2020年からはセンター試験がなくなり、新しい制度での大学入試が始まるという流れを受けて、文科省はどういったことを目指しているのか、具体的にはどんな感じの問題が出るのだろうか、それに向けて高校側でどうアプローチしていけば良いか、といったことがまとめられている。著者はかえつ有明中高の校長先生で、本書の中でもかえつ有明の取り組み例の紹介が大部分を占める。
内容はともかく、まず読みにくい本だった。クリティカル・シンキング、ブルーム型タクソノミー、「サイエンス科」と「プロジェクト科」、「自分軸」の話、東大の帰国生枠の問題例の紹介、といった同じような内容がどの章でも述べられており、ある章の内容が全体の中でどう位置づけられるのかが不明瞭であった。同じようなことをずっと繰り返している感じで、それらに関連付けて、急にリベラルアーツとか、ランゲージアーツ、モヤ感、知のコード、といった概念がポンと飛び出してくるが、一時的には消化できるものの、もう少し深めて欲しいと思ったところで、また同じような話に戻って、新しい概念が飛び出す。断片的にはよく分かる内容だし、示唆に富むことが書かれているのに、全体として読みにくいのは何故なんだろう。独特の教育用語(?)のオンパレードのせいで、一つ一つが深まらない・整理されないせいなのか。例えば、瑣末で表層的なことだと言われそうだが、「学びの体験や人物を重視する『主体性・多様性・協働性』の資質・能力を評価する『大学入学希望者学力評価テスト』」(p.75)とあるが、p.38の表によれば、「主体性~」を評価するのは各大学の二次試験で、「大学入学希望者学力評価テスト」は「思考力・判断力・表現力」を評価するテストじゃないのか、とか思ってしまう。こっちは色々頭の中で整理しながら読んでいるので、ゴチャゴチャしてしまうことが多い。
色んな問題例が載っており、なんとなく雰囲気は分かるが、教師側がそれをパクッてファシリテートしているだけじゃダメだと思う。さらに、文科省がいかに英国のシステムをモデルにしようとしているのか、というところが分かったが、真似をしている段階というのは、まだ「追いつけ追い越せ」的な感じで、情けないという感じすらする。教育する側こそ、アクティブ・ラーニングを実践する(アクティブ・ラーニングについてアクティブ・ラーニングする、メタアクティブ・ラーニング?)ということが必要なんじゃないかと思った。
とは言え、もう世界標準として体系化されていると捉えていいのか、「ロジカルシンキング」と「クリティカルシンキング」を駆使する方法について、納得してしまう。p.57で「収集→展開→選別→まとめ→確認」という手順が紹介されており、実際にキングス・クロス駅の問題の解答例が示されているが、なるほど、こうやって解いていくんだ~、とか思ってしまった。
あと「モヤ感」について、「『この授業で○○のことがわかるようになりました」とか、『○○先生の授業がわかりやすかった』という感想は、言われた先生にとってはうれしいことかもしれませんが、何かそこで思考が停止してしまっているような印象を受けます。」(p.103)という部分が、一番印象的だった。「それよりも、授業が終わった後に『モヤ感』が残っていて、そのトピックについてもう少し調べてみよう、友達と話し合ってみようという気持ちになることの方が大切なのではないでしょうか。」(同)という部分、そういう「モヤ感」を残すことが必要なフェーズを、自分の授業の中で用意しておかないといけないなと感じた。
現中1から大きく変わる大学入試について、まずはこの本で、何か今までのセンターとは違うらしい、という情報を仕入れるためだけなら読んでもいい本。(16/03/22)