【感想・ネタバレ】黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実のレビュー

あらすじ

あの蒸し暑い夏の夜、彼女は東京の路上から永遠に消えた――2000年7月、六本木でホステスとして働いていた元英国航空の客室乗務員ルーシー・ブラックマン(21)が、突然消息を絶った。失踪当初から事件を追い続けた英紙《ザ・タイムズ》の東京支局長が、日英豪関係者への10年越しの取材で真相に迫る。滞日20年、日本を知り尽くした著者にしか書き得なかった底知れぬ闇とは? 複雑に絡み合う背景を丹念に解きほぐして「文学」にまで昇華させ、海外で絶賛を浴びた犯罪ノンフィクション。著者が事件現場のその後を訪ねる日本版あとがき収録。

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Posted by ブクログ

Netflix「警視庁捜査一課 ルーシー・ブラックマン事件」
を見た人は必読の一冊。

外国人女性だけでなく、日本人女性も被害に遭っていたのに
長年犯行が露呈しなかったのは何故か。

弁護団や出版社を巻き込んで自費で反論本まで出したのは何故か。

自分の糞を咥えて死んだ大企業役員の存在は何を意味するのか。
闇が深すぎる。

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2024年05月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

◆英ジャーナリズム発、日本論on性犯罪◆

●日本のメディアと警察組織と犯罪・事件の課題。
イギリスのメディアと家族生活の課題。
それらがコンパクトにまとめられている 。

個人的におもしろいのは、
イギリス人ジャーナリストの目を通して描かれる
日本の社会の風俗と解釈である。

日本の裁判制度や警察機構に対し、
想像力の欠如した犯罪と向き合う組織だと喝破。
「お巡りさん」と「ビーポ君」にイメージされる
親しみやすい権力組織としての警察機構。

外国人の体験する”ガリバー体験”と
日本の遠慮と礼儀正しさという文化。

●とりわけ、在日朝鮮人社会と
水商売の実態と日本の性文化の記述は
興味深く読ませてもらった。

著者が参考にしている文化人類学者アン・アリスンの博士論文「夜の仕事-東京のホステスクラブにおける性・快楽・組織内の男らしさ」は是非読んでみたいと思った。

世界に類をみたい、多様な性分化を産み出す
日本の社会のありかたや、クラブオーナー 宮沢櫂の説明する外国人女性への理解と蔑視発言に日本人一般の海外女性への態度を感じ取る記述は、
外国人ホステスに言い寄ってくる男たちのメール文面の気持ちの悪さとあいまって、独特の日本人論を表明している。

また、在日朝鮮人という課題については、”タブー視することによる(アンタッチャブル化による)差別問題の課題”というテーマに迫っている。

●一方で、娘を探し出す親の側では、ブレア首相の関わりから、娘の居所を知っていると続々と登場する詐欺師たちの登場で、文化を超えた現代社会の不気味さを醸し出している。

●個人的に目が離せないのは、
こうした国境と文化をまたいだ不可思議な状況のなかで、ホステスたちの暮らす住居のユニットバスなどがさりげなく説明される挿話ですらなく、ただただ状況の形容のように登場してくることだ。
ユニットバスの排水溝には、
濡れた髪の毛と、皮膚のカスがからみついている。
著者は、こうした描写を、つまり細部を描くことを怠り無く文章に挿入してくる。その姿勢に傾倒してしまう。

本書は現代社会論であり、一種の民族誌であり、
一級のフィールドワークの書である。

●なお、著者自身は、この書物の意図について
BLOGOLOSでのインタビューに答えて
以下のように語っている。
『(本書の目的は) 「こいつは怪物だ」「こいつは悪人だ」とレッテル貼りをすることではないからです。
そういってしまうと、そこでその会話、ストーリーは終わってしまう。そうでなく、「どうしてそういう人物が生まれたのか」と考えていく作業を、私はこの本を通じて進めていったと思っていますし、「何がその人をそうさせたのか」ということに重点を置いて執筆しています。』

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2016年11月12日

Posted by ブクログ

知ってるようで知らない事件。
人が死んでも自分の欲求を止められない恐ろしさ。
イギリス人のCAだから動いたという警察の差別意識。
明るみに出ない事件はもっともっと多いはずだと思うと、心底ウンザリする。

