黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

小説・文芸
2,530円 (税込)

12pt

あの蒸し暑い夏の夜、彼女は東京の路上から永遠に消えた――2000年7月、六本木でホステスとして働いていた元英国航空の客室乗務員ルーシー・ブラックマン(21)が、突然消息を絶った。失踪当初から事件を追い続けた英紙《ザ・タイムズ》の東京支局長が、日英豪関係者への10年越しの取材で真相に迫る。滞日20年、日本を知り尽くした著者にしか書き得なかった底知れぬ闇とは? 複雑に絡み合う背景を丹念に解きほぐして「文学」にまで昇華させ、海外で絶賛を浴びた犯罪ノンフィクション。著者が事件現場のその後を訪ねる日本版あとがき収録。

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黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実 のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ

    六本木、日本で唯一ガイジンであることを忘れられる場所。外国人と遊びたい外国人、外国人と遊びたい日本人、そして日本人=外国人目当ての女性と遊びたい外国人の男が集まる街。そこで目立つ3つの集団は主に客引きのアフリカ人、六本木ガールズと呼ばれる外国人狙いの日本人女性そしてダンサーやストリッパーやホステスとして働く若い白人女性たち。行方不明になり後に遺体が発見されたルーシー・ブラックマンも短い間だったがその中の一人だった。

    普通の女の子だったルーシーは一般的な美人ではないがかなりの長身と見事なブロンドで目立つ存在だった。お嬢様学校になじめずシティの銀行で働くと儲けた金は使うことと言うシティの掟に染まり、カードでの買い物で 借金生活が始まる。おそらく使わなければ返せる額だったのだが、世界を旅したいと考えたルーシーが選んだのは英国航空の客室乗務員だった。日本では高嶺の花の客室乗務員もルーシーにとっては救いにならなかった。国際線乗務で給料は上がったが借金は増える一方で、深夜の長距離便は重労働だった。どの国に行ってもホテルの部屋の景色は同じで時差ぼけに苦しみ現地の文化や食事を楽しむことはできなかった。そしてルーシーは日本行きを計画する。

    ルーシーの親友であるルイーズがルーシーの借金を返すために計画したのだがルイーズの姉エマが「東京に行けば、独創的で刺激的な生活を送りながら大金を稼げる」と請けあった。そしてエマのホステス時代の友人クリスタがルーシーとルイーズのために代々木ハウス、ルーシーが言うところの豚小屋を予約しておいた。実はこのクリスタもルーシー同様に薬の入った酒を飲まされ被害にあっている。日本についてわずか数日後ルーシーとルイーズは小さなナイトクラブ「カサブランカ」で働きだした。仕事は酒を作り日本人の退屈な話を聞き、笑顔を作り楽しいふりをすること。そして白人女性が提供するのは物珍しさにすぎないと実際にホステスとして働いたデューク大学のアン・アリスン教授は論じている。多くの日本人男性は西洋人女性とのセックスを妄想するが、実際に妻や愛人にするには恐怖心があると。

    愛想が良くすぐに人気が出たルイーズとは違い、ルーシーの同伴相手はほぼ一人だった。そのルーシーが携帯を買ってくれるという客と会って出かけたきり帰らなかった。警察は相手にしなかったが、イギリスのマスコミが騒ぎ出し沖縄サミットのタイミングで来日したブレア首相が森首相に解決を依頼したことからルーシー事件は注目を集めることになった。

    この本の主役はルーシーと言うよりは父親のティムと犯人の織原城二だろう。浮気が原因でルーシーの母と別れたティムは東京の生活を楽しんでいるように見えた。娘を誘拐されて悲嘆にくれる父親と言うステレオタイプには当てはまらず、積極的にマスコミに出て駆け引きをした。支援者の金で六本木で飲み歩いていると言う批判もあれば、後には独断で織原からのお見舞い金約1億円を受け取っている。織原が責任を認めたわけではなく、悲嘆にくれる家族を助けたいと言うのがその主張だが実際にはティムを寝返らせるための賄賂だ。

