あらすじ
あの蒸し暑い夏の夜、彼女は東京の路上から永遠に消えた――2000年7月、六本木でホステスとして働いていた元英国航空の客室乗務員ルーシー・ブラックマン(21)が、突然消息を絶った。失踪当初から事件を追い続けた英紙《ザ・タイムズ》の東京支局長が、日英豪関係者への10年越しの取材で真相に迫る。滞日20年、日本を知り尽くした著者にしか書き得なかった底知れぬ闇とは? 複雑に絡み合う背景を丹念に解きほぐして「文学」にまで昇華させ、海外で絶賛を浴びた犯罪ノンフィクション。著者が事件現場のその後を訪ねる日本版あとがき収録。
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Posted by ブクログ
◆英ジャーナリズム発、日本論on性犯罪◆
●日本のメディアと警察組織と犯罪・事件の課題。
イギリスのメディアと家族生活の課題。
それらがコンパクトにまとめられている 。
個人的におもしろいのは、
イギリス人ジャーナリストの目を通して描かれる
日本の社会の風俗と解釈である。
日本の裁判制度や警察機構に対し、
想像力の欠如した犯罪と向き合う組織だと喝破。
「お巡りさん」と「ビーポ君」にイメージされる
親しみやすい権力組織としての警察機構。
外国人の体験する”ガリバー体験”と
日本の遠慮と礼儀正しさという文化。
●とりわけ、在日朝鮮人社会と
水商売の実態と日本の性文化の記述は
興味深く読ませてもらった。
著者が参考にしている文化人類学者アン・アリスンの博士論文「夜の仕事-東京のホステスクラブにおける性・快楽・組織内の男らしさ」は是非読んでみたいと思った。
世界に類をみたい、多様な性分化を産み出す
日本の社会のありかたや、クラブオーナー 宮沢櫂の説明する外国人女性への理解と蔑視発言に日本人一般の海外女性への態度を感じ取る記述は、
外国人ホステスに言い寄ってくる男たちのメール文面の気持ちの悪さとあいまって、独特の日本人論を表明している。
また、在日朝鮮人という課題については、”タブー視することによる(アンタッチャブル化による)差別問題の課題”というテーマに迫っている。
●一方で、娘を探し出す親の側では、ブレア首相の関わりから、娘の居所を知っていると続々と登場する詐欺師たちの登場で、文化を超えた現代社会の不気味さを醸し出している。
●個人的に目が離せないのは、
こうした国境と文化をまたいだ不可思議な状況のなかで、ホステスたちの暮らす住居のユニットバスなどがさりげなく説明される挿話ですらなく、ただただ状況の形容のように登場してくることだ。
ユニットバスの排水溝には、
濡れた髪の毛と、皮膚のカスがからみついている。
著者は、こうした描写を、つまり細部を描くことを怠り無く文章に挿入してくる。その姿勢に傾倒してしまう。
本書は現代社会論であり、一種の民族誌であり、
一級のフィールドワークの書である。
●なお、著者自身は、この書物の意図について
BLOGOLOSでのインタビューに答えて
以下のように語っている。
『(本書の目的は) 「こいつは怪物だ」「こいつは悪人だ」とレッテル貼りをすることではないからです。
そういってしまうと、そこでその会話、ストーリーは終わってしまう。そうでなく、「どうしてそういう人物が生まれたのか」と考えていく作業を、私はこの本を通じて進めていったと思っていますし、「何がその人をそうさせたのか」ということに重点を置いて執筆しています。』
Posted by ブクログ
2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺人事件。
犯人の情報。
犯人は韓国系日本人、金聖鐘(キム・ソンジョン)。
父親は日本に渡り、戦後のわずか10年で大阪の最も裕福な男になった。
駐車場・タクシー・パチンコとすべて「土地」が必要な商売ばかりで成功。
一家は星山という通名を使っていた。
学生時代には黒板に日本や日本人への怒りをあらわにした政治的なスローガンをよく書いていた。
目の一重を二重に手術したことを「交通事故にあって目を縫った」とウソをついていた。
有り余るカネで他の学生の比ではない生活をしていた。
昭和44年(1969年)から女性に睡眠薬を飲ませて強姦していた。ちなみにこの時は童貞だったので性交できなかった。
要するに30年間以上にわたり、連れ込んだ女性に睡眠薬を飲ませて、意識を失っている状態の彼女たちをレイプする行為を繰り返し続けていた本物の強姦魔。
ビデオによると女性が意識を取り戻しそうになったら、布に湿らせたクロロホルムを女性の鼻の先に差し出して、また意識を失わせた。そして何時間もレイプし続けた。
数えきれないほどのたくさんの偽名を使っていた。
70台分のプリペイド式携帯電話をまとめて購入したことがあった。
裁判ではルーシー・ブラックマンの準強姦致死罪では有罪にはできなかった。
しかしオーストラリア人女性カリタ・リッジウェイへの準強姦致死罪で有罪となった。
裁判中に自己破産。
ブラックマンの父親に1億円の「見舞金」を支払っている。出どころは不明。
リッジウェイ家にも同様に1億円。
無期懲役刑で現在、刑務所。
最後にルーシー・ブラックマンさんとカリタ・リッジウェイさんのご冥福をお祈りします。