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2016年11月03日

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2000年7月、六本木でホステスとして働いていた元英国航空の客室乗務員ルーシー・ブラックマンが、突然消息を絶った。失踪当初から事件を追い続けた英紙《ザ・タイムズ》の東京支局長が、日英豪関係者への10年越しの取材で真相に迫る。
この内容は、すごい取材ですね。
著者がイギリス人ってビックリするぐらい日本を描いてる。
事件物を読むと、ほんと警察は信頼できない事ばかり。
でも一億円には驚きました。

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2016年09月21日

Posted by ブクログ

社会人としてのキャリアの大半を東京で過ごしている1968年生まれの英国人記者によるルーシー・ブラックマン事件に関する記録。

単なる犯罪・裁判記録というより、多くの関係者に対するインタビューを中心とする緻密な調査を時系列で再構築することで、サスペンスやミステリーを読んでいるかの錯覚に陥る。

ルーシーの父母・妹弟、親友たちの確執については、決して片方に肩入れすることなく、中立に書いている。

在日朝鮮人としての織原の出自についても詳述。著者が織原の弟と対面するシーンは手に汗握る。

織原はルーシーブラックマンの準強姦致死については無罪となっているものの、その他の準強姦致死と準強姦については有罪が確定し無期懲役で服役している。すなわち、織原が模範囚として服役を続ける場合、彼は刑期30年、すなわち15年後に釈放される可能性がある。その時、織原は78才。

翻訳も非常に読みやすい。本の紙質とフォントも良い。

2015年4月第一刷。

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2016年02月22日

Posted by ブクログ

六本木、日本で唯一ガイジンであることを忘れられる場所。外国人と遊びたい外国人、外国人と遊びたい日本人、そして日本人=外国人目当ての女性と遊びたい外国人の男が集まる街。そこで目立つ3つの集団は主に客引きのアフリカ人、六本木ガールズと呼ばれる外国人狙いの日本人女性そしてダンサーやストリッパーやホステスとして働く若い白人女性たち。行方不明になり後に遺体が発見されたルーシー・ブラックマンも短い間だったがその中の一人だった。

普通の女の子だったルーシーは一般的な美人ではないがかなりの長身と見事なブロンドで目立つ存在だった。お嬢様学校になじめずシティの銀行で働くと儲けた金は使うことと言うシティの掟に染まり、カードでの買い物で 借金生活が始まる。おそらく使わなければ返せる額だったのだが、世界を旅したいと考えたルーシーが選んだのは英国航空の客室乗務員だった。日本では高嶺の花の客室乗務員もルーシーにとっては救いにならなかった。国際線乗務で給料は上がったが借金は増える一方で、深夜の長距離便は重労働だった。どの国に行ってもホテルの部屋の景色は同じで時差ぼけに苦しみ現地の文化や食事を楽しむことはできなかった。そしてルーシーは日本行きを計画する。

ルーシーの親友であるルイーズがルーシーの借金を返すために計画したのだがルイーズの姉エマが「東京に行けば、独創的で刺激的な生活を送りながら大金を稼げる」と請けあった。そしてエマのホステス時代の友人クリスタがルーシーとルイーズのために代々木ハウス、ルーシーが言うところの豚小屋を予約しておいた。実はこのクリスタもルーシー同様に薬の入った酒を飲まされ被害にあっている。日本についてわずか数日後ルーシーとルイーズは小さなナイトクラブ「カサブランカ」で働きだした。仕事は酒を作り日本人の退屈な話を聞き、笑顔を作り楽しいふりをすること。そして白人女性が提供するのは物珍しさにすぎないと実際にホステスとして働いたデューク大学のアン・アリスン教授は論じている。多くの日本人男性は西洋人女性とのセックスを妄想するが、実際に妻や愛人にするには恐怖心があると。

愛想が良くすぐに人気が出たルイーズとは違い、ルーシーの同伴相手はほぼ一人だった。そのルーシーが携帯を買ってくれるという客と会って出かけたきり帰らなかった。警察は相手にしなかったが、イギリスのマスコミが騒ぎ出し沖縄サミットのタイミングで来日したブレア首相が森首相に解決を依頼したことからルーシー事件は注目を集めることになった。