    犯人の織原は自主的に日本に移住し戦後そのまま日本に残った在日コリアンの二世で生まれた時には金聖鐘、後に通称を使い星山聖鐘と言う名前だった。父親は駐車場、タクシー会社、パチンコ屋を経営して成功し当時の大阪の大富豪のひとりだった。織原はカトリックの幼稚園、教育大附属天王寺小から慶応附属高に進学し田園調布の家政婦付きの1軒屋で暮らし始めた。高校では友達を作らず一人で横浜のディスコに遊びに行くような学生だった。20代で仕事をした気配はなく30代で不動産開発に相続した金を突っ込んで大きく利益を上げたらしい。妄想だけの多くの日本人とは違い織原は実際の行動に出たがこれも薬を使ってというあたりかなり歪んでいる。

    織原は数十台のプリペイド携帯を持ち、ナイトクラブで働く白人女性を葉山のリゾートマンションに誘い出しては薬入りの酒で眠らせ陵辱を繰り返した。被害者のほとんどはノービザで働いていたため警察には届けなかった。届けた場合も今度は警察がまともに取り合わなかった。ルーシーの失踪後、織原の仕業と考えたクリスタを含めた4人が警察に情報提供したがそれでも相手にしない。最終的には代々木ハウスへかけたプリペイド携帯の番号が織原逮捕へと繋がったのだがルーシー事件については証拠不十分となっている。

    六本木のクラブのオーナーによると1時間で帰る客のことは気にしない。1万の勘定からホステスに3千円払うと店の儲けはほとんどない。最初に来た客には店で一番の子をつける。もし客が気に入っていないようなら2番目の子に変わりここで延長に持ち込むかが勝負。延長に持ち込むことができれば別の子をつける。そしてさっきの子と話をしたければ指名料を払えということだ。そしてちょっと待たせれば3時間目に突入。トイレに行く途中で時計を見たら帰ろうと考えている証拠、そこでNo.1を投入する。1本3万円のシャンパンを頼み空ける頃にはもうその子は席にはいない。彼は外国人女性を愛し同時に軽蔑した。一方でクリスタはなぜ東京が社会不適合者を惹きつけるかに気がついた。この街ではみんな等しくガイジンで共通の疎外感で括られるため個人として抱える疎外感が吹き飛んでしまう。ジロジロ見られることに慣れるとどうせ変なガイジンだからと逆に自由になれたという。

    ルーシーはなぜ織原について行ったのだろうか。ロンドンであれば見知らぬー特に好意を持っていないー男性の家に一人で上がり込みはしない。しかし初めて見た日本人男性たちはかわいく、シャイで時には退屈だったのかもしれない。いかにも安全そうな男にドライブに誘われ携帯をもらい、そしてシャンパンを一口。多くの外国人ホステスはそのまま何事もなく家に帰る。

    1
    2016年01月24日

    Posted by ブクログ

    昔読んだ。ずいぶん前に読んだので大半は忘れている。
    大変面白かった。外国人ならではの視点。全く事件のことを知らなかったのでまるでミステリー読むかの様な面白さだった。
     金があればこんなにも勝手気ままに悪事ができるのかという驚きもあった。また、日本の水商売の闇についても考えさせられた。
     日本は行為を伴わないソフトエロがビジネスとして成り立つ国であり、その先にもっと危険で、深いそして不快なディープエロの闇が広がっていることを強く印象づけられたことを覚えている。宮崎勤然り、本事件然りである。

