中村隆英のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
書店で大量に平積みされていたので深く考えずに購入しましたが、とても勉強になりました。本書は政治経済だけでなく庶民の生活状況、文化(演劇等)の発展などかなり幅広いトピックを取り扱っていて読み応えがあります。特に経済面についてはかなり平易な記述になっているので、景気の波がどう起こったのか、政府がどう対応したのか、などは大変勉強になりました。現在と違って、政府のちょっとしたアクション(例:金利引き上げ)が国民生活に多大な影響を与えている様子がありありと浮かび上がります。
一方政治面の記述ですが、これは正直私には厳しかったです。というのも初めて聞く日本人政治家の名前が多数出てくるので、途中からはW -
Posted by ブクログ
本書は上巻の続きとして太平洋戦争敗戦後の1945年から昭和天皇が崩御する1989年までの昭和後期を記述しています。上巻同様に全般的に平易な文言が使われているため一貫して読みやすいです。ただし著者自身も田中角栄内閣以後は政治がつまらない、と記述しているように、下巻の後半は特にクライマックスもなく淡々と消費税導入やリクルート事件などのイベントを説明している感はあります。
その意味で下巻のクライマックスはむしろ前半で、日本がいかに戦後GHQの占領下で強引に既得権益の排除に努めたか、そして所得格差を急速に解消し、また朝鮮特需などの外需も幸いし1955年には戦前の経済水準まで戻し、また1960年代には -
Posted by ブクログ
歴史の面白さという意味で、戦後史ほど面白味のない時代も無い。戦後の歴史とは、政治経済の歴史であり、戦前の歴史は戦争というゴールがあるからだと思う。なぜ戦争に踏み切ったか、様々な要因を持ち、点と点が繋がっていくことが面白い。
自分は、戦後史はまだ点でしか見られていない。その先に何があるのかよくわからない。まだ渦中ともいえるのでは?経済史は現役時代もズタボロだった。投資とか向いていないと思う。
読み進める途中で、著者が経済学者だということを知った。専門性を遺憾なく発揮していただいている、ということではなく、一般向けのわかりやすい表現にしていただいているとは存じていても、数字が出でくるとさっぱり -
Posted by ブクログ
日本史Bを受験科目としていたので、流れはなんとなく掴めている状態だったが、受験科目としての昭和史はあまり好きではなかった。戦争へ向かう暗い時代だからだ。
戦争をセンシティブに捉えるのもあの頃と比べたら多少鈍ってきたのもあり、日本が戦争に向かったその本質について、歴史を改めて学びたいと思った。
政治、経済の行き詰まりを領土拡大、勝利によって得ようとする。高揚感を得るための手段としての戦争。満足感が欲しくて欲しくてたまらなくなって戦線を拡大する。中毒になっている。精神的な飢えも、肉体的な飢えが勝って目が醒める。
そして、どうも防衛戦というものにめっぽう弱いような印象がある。それは、物量面もそ -
Posted by ブクログ
上巻が2度に渡る大戦を中心としていたのに対し、下巻の本書は、政治の季節を終えた日本がどうやって経済主体の国作りをしていくか、そんな内容である。従って、政治を描いていく言葉以上に、経済を語る言葉、経済学や経営学で使われるような言葉でもって国の形が描かれるようになる。つまり、日本の動向をあれこれ話そうという時、高度成長期やそれ以後のことは、経済の言葉が必要とされるのである。それだけ日本国民の意識や居場所は、経済活動に軸足を移していたのだろう。そう考えると、近年デジタル化が強力に推進されている点からも、ITの知識が国の形を語る上で欠かせなくなり、そのためのプログラミング教育必修ということだろうか。私
-
Posted by ブクログ
かなり硬質な文章だが、表現はよく意を達する、面白い文である。概説書より詳細に論じながらも、重大な歴史的事象から事象へとテンポよく進み、飽きが来ない。ただ、日本にとって塗炭の苦しみを味わった時代でもあり、私も快調に読んでいくという訳には行かなかった。事実の叙述を丹念に行った上で、歴史評価を試みているが、戦争を不本意とすることや、英仏米を中心とした国際秩序への打破が日独伊の企図したところとした評価など、気分的に反発を感じるものではなかった。現代では戦争は否定され、経済の優勝劣敗が国の命運を分けるだろうが、それでも戦争が起きないとは限らない。とはいえ、戦争を封じ込めた現代でも、あれやこれやと危難が降