この本の主役はルーシーと言うよりは父親のティムと犯人の織原城二だろう。浮気が原因でルーシーの母と別れたティムは東京の生活を楽しんでいるように見えた。娘を誘拐されて悲嘆にくれる父親と言うステレオタイプには当てはまらず、積極的にマスコミに出て駆け引きをした。支援者の金で六本木で飲み歩いていると言う批判もあれば、後には独断で織原からのお見舞い金約1億円を受け取っている。織原が責任を認めたわけではなく、悲嘆にくれる家族を助けたいと言うのがその主張だが実際にはティムを寝返らせるための賄賂だ。

犯人の織原は自主的に日本に移住し戦後そのまま日本に残った在日コリアンの二世で生まれた時には金聖鐘、後に通称を使い星山聖鐘と言う名前だった。父親は駐車場、タクシー会社、パチンコ屋を経営して成功し当時の大阪の大富豪のひとりだった。織原はカトリックの幼稚園、教育大附属天王寺小から慶応附属高に進学し田園調布の家政婦付きの1軒屋で暮らし始めた。高校では友達を作らず一人で横浜のディスコに遊びに行くような学生だった。20代で仕事をした気配はなく30代で不動産開発に相続した金を突っ込んで大きく利益を上げたらしい。妄想だけの多くの日本人とは違い織原は実際の行動に出たがこれも薬を使ってというあたりかなり歪んでいる。

織原は数十台のプリペイド携帯を持ち、ナイトクラブで働く白人女性を葉山のリゾートマンションに誘い出しては薬入りの酒で眠らせ陵辱を繰り返した。被害者のほとんどはノービザで働いていたため警察には届けなかった。届けた場合も今度は警察がまともに取り合わなかった。ルーシーの失踪後、織原の仕業と考えたクリスタを含めた4人が警察に情報提供したがそれでも相手にしない。最終的には代々木ハウスへかけたプリペイド携帯の番号が織原逮捕へと繋がったのだがルーシー事件については証拠不十分となっている。

六本木のクラブのオーナーによると1時間で帰る客のことは気にしない。1万の勘定からホステスに3千円払うと店の儲けはほとんどない。最初に来た客には店で一番の子をつける。もし客が気に入っていないようなら2番目の子に変わりここで延長に持ち込むかが勝負。延長に持ち込むことができれば別の子をつける。そしてさっきの子と話をしたければ指名料を払えということだ。そしてちょっと待たせれば3時間目に突入。トイレに行く途中で時計を見たら帰ろうと考えている証拠、そこでNo.1を投入する。1本3万円のシャンパンを頼み空ける頃にはもうその子は席にはいない。彼は外国人女性を愛し同時に軽蔑した。一方でクリスタはなぜ東京が社会不適合者を惹きつけるかに気がついた。この街ではみんな等しくガイジンで共通の疎外感で括られるため個人として抱える疎外感が吹き飛んでしまう。ジロジロ見られることに慣れるとどうせ変なガイジンだからと逆に自由になれたという。

ルーシーはなぜ織原について行ったのだろうか。ロンドンであれば見知らぬー特に好意を持っていないー男性の家に一人で上がり込みはしない。しかし初めて見た日本人男性たちはかわいく、シャイで時には退屈だったのかもしれない。いかにも安全そうな男にドライブに誘われ携帯をもらい、そしてシャンパンを一口。多くの外国人ホステスはそのまま何事もなく家に帰る。

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2016年01月24日

Posted by ブクログ

 これに星5を付けることに、心理的な抵抗がある。
 英国から日本に来た若い女性が行方不明になり、家族がやってきて探してくれるように訴える。
 やがて捜査が進み、女性は遺体で発見される。

