証言を元に、遭難の様子、単独での下山の
みちのり、大規模捜索の模様を綴っている。
福岡大学ワンゲル部ヒグマ襲撃事件は知っていたが、この岩木山
遭難事件は知らなかった。
若気の至りと言ってしまったらそれま -
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本書のタイトルそのまま、私は深田久弥に対して「百名山の人」
としか知識がなかった。代表作であり山岳紀行の古典的名著
『日本百名山』は一時期、繰り返し読んだのだもの。
おおらかで豪快。そんなイメージだったんだよな。確かにそうで
はあるのだけれど、私生活では「ダメな人」だったとは。
作品と人柄は別物。分かってはいる。谷潤こと谷崎潤一郎がそう
なのだ。作品は大好きなのだが、人としてはどうかも思うもの。
戦前に発表された深田久弥の小説を読んだことはない。抒情的な
恋愛小説なのだそうだ。『日本百名山』しか読んだことがないので
あまりにも意外だった。
だが、その小説のたたき台に -
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(01)
日本の登山の近代に、文学の力で少なからぬ影響を与えた「日本百名山」であるが、その「百名山」を著した深田久弥の生を綴ったのが本書である。
彼の生は、もちろんひとりではなかった。大きな存在として二人の女性が彼の前に登場する。彼女らとの関係や距離が、山と関係と同様に、深田の生にとって決定的であった。「贖罪」という言葉が本書の著者によって拾われてもいる。山や女性は、深田にとって単に逃避先であったというわけではない。おそらく、深田と二人の女性と百以上の山々という三者の関係は、三角関係のように緊張感をもって現れていたと本書から感じとることができる。
出版の社会や文学の世界は、二次的に深田の生にゆ -
Posted by ブクログ
丁度三浦さんがエベレスト最高齢到達の時に何故か読んでしまった。よく手に取る山の遭難ものはだいたいプロか山岳部で、いかに生と死が紙一重か、技術だけでは乗り切れない何かを思うし、何せ山男達は冷静で、ダメだと思えば友人のザイルも平気で切るし、置いてゆく。これは山の技術などほとんどない高校生たちの1600級の冬山遭難事故。哀れの一言。山などハイキング程度の私ですら知っているようなことも知らなければ、地形も知らない、道具もない。しかし道具が発達して、お金を出せばある程度の装備が買えるようになった。でも昔の重い装備というのは、一種の山へ入ることへの、関門というか、気軽に入らないで済んだのかもしれない。近年