    0
    2026年03月28日

    Posted by ブクログ

    Netflix「警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件」
    を見た人は必読の一冊。

    外国人女性だけでなく、日本人女性も被害に遭っていたのに
    長年犯行が露呈しなかったのは何故か。

    弁護団や出版社を巻き込んで自費で反論本まで出したのは何故か。

    自分の糞を咥えて死んだ大企業役員の存在は何を意味するのか。
    闇が深すぎる。

    0
    2024年05月28日

    Posted by ブクログ

    知ってるようで知らない事件。
    人が死んでも自分の欲求を止められない恐ろしさ。
    イギリス人のCAだから動いたという警察の差別意識。
    明るみに出ない事件はもっともっと多いはずだと思うと、心底ウンザリする。

    0
    2016年11月03日

    Posted by ブクログ

    2000年7月、六本木でホステスとして働いていた元英国航空の客室乗務員ルーシー・ブラックマンが、突然消息を絶った。失踪当初から事件を追い続けた英紙《ザ・タイムズ》の東京支局長が、日英豪関係者への10年越しの取材で真相に迫る。
    この内容は、すごい取材ですね。
    著者がイギリス人ってビックリするぐらい日本を描いてる。
    事件物を読むと、ほんと警察は信頼できない事ばかり。
    でも一億円には驚きました。

    0
    2016年09月21日

    Posted by ブクログ

    社会人としてのキャリアの大半を東京で過ごしている1968年生まれの英国人記者によるルーシー・ブラックマン事件に関する記録。

    単なる犯罪・裁判記録というより、多くの関係者に対するインタビューを中心とする緻密な調査を時系列で再構築することで、サスペンスやミステリーを読んでいるかの錯覚に陥る。

    ルーシーの父母・妹弟、親友たちの確執については、決して片方に肩入れすることなく、中立に書いている。

    在日朝鮮人としての織原の出自についても詳述。著者が織原の弟と対面するシーンは手に汗握る。

    織原はルーシーブラックマンの準強姦致死については無罪となっているものの、その他の準強姦致死と準強姦については有罪が確定し無期懲役で服役している。すなわち、織原が模範囚として服役を続ける場合、彼は刑期30年、すなわち15年後に釈放される可能性がある。その時、織原は78才。

    翻訳も非常に読みやすい。本の紙質とフォントも良い。

    2015年4月第一刷。

    0
    2016年02月22日

    Posted by ブクログ

     これに星5を付けることに、心理的な抵抗がある。
     英国から日本に来た若い女性が行方不明になり、家族がやってきて探してくれるように訴える。
     やがて捜査が進み、女性は遺体で発見される。

     この、実際に起きた事件が特異なのは、家族が、事件解決に向けて戦略的な動きを見せた、ということのように思える。よくテレビや報道で見るのは、被害者の家族は、うなだれ悲しみ、涙を流しながら訴える姿である。しかし、被害者の父親は、日本の警察の捜査状況に不安を感じ、どうやったらメディアがこの事件を取り上げるかを計算し、行動した。
     だからこそ、この事件は大きく取り上げられ、当時のイギリスのブレア首相から日本に申し入れが行われ、日本の警察も捜査に本腰を入れ、その結果解決したように思う。

     けれど。
     死んだ人は帰ってこないのだ。
     このノンフィクションは、事件がなぜ起きたのか、犯人はどうしてこのような事件を起こしたのか、を主軸としていない。今生きている家族らが事件とどのように向き合ったのかを丁寧に描いている。
     ホントに小説かと言う位のドラマティックさだ。
     ……それを、作品として楽しむ自分が居て、それは、いいことなのか、すごく迷いがある。

     著者の視点の明快さと優しさがあるから救われた本。

    0
    2015年11月05日

    Posted by ブクログ

    六本木のクラブで働いていたイギリス人女性が行方不明になり、三浦半島で遺体となって発見された事件。今となっては、この程度の記憶しかなく犯人の名前すらすぐに思い出せない。

    犯人は在日韓国人の織原城二。在日韓国人であることを日本のマスコミが報じたかどうかも記憶が曖昧だ。
    事件は、2000年に起きているが、2007年に市橋達也がイギリス人英語教師リンゼイ・アン・ホーカーさんを殺害した事件と混同しがちである。