 この、実際に起きた事件が特異なのは、家族が、事件解決に向けて戦略的な動きを見せた、ということのように思える。よくテレビや報道で見るのは、被害者の家族は、うなだれ悲しみ、涙を流しながら訴える姿である。しかし、被害者の父親は、日本の警察の捜査状況に不安を感じ、どうやったらメディアがこの事件を取り上げるかを計算し、行動した。
 だからこそ、この事件は大きく取り上げられ、当時のイギリスのブレア首相から日本に申し入れが行われ、日本の警察も捜査に本腰を入れ、その結果解決したように思う。

 けれど。
 死んだ人は帰ってこないのだ。
 このノンフィクションは、事件がなぜ起きたのか、犯人はどうしてこのような事件を起こしたのか、を主軸としていない。今生きている家族らが事件とどのように向き合ったのかを丁寧に描いている。
 ホントに小説かと言う位のドラマティックさだ。
 ……それを、作品として楽しむ自分が居て、それは、いいことなのか、すごく迷いがある。

 著者の視点の明快さと優しさがあるから救われた本。

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2015年11月05日

Posted by ブクログ

六本木のクラブで働いていたイギリス人女性が行方不明になり、三浦半島で遺体となって発見された事件。今となっては、この程度の記憶しかなく犯人の名前すらすぐに思い出せない。

犯人は在日韓国人の織原城二。在日韓国人であることを日本のマスコミが報じたかどうかも記憶が曖昧だ。
事件は、2000年に起きているが、2007年に市橋達也がイギリス人英語教師リンゼイ・アン・ホーカーさんを殺害した事件と混同しがちである。

本書は被害者となったルーシー・ブラックマンさんの親の生い立ちまで遡り、家族関係も綿密に取材している。犯人の織原城二についても詳細な取材をしていて日本のジャーナリズムとの違いを見せつけられた感がある。

日本の警察が組織を過剰に重視する特殊性にも言及している。日本の警察の検挙率が高いのは、警察が優秀なのではなく、日本国民のモラルが高いからとの指摘があった。確かに、前例のない犯罪に対して、日本の警察が右往左往している姿はよく見かけるし、国民のモラルが下がりつつある昨今は警察の威信も下がってきているように感じる。

日本がグローバル化するということは、警察、マスコミ、国民も国外からの視点による本書の様な考察に多く触れるということではないだろうか。

グローバルスタンダードを積極的に受け入れる必要があることを啓発してくれる良書である。

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2015年07月31日

Posted by ブクログ

あのルーシー・ブラックマン事件。私は家族で並んで記者会見している図を覚えていて、父親が頑張っているのだなと。

その父親の、行動力が無ければわからなかった事実、警官があれだけ動かなかっただろうし、ブレア首相まで事件解決を日本に要請することも無かったのだろう。その類まれな行動力と、一方で、到底品行方正とは言えない日本での行動、犯人の男から多額の賠償額をもらい、クルーザーを買ってしまう非倫理的といえるようなことをしつつも、第2のルーシーを作らないためのNPOを成功させてもいる。えらい複雑な人格にくらくらとしてくること必定。

裁判結審まで10年以上かかっていたとは知らなかった。
関係者全ての状況がその間に変わり、それぞれが自立と再生の道を歩んでもいる。

犯人の性癖は恐ろしいもので、発覚していないレイプ・殺人があるとしか思えない。ただそれを産んだ日本社会にも一端の責任があるのだろう。

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2015年07月15日

Posted by ブクログ

[大都会の沼地に、足を取られて]「六本木でホステスとして働く元英国航空の客室乗務員のイギリス人女性が、突如謎の失踪ーー」。世紀末を控えた日本でスキャンダラスに報じられたルーシー・ブラックマン事件の内幕と関係者の心の内を探ったノンフィクション作品。一次資料や関係者の資料を基にしながら、事件に潜む数々の謎に迫った一冊です。著者は、「ザ・タイムズ」紙のアジア編集長・東京支局長を務めたリチャード・ロイド・パリー。訳者は、ときに涙しながら本書の翻訳作業を完成させたという濱野大道。原題は、『People Who Eat Darkness-The True Story of a Young Woman Who Vanished from the Streets of Tokyo – and the Evil That Swallowed Her Up』。


