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あの日から10年――。巨大災害が人々の心にもたらしたものとは? 2011年の東日本大震災における津波被災に焦点をあて、巨大災害が人々の心に与えたトラウマと余波に外国人ジャーナリストが迫る。
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Posted by ブクログ
海外の方が書かれたとは思えないほど、正確かつ詳細な取材に基づく作品だと思いました。被災者それぞれが置かれた立場に起因する感情の機微にまで触れられており、震災がもたらした二次的な被害についても具体的に理解することが出来ました。
わたしは、実は日本列島は数多くの自然災害の歴史的事実と脅威を考えれば、世界でも有数の過酷な自然環境の国土ではないのかなとも思います。 さらに湿度の高い暑さなども含めまして。 この本はイギリス人ジャーナリストの方の本です。 妙な話かもしれませんが、例えば戦国時代以前の色々な日本人の権力者、支配者、...続きを読む庶民、人々の暮らし、生活、習慣、文化、風習などを一番正しく知ることができるのは古代中国や宣教師たちが残した記録の文献がかなり信憑性が高いそうです。 江戸時代以前もそうだった部分もあるでしょうが、江戸時代以降に残されている記録はそのほとんどが改竄されたりしている可能性が高いそうです。 自然災害の話をするとき、予想される犠牲者の数があまりに多いと、現実感を薄めてしまうことがある。 すべての学者たち全員が、そう遠くない将来、東京ではかなりの高確率で大地震、地震による広範囲に破壊は不可避であり、町の広い範囲を破壊し、何万人も命を奪う、火災や津波を惹き起こす地震が発生することは不可避であり、地質学的に見てもその時期は差し迫っているという結論を導き出している。 南海トラフ地震も同様の予測で、地震と津波で太平洋沿岸で32万3000人が死亡し 62万3000人が負傷する恐れがあるという。 いつ起きてもおかしくはない南海トラフ巨大地震によって原子爆弾 4つ分以上の死者が出るかもしれないというのだ。 3.11の震災による死者は、100人を除く、ほぼすべて 残りの全員99%以上が津波に呑み込まれた溺死によって亡くなった。 人々はあらゆる種類の不満、要求、苦情を抱えていました。 でも苦情が口から出てくることはなかった。我慢と忍耐力によって人々はそういったことをすべて内に抱え込んでんでしまった。それは正しいこととは言えません。 私は時々、なぜ日本ではもっと単純な結論に至らないのだろうと不思議に思うことがあった。ある程度の不正不満の吐露、混乱などもう少し多めに見てもいいのではないか? "がんばろう"という言葉にも私はいつも違和感を覚えた。「彼の辛い経験も、長期的には糧になる」という 言外の意味によって苦しむ人たちとの共感が逆に薄まる気がしてならなかった。 被災者の紫桃さよみさんは「子供達は見えない魔物に殺された」「表面的なものにしか目を向けることができない、日本人特有の何か」と言った。 ご主人様の隆洋さんは 全国各地から招待を受け 大川小学校の悲劇を語り継ぐ、講演活動を行ってきた。しかし 正直ショックを受けられた。参加者の意識はあまりに低かったことに。 「参加者にとっては将来また起こるようなこととは考えていませんでした。別の誰かの問題でしかなかった。まさか自分に起きるなどとは思っていなかったんです。誰もが危険性を見くびっていた。大川小学校でも教師たちはすべてを見くびり、何も真剣には考えていなかった」 「この機会を逃せば、多くの人が亡くなった今というタイミングを逃してしまえば、考え方や行動は変わることはないと思います。だから私たちは悲劇に本当の原因を突き止めようとしている。この災害について考えつつ その学習に迫ることを拒否すれば同じ悲劇が繰り返されるでしょう。けれどそういうふうに日本は機能している。それを変えることはできないんです」 日本人の美徳とされる、礼儀正しさは、自主性のない礼儀正しさではないのか。 私は日本人の受容の精神にはもううんざりだった。過剰なまでの我慢にも飽き飽きしていた。 大川小学校の児童の死は、宇宙の本質にあらたな洞察をもたらすものなのだろう。ところがそのレベルよりもずっと前の地点ー生物が呼吸し生活するー世界では児童たちの死は他の何かを象徴するものでもあった。人間や組織の失敗、臆病な心、油断、優柔不断を表すものだった。 宇宙についての真理を認識し、その中に人間のための小さな場所を見いだすのは重要なことに違いない。しかし問題はこの国を長い間抑圧してきた"静寂主義の崇拝"に屈することなく、それをどう成し遂げるかということだった。 日本に今必要なのは怒りに満ち、批判的で、決然とした人々、死の真相を求める戦いが負け戦になろうとも、自らの地位や立場に関係なく立ち上がって戦う人々だった。 世界中の多くの読者が疑問に感じることの一つが 2011年の震災から何が変わったのかという点だ。 どんな教訓が学ばれ、どのような新しい措置が取られたのか?似たような災害が再び