リチャード・ロイドパリーのレビュー一覧
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12年前の震災で児童74人が津波の犠牲になった大川小の悲劇と、遺族による県・市を相手取った訴訟の行方を、外国人ならではの視点で追ったルポ。特徴的なのは、幽霊目撃、憑依など被災地に頻発したという心霊現象にも着目している点。地元住職が主宰する移動傾聴喫茶「Cafe de Monk」の活動を初めて知ったが、最後に語られる除霊のエピソードには心が痛んだ。
どれだけ時が経っても、当事者にとってあの悲劇の幕が閉じることはない。遺族の中にも忘れたいと願う人と、忘れてはいけないと思う人がいて、そこに葛藤が生じ、一つの結論で片付けられなくなる。誰かの是は誰かの否でもある。一枚岩に見えるグループの中でさえ、個々 -
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2000年に起こったルーシー・ブラックマンさんの失踪事件。失踪当時から事件を追い続けていた「ザ・タイムズ」の東京支局長・リチャード・ロイド・パリーが10年越しの取材を経て書いた犯罪ノンフィクション。
ルーシーさんの親族はもちろん、友人、知人、東京のバーでのお客、そして犯人として逮捕された織原城二とその親族など…ルーシー事件に関わる全ての人々に丹念にインタビューし、構成している。
この著者にしかできない構成力と内容は、読んでいくうちに引き込まれて黒い闇を覗き込んでしまったような恐ろしさを感じてしまった。
そして衝撃的な裁判の行方。
無期懲役にして無罪。
そして織原の控訴と上告。
ルーシー -
Posted by ブクログ
キム•ソンジョン 金聖鐘 星山聖鐘そして織原城二、これが15年前に起きた『ルーシー•ブラックマン事件』の犯人であり同一人物である。彼は今無期懲役囚として服役中ではあるがルーシー•ブラックマンへの殺人罪には問われていない。それ以外の女性に対する罪で裁かれたのだ。
ルーシーへの決定的な証拠はない。が、死ぬ直前まで一緒にいたのは事実。これらの謎、いや織原城二という謎の資産家と織原から見舞金として1億円を受け取ったブラックマン一家の人生を徹底的に調査したルポルタージュ。
これは日本人ではなく著者であるイギリス人記者だからこそ中立的に調べることができたのではないだろうか。小説としても読み応えのある1冊。 -
Posted by ブクログ
事件ノンフィクションには、しばしば下世話なのぞき見趣味を刺激するものがあって、読んでる自分が嫌になってくることもしばしばだが、これは違っていた。被害者と加害者の双方、本人はもちろん家族や関係者のプライバシーにかなり踏み込んでいるけれど、興味本位に暴き立てる感じがなく、こういうのって非常に珍しいと思う。
著者は、英国「ザ・タイムズ」紙アジア編集長および東京支局長で、滞日20年だそうだ。さすがに日本のことをよく知っているなあと思わされる。繰り返し言及されている、日本の「水商売」のありようとか、警察の捜査や司法制度についての疑問・批判には、若干西欧中心的な感じがあるものの、なるほど「外」からはそう -
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ルーシー・ブラックマン事件のことは覚えているつもりだったが、来日した家族の活動とか、ブレア首相が森総理に協力要請したとか、知らないことが多かった。
本書は「タイムズ」記者による綿密かつ詳細なルポであり、ルーシーの家族関係、犯人である織原の深い謎、日本の警察と治安といった様々な点について切り込んでいる。特に、被害者やその家族との長期にわたる関係は、英語を母語とする英国人記者ならではという気がする。かといって、日本人相手の取材にも不備がないのがすごい。
この事件、あるいは織原の犯罪を、日本人男性による西洋人女性に対する蛮行といった人種的ステレオタイプな一見分かりやすい説明にしてしまうことなく、深く -
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ネタバレ2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺人事件。
犯人の情報。
犯人は韓国系日本人、金聖鐘(キム・ソンジョン)。
父親は日本に渡り、戦後のわずか10年で大阪の最も裕福な男になった。
駐車場・タクシー・パチンコとすべて「土地」が必要な商売ばかりで成功。
一家は星山という通名を使っていた。
学生時代には黒板に日本や日本人への怒りをあらわにした政治的なスローガンをよく書いていた。
目の一重を二重に手術したことを「交通事故にあって目を縫った」とウソをついていた。
有り余るカネで他の学生の比ではない生活をしていた。
昭和44年(1969年)から女性に睡眠薬を飲ませて強姦していた。ちなみにこの時は童貞 -
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総括してみれば、自分探しに友人と日本に小金稼ぎに来た若い英国女性が、勤めた外人スナックの悪質な客に引っ掛かり、薬物を投与され準強姦された際に運悪く死亡した、ということだ。
在日2世の犯人の生い立ちなどを詳細に書いているが、何ら特別なことはなく、日本人なら軽く流す内容だろう。
英国人である著者が同国人向けに、あたかも秘匿された日本の暗部のように書いているだけだ。
行方不明者が年間数万人いるなかで、英国人だからといって特別扱いしなかったことに対して当時の警察を批判するのは難しい。
犯人が過去に同様の犯罪を犯したときに捕まえていれば、というのは結果論でしかない。
特別な圧力でもない限り警察組織が