今年読んだ本の中でも間違いなくトップクラスに入ってくる一作。加害者の闇、被害者の闇、それぞれの家族や関係者の闇、そして東京の闇……。著者の筆によりずるずると音を立てて引きずり出される漆黒の数々に、ページを繰る手が止まりませんでした。この事件のことを聞いたことがないという方を含めてぜひ一読をオススメしたいです。


20年以上に及ぶ日本における滞在歴があったからこそ書けるであろう著者の日本社会を見つめる眼差しにも感銘を受けました。絶え間ない興味や深い親近感と同時に、一歩その社会からは足を引く絶妙な間の取り方を知ることができるだけでも、本書を購入する価値があるかと。そして何より、著者のたどり着く下記の結論(それはそこだけ切り取ると奇妙に無色透明になってしまうのですが)に胸震わされました。

〜彼女は決して軽率でも愚かでもなかった。ルーシーは--安全ではあるが複雑なこの社会で--きわめて運が悪かったのだ。〜

こういう作品に会うために数々の本を読んでるんですよね☆5つ

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2015年06月12日

Posted by ブクログ

圧倒的熱量。
本書を読み終えて呆然としている。
一人の英国人女性の失踪と、その顛末が徹底的に描かれていて目眩がしそうだ。
犯人と被害者、その間に何があったのか。
これをルポ、しかも小説風にして出す力量に恐れ入った。

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2024年04月19日

Posted by ブクログ

犯人から事実を聞きたい気分。

15年かけて作られた本って考えるとすごい。
周りの人のいろんな目線もわかるし、外人目線の日本も知れて面白い。

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2020年10月28日

Posted by ブクログ

著者はイギリス人だが、日本の事もよく分かっており、綿密な調査の元に書かれている。
事件自体は当時ワイドショーで大騒動になっていたはずだが、あまり記憶に残っていない。
著者自身のあとがきが感慨深い。

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2019年03月05日

Posted by ブクログ

2000年に起こったルーシー・ブラックマンさんの失踪事件。失踪当時から事件を追い続けていた「ザ・タイムズ」の東京支局長・リチャード・ロイド・パリーが10年越しの取材を経て書いた犯罪ノンフィクション。

ルーシーさんの親族はもちろん、友人、知人、東京のバーでのお客、そして犯人として逮捕された織原城二とその親族など…ルーシー事件に関わる全ての人々に丹念にインタビューし、構成している。

この著者にしかできない構成力と内容は、読んでいくうちに引き込まれて黒い闇を覗き込んでしまったような恐ろしさを感じてしまった。

そして衝撃的な裁判の行方。
無期懲役にして無罪。
そして織原の控訴と上告。

ルーシーさんの父親が織原から受け取った「見舞金」。
裁判後のルーシーさんの家族の思い。
事件に関わった人々のその後。
裁判が終わった後もその闇は深いということをこの本を読んで改めて知った。

読み終わった後に色々な意味で「後味の悪い、だけどそれが現実」という、残酷で衝撃的な印象が強く残っている。

ここまでの事件にどっぷりつかって取材しながら常にフラットに事件を見ようとする著者のすごさを感じる一冊。

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2018年01月28日

Posted by ブクログ

「日本の犯罪率の低さの本当の理由が、警察の管理能力に起因するものではなく、国民のおかげであることはあまりに明らかだ。警察の能力が高いからではなく、日本人は常に法を守り、互いに敬い、暴力を忌み嫌うのだ。」

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2017年03月05日

Posted by ブクログ

外国人記者が書いた本の中では
とても中立的で抑えた筆致だった。
正直市橋事件と最初勘違いしてたくらいだけど、
事件のことはうっすら覚えている。
良いも悪いも人はなかなか一面からしか見えないから難しいけど、
フェアであろうとする記述にはいろいろ考えさせられた。

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2016年06月09日

Posted by ブクログ

キム•ソンジョン 金聖鐘 星山聖鐘そして織原城二、これが15年前に起きた『ルーシー•ブラックマン事件』の犯人であり同一人物である。彼は今無期懲役囚として服役中ではあるがルーシー•ブラックマンへの殺人罪には問われていない。それ以外の女性に対する罪で裁かれたのだ。
ルーシーへの決定的な証拠はない。が、死ぬ直前まで一緒にいたのは事実。これらの謎、いや織原城二という謎の資産家と織原から見舞金として1億円を受け取ったブラックマン一家の人生を徹底的に調査したルポルタージュ。
これは日本人ではなく著者であるイギリス人記者だからこそ中立的に調べることができたのではないだろうか。小説としても読み応えのある1冊。

