あらすじ
夏は着古したランニングシャツ、冬は野良着のような作業服。生涯独身で定職に就かず、酒とペーソスを愛した隻眼の歌人、山崎方代。虚言と奇行を繰り返しながら、短歌一筋に生きた異端の歌人に迫る。※本作品は紙版の書籍から解説が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております」、「こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり」などで知られる山崎方代。その生涯が膨大な取材を通じて明らかにされている。特に晩年の鎌倉在住時代についての記述は詳しく、無頼派の方代に振り回されつつも世話する周囲の人々も魅力的。「本当の恋」の実際が明らかにされてく過程もスリリングだった。
Posted by ブクログ
消壺の腹に貼られし反古紙の文字を読まんと一日をおくる
伝記の妙は愛情六割、悪意四割。この塩梅が著者はよくわかっている。ただ主人公を褒めるだけでも、起きたことを追うだけでも面白くない。
「終始、老大家(里見弴)を気分よく盛り上げていく。かつて吉野秀雄にもとりいった方代得意の会話術である」
こういう一節が程よいアクセントとなってよく知らない歌人の人生を追う読者のページをめくる手が止まらなくなる。
放浪、無頼、隠遁といったイメージの裏側の虚実相半ばする実像を、晩年懇意にしていた女性の視点を中心にして追うことで、最後には意外なものが見え始める。
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております