中村隆英の作品一覧
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ユーザーレビュー
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書店で大量に平積みされていたので深く考えずに購入しましたが、とても勉強になりました。本書は政治経済だけでなく庶民の生活状況、文化(演劇等)の発展などかなり幅広いトピックを取り扱っていて読み応えがあります。特に経済面についてはかなり平易な記述になっているので、景気の波がどう起こったのか、政府がどう対応
...続きを読むしたのか、などは大変勉強になりました。現在と違って、政府のちょっとしたアクション(例:金利引き上げ)が国民生活に多大な影響を与えている様子がありありと浮かび上がります。
一方政治面の記述ですが、これは正直私には厳しかったです。というのも初めて聞く日本人政治家の名前が多数出てくるので、途中からはWikipediaで政治家を検索し写真や説明を読みながら、本書を読み進めました。しかし一貫して伝わってくるのはこの時期の日本人の懸命さです。また日本を取り巻く外部環境についてもひしひしと伝わってきます。具体的にはソ連による領土拡張のプレッシャーや欧州大国によるアジアの植民地化です。逆に言えばこれらのプレッシャーがなければ日本は急速な工業化および経済発展を達成できなかっただろうと思います。そして戦争を回避するチャンスもありながら日中戦争および太平洋戦争に突入してしまった状況についても本書では詳細に解説されています。
一方本書を読んで感じたのは現在の中国の動きと当時の日本との類似点です。太平洋戦争前の日本は明治維新後急激に工業化および経済発展を進めて新興国の一角となりましたが、急速な工業化による所得格差の拡大(そして当時の農民の悲惨な窮状に同情した陸軍士官らによるクーデター行為)、軍事力の増強、そして米国の経済制裁などもありエネルギー制約にぶつかり、インドシナへ侵攻してしまうなどの戦争行為に出てしまいました。ひるがえって現在の中国は本格的な経済発展をしはじめて30年以上たちますが、まさに国内の状況は昭和初期の日本に共通の問題を抱え、エネルギー制約も厳しくなっている中で、海洋権益を拡張しようと動いています。もちろん相違点も数多くありますが、戦前の日本と現在の中国にいくばくかの共通点を見つけ空恐ろしい気持ちになりました。
Posted by ブクログ
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本書は上巻の続きとして太平洋戦争敗戦後の1945年から昭和天皇が崩御する1989年までの昭和後期を記述しています。上巻同様に全般的に平易な文言が使われているため一貫して読みやすいです。ただし著者自身も田中角栄内閣以後は政治がつまらない、と記述しているように、下巻の後半は特にクライマックスもなく淡々と
...続きを読む消費税導入やリクルート事件などのイベントを説明している感はあります。
その意味で下巻のクライマックスはむしろ前半で、日本がいかに戦後GHQの占領下で強引に既得権益の排除に努めたか、そして所得格差を急速に解消し、また朝鮮特需などの外需も幸いし1955年には戦前の経済水準まで戻し、また1960年代には「所得倍増計画」のもとベビーブーマーの就労なども追い風となって、一気に先進国に駆け上がった様が生き生きと記載されています。
また上巻との違いは、下巻では経済と政治が中心で文化面の記述がほとんどないことです。若者が漫画・テレビなどに浸ってしまい、知的努力を放棄してしまったのではないか、と本書の中で嘆いているのが特徴的ですが、人によっては下巻に漫画、アニメーションの勃興を重要テーマとして書くと思いますね。昭和元年生まれの著者からするとそこは素直に受け入れられなかったのかな?とも感じました。しかし全体で共通しているのは、たくさんのデータの裏付けがあって、なるほどと思う点がたくさんあることです。できるかぎり客観的に、という姿勢がうかがえる良書だと思います。アジア情勢の緊迫化や沖縄問題など、今足下で沸騰している問題の根本が書かれているので、とても勉強になります。
Posted by ブクログ
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リクルートてとんでもないことしといてよくまあ同じ業種でトップで君臨してるもんだと思うんですがどんな経緯でそうなっているのかしら。というのは戦後史で見ても末端の出来事で、ダイナミックな動きを見せているのはそれより前の話ですね。自民党内で緩やかに政権交代をしている、と書いたのは前都知事だったかしら、彼は
...続きを読む前向きに捉えていましたが、本書では吉田から始まる米追従路線が内閣が変わっても不変であり、と見ており、果たして今後はどう推移していくんでしょうね。
Posted by ブクログ
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上巻が2度に渡る大戦を中心としていたのに対し、下巻の本書は、政治の季節を終えた日本がどうやって経済主体の国作りをしていくか、そんな内容である。従って、政治を描いていく言葉以上に、経済を語る言葉、経済学や経営学で使われるような言葉でもって国の形が描かれるようになる。つまり、日本の動向をあれこれ話そうと
...続きを読むいう時、高度成長期やそれ以後のことは、経済の言葉が必要とされるのである。それだけ日本国民の意識や居場所は、経済活動に軸足を移していたのだろう。そう考えると、近年デジタル化が強力に推進されている点からも、ITの知識が国の形を語る上で欠かせなくなり、そのためのプログラミング教育必修ということだろうか。私は中年期に入るあたりから経済の学習に力を入れ、現実生活の維持・向上を図った面があるとはいえ、現実の流れはそれを上回るばかりに激しく変化し、そう思うと、恐ろしい気持ちになる。
Posted by ブクログ
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かなり硬質な文章だが、表現はよく意を達する、面白い文である。概説書より詳細に論じながらも、重大な歴史的事象から事象へとテンポよく進み、飽きが来ない。ただ、日本にとって塗炭の苦しみを味わった時代でもあり、私も快調に読んでいくという訳には行かなかった。事実の叙述を丹念に行った上で、歴史評価を試みているが
...続きを読む、戦争を不本意とすることや、英仏米を中心とした国際秩序への打破が日独伊の企図したところとした評価など、気分的に反発を感じるものではなかった。現代では戦争は否定され、経済の優勝劣敗が国の命運を分けるだろうが、それでも戦争が起きないとは限らない。とはいえ、戦争を封じ込めた現代でも、あれやこれやと危難が降りかかろうとする。経済恐慌や自然災害や、最近の疫病の蔓延。我々を試す試練は止むことを知らないようだ。
Posted by ブクログ
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