とにかく織原城二、怖いわ。

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2016年01月31日

Posted by ブクログ

ルーシー・ブラックマン事件のルポルタージュ。被害者家族、被疑者の生い立ち、六本木事情、日本の警察と司法のあり方。様々な要素を複合的に描き出しており、個別の事件への興味は置いておいて読むに値する一書。
著者は英国人であり、在日である被疑者(犯人で間違いないと思うけど一応)の生い立ちと立ち位置が日本人が書くものと違い、政治信条的にフラットに書けていることはこうした複雑な題材を取り扱う上で随分とメリットであったと思う。

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2016年01月12日

Posted by ブクログ

この事件のことは憶えている。犯人が捕まった後に聞こえてきた事件のおぞましさ。悪魔の所業に吐き気がしたが、何となく自分には関わりのない別世界の事と考えていたような気がする。
でも、本当にそうだったのか?この本を読むと
今もなお残る謎、ある意味平凡な人間が陥ってしまった闇の世界の存在にただ戦慄する。
とがきにもあるように、イギリス人記者の丹念な取材、構成力による読み応えのあるノンフィクション。まさに「事実は小説より奇なり」日本語訳も素晴らしい。

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2015年11月16日

Posted by ブクログ

事件ノンフィクションには、しばしば下世話なのぞき見趣味を刺激するものがあって、読んでる自分が嫌になってくることもしばしばだが、これは違っていた。被害者と加害者の双方、本人はもちろん家族や関係者のプライバシーにかなり踏み込んでいるけれど、興味本位に暴き立てる感じがなく、こういうのって非常に珍しいと思う

著者は、英国「ザ・タイムズ」紙アジア編集長および東京支局長で、滞日20年だそうだ。さすがに日本のことをよく知っているなあと思わされる。繰り返し言及されている、日本の「水商売」のありようとか、警察の捜査や司法制度についての疑問・批判には、若干西欧中心的な感じがあるものの、なるほど「外」からはそう見えるのかと納得するところもある。事件について、「特異な犯人の冷酷な犯罪」という側面にとどまらず、日本社会の一面をあぶり出していく書き方になっていて、そこが優れていると思った。

これはかなり騒がれた事件だったと思うが、詳しいことは知らなかったので、まずそのドラマティックな展開に驚かされた。犯罪小説そこのけ。でも、ここに登場する人たちは誰一人型どおりではない。特に被害者の父親が、「期待される被害者遺族像」からかけ離れていて、そういえば当時もバッシングの対象となっていた記憶がある。このティム・ブラックマンがもっとも印象的だが、どの人にも、どの家族にも、傍目には窺い知ることのできないそれぞれの「生」がある。多くの人に知られるはずもなかったその姿が、非道な犯罪によってさらけ出されてしまう。二重の恐ろしさを感じた。

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2015年10月20日

Posted by ブクログ

ルーシー・ブラックマン事件のことは覚えているつもりだったが、来日した家族の活動とか、ブレア首相が森総理に協力要請したとか、知らないことが多かった。
本書は「タイムズ」記者による綿密かつ詳細なルポであり、ルーシーの家族関係、犯人である織原の深い謎、日本の警察と治安といった様々な点について切り込んでいる。特に、被害者やその家族との長期にわたる関係は、英語を母語とする英国人記者ならではという気がする。かといって、日本人相手の取材にも不備がないのがすごい。
この事件、あるいは織原の犯罪を、日本人男性による西洋人女性に対する蛮行といった人種的ステレオタイプな一見分かりやすい説明にしてしまうことなく、深く考察されているところが秀逸。

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2015年08月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺人事件。