-
Posted by ブクログ
下巻では、1945年から89年までの歴史が語られています。
上巻と同様興味深く読みました。ただ、終戦を境に上巻と下巻に分かれているためにそうした印象を受けただけなのかもしれませんが、戦前および戦時期と戦後との連続性に関して、若干説明が手薄になっているような気がします。経済にかんしては、近年野口悠紀雄が『戦後日本経済史』(新潮選書)で戦時経済体制が戦後の日本経済におよぼした影響について立ち入った考察を展開していますし、科学史の分野では廣重徹が早くからそうした問題について鋭い分析をおこなっていたことはつとに知られているとおりです。
また、朝鮮戦争やオイル・ショックなどの大きな振幅を孕みつつも順 -
Posted by ブクログ
『昭和経済史』および『現代経済史』(ともに岩波セミナーブックス)で、経済史の観点から昭和の歴史を通覧した著者が、政治や社会の動きも含めた昭和史の全体像を描いた本です。
上巻では、1926年から45年の終戦にいたるまでの歴史が、わかりやすく説明されています。この時代については、さまざまな立場からの歴史叙述が可能であり、激動の時代を生き抜いた個々人に焦点をあてたかと思えば、国際政治の舞台を大写しにして日本の置かれていた状況を解釈するなど、視点の操作を融通無碍におこなってみずからの田に水を引くような議論もしばしば見られますが、本書では政治と経済の二つの視点を基軸にしてブレることなく昭和史の大きな潮 -
Posted by ブクログ
経済政策と政治面の両面から戦前を捉えている。いかに日本が戦争に突入したかという点に加え、戦前に、戦争準備のために作られた制度が、戦後形はそのままに意味合いだけ変えて存続している、ということが非常に興味深かった。
左翼、右翼というくくりが、日本全体が右寄りになることでいっぱからげに右寄りな思想になってしまったこと、ソ連の計画経済的思考だと戦中の経済統制は社会主義の実現のためにむしろ歓迎されたことはなるほどと思う。
また、中に出てくる法案や固有名詞を現代と置き換えると、驚くほど似ていて驚く。そう考えると、軍隊というものを保有する限りはいかに制度が整っていても戦争に突入する可能性はあると言える。 -
Posted by ブクログ
とりあえず上巻だけ・・・
東大の先生が結構前に書いた本・・・
統計学や日本経済論の先生だそう・・・
だから、なのか?字がビッシリ・・・
同じ昭和史だったら半藤一利のモノの方が読みやすいと思う・・・
初めて昭和史モノを読むならまずはそっちをオススメ・・・
こっちを先に読んだら挫折しちゃうかも・・・
でもでも・・・
こっちの方が非常に網羅的であり、ハマるとこっちの方が面白いような気がする・・・
歴史的な流れだけでなく・・・
戦前の日本経済の動向・・・
主義や思想の潮流・・・
文化面・・・
といったところも充実している・・・
特に経済について詳しい・・・
さすが経済学者 -
Posted by ブクログ
敗戦復興から高度経済まで。マッカーサー統治下での日米思惑の衝突と支持、「もはや戦後ではない」と55年体制成立というターニングポイントである1955年、その後の高度経済成長と沖縄返還。そして経済大国へ。
本書の優れている点は、結果としての歴史だけではなく、そこに至る財界動向や与野党政局などにも詳述されている点であろう。一方、下巻の後半は急に学生運動や庶民生活、文学批評が登場し、上巻の硬派な内容からすると多少違和感はあった。
吉田茂から脈流する池田内閣そして佐藤内閣。昭和中~後期の勃興を支えた政治家たちの強烈な思想に基づく個性を感じた。マスメディアでは田中角栄がよく取り上げられるが、オイルショ -
Posted by ブクログ
歴史は現代に近づくにつれて見えにくくなる。
歴史的解釈がしにくくなるから。それは枝葉末節まで見えてしまうからなのか、単にグローバル化による主体の多層化、複雑化が見られるからだろうか。
本書には、第一次大戦後から今日(1990年ごろ)までが、大変詳しいところまで収載されていた。高校日本史に穴のある私には難しかったのは紛れもない事実である。
歴史ファンやこの時代に明るい人には網羅的でかなり有用な内容なのではなかろうか。
戦後史が江戸時代に似ていると感じた。これは、前者が戦争の放棄のもとに、そして後者が鎖国という政策によって、内政メインの歴史記述になっていることによるものだろう。
政治や経済の歴