    本書は被害者となったルーシー・ブラックマンさんの親の生い立ちまで遡り、家族関係も綿密に取材している。犯人の織原城二についても詳細な取材をしていて日本のジャーナリズムとの違いを見せつけられた感がある。

    日本の警察が組織を過剰に重視する特殊性にも言及している。日本の警察の検挙率が高いのは、警察が優秀なのではなく、日本国民のモラルが高いからとの指摘があった。確かに、前例のない犯罪に対して、日本の警察が右往左往している姿はよく見かけるし、国民のモラルが下がりつつある昨今は警察の威信も下がってきているように感じる。

    日本がグローバル化するということは、警察、マスコミ、国民も国外からの視点による本書の様な考察に多く触れるということではないだろうか。

    グローバルスタンダードを積極的に受け入れる必要があることを啓発してくれる良書である。

    0
    2015年07月31日

    Posted by ブクログ

    あのルーシー・ブラックマン事件。私は家族で並んで記者会見している図を覚えていて、父親が頑張っているのだなと。

    その父親の、行動力が無ければわからなかった事実、警官があれだけ動かなかっただろうし、ブレア首相まで事件解決を日本に要請することも無かったのだろう。その類まれな行動力と、一方で、到底品行方正とは言えない日本での行動、犯人の男から多額の賠償額をもらい、クルーザーを買ってしまう非倫理的といえるようなことをしつつも、第2のルーシーを作らないためのNPOを成功させてもいる。えらい複雑な人格にくらくらとしてくること必定。

    裁判結審まで10年以上かかっていたとは知らなかった。
    関係者全ての状況がその間に変わり、それぞれが自立と再生の道を歩んでもいる。

    犯人の性癖は恐ろしいもので、発覚していないレイプ・殺人があるとしか思えない。ただそれを産んだ日本社会にも一端の責任があるのだろう。

    0
    2015年07月15日

    Posted by ブクログ

    [大都会の沼地に、足を取られて]「六本木でホステスとして働く元英国航空の客室乗務員のイギリス人女性が、突如謎の失踪ーー」。世紀末を控えた日本でスキャンダラスに報じられたルーシー・ブラックマン事件の内幕と関係者の心の内を探ったノンフィクション作品。一次資料や関係者の資料を基にしながら、事件に潜む数々の謎に迫った一冊です。著者は、「ザ・タイムズ」紙のアジア編集長・東京支局長を務めたリチャード・ロイド・パリー。訳者は、ときに涙しながら本書の翻訳作業を完成させたという濱野大道。原題は、『People Who Eat Darkness-The True Story of a Young Woman Who Vanished from the Streets of Tokyo – and the Evil That Swallowed Her Up』。


    今年読んだ本の中でも間違いなくトップクラスに入ってくる一作。加害者の闇、被害者の闇、それぞれの家族や関係者の闇、そして東京の闇……。著者の筆によりずるずると音を立てて引きずり出される漆黒の数々に、ページを繰る手が止まりませんでした。この事件のことを聞いたことがないという方を含めてぜひ一読をオススメしたいです。


    20年以上に及ぶ日本における滞在歴があったからこそ書けるであろう著者の日本社会を見つめる眼差しにも感銘を受けました。絶え間ない興味や深い親近感と同時に、一歩その社会からは足を引く絶妙な間の取り方を知ることができるだけでも、本書を購入する価値があるかと。そして何より、著者のたどり着く下記の結論(それはそこだけ切り取ると奇妙に無色透明になってしまうのですが)に胸震わされました。

    〜彼女は決して軽率でも愚かでもなかった。ルーシーは--安全ではあるが複雑なこの社会で--きわめて運が悪かったのだ。〜

    こういう作品に会うために数々の本を読んでるんですよね☆5つ

    0
    2015年06月12日

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