犯人の情報。
犯人は韓国系日本人、金聖鐘(キム・ソンジョン)。
父親は日本に渡り、戦後のわずか10年で大阪の最も裕福な男になった。
駐車場・タクシー・パチンコとすべて「土地」が必要な商売ばかりで成功。
一家は星山という通名を使っていた。
学生時代には黒板に日本や日本人への怒りをあらわにした政治的なスローガンをよく書いていた。
目の一重を二重に手術したことを「交通事故にあって目を縫った」とウソをついていた。
有り余るカネで他の学生の比ではない生活をしていた。
昭和44年(1969年)から女性に睡眠薬を飲ませて強姦していた。ちなみにこの時は童貞だったので性交できなかった。
要するに30年間以上にわたり、連れ込んだ女性に睡眠薬を飲ませて、意識を失っている状態の彼女たちをレイプする行為を繰り返し続けていた本物の強姦魔。
ビデオによると女性が意識を取り戻しそうになったら、布に湿らせたクロロホルムを女性の鼻の先に差し出して、また意識を失わせた。そして何時間もレイプし続けた。
数えきれないほどのたくさんの偽名を使っていた。
70台分のプリペイド式携帯電話をまとめて購入したことがあった。
裁判ではルーシー・ブラックマンの準強姦致死罪では有罪にはできなかった。
しかしオーストラリア人女性カリタ・リッジウェイへの準強姦致死罪で有罪となった。
裁判中に自己破産。
ブラックマンの父親に1億円の「見舞金」を支払っている。出どころは不明。
リッジウェイ家にも同様に1億円。
無期懲役刑で現在、刑務所。

最後にルーシー・ブラックマンさんとカリタ・リッジウェイさんのご冥福をお祈りします。

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2015年06月22日

Posted by ブクログ

リンゼイさんの事件と大分混同していた。あれ、犯人は逃げてた人じゃなかったっけ、みたいな。
でも、ずっと恐ろしい事件だった。

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2020年08月17日

Posted by ブクログ

聞いたことがある程度で当時の記憶はない事件。
2000年頃ってこんな感じだったんだなぁということも思いながら読みました。

日本の警察や日本についての文章があぁ確かに!と思うことばかりでした。

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2016年07月25日

Posted by ブクログ

総括してみれば、自分探しに友人と日本に小金稼ぎに来た若い英国女性が、勤めた外人スナックの悪質な客に引っ掛かり、薬物を投与され準強姦された際に運悪く死亡した、ということだ。

在日2世の犯人の生い立ちなどを詳細に書いているが、何ら特別なことはなく、日本人なら軽く流す内容だろう。
英国人である著者が同国人向けに、あたかも秘匿された日本の暗部のように書いているだけだ。

行方不明者が年間数万人いるなかで、英国人だからといって特別扱いしなかったことに対して当時の警察を批判するのは難しい。
犯人が過去に同様の犯罪を犯したときに捕まえていれば、というのは結果論でしかない。
特別な圧力でもない限り警察組織がやすやすと動かないのは、どの国でも同じことだろう。

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2016年05月16日

Posted by ブクログ

今や風化しつつあったこの事件を、もの凄い調査量でまとめ上げた1冊。忌まわしい事件に関するノンフィクションだから、読んでいて気分が良いものではなかったが、ここまで丁寧に調べ上げ、取材をして、作り上げた作品として、著者に対して、頭が下がる思い。

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2015年12月26日

Posted by ブクログ

父親が何回も記者会見をしていた事件としか記憶していなかったし、周りの人は事件を覚えてもいなかった。風化って怖い。
イギリスの新聞の東京支局長が海外の読者に向けて、日本の水商売や日本人男性の心理などを分かりやすく解説していて、日本人の私でもなるほどと感じた。
被害者の家族が詐欺に引っかかっても、それすら救いのように感じるぐらいの心境というのは、想像を絶する。

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2015年08月25日

Posted by ブクログ

余りにもミステリ小説じみていて、現実の事件だったとは思えないほど。海外ジャーナリストならではの、日本では出てこない情報や視点、優れた筆力によってグイグイ読ませる。典型的なサイコパスの言動と、彼らの犯罪に対する警察の脆弱性。在日外国人への搾取と、筆者ですら踏み込めない闇。未だ解決どころか改善も見えないこれらの問題に、読後感はずっしり重たい。

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2015年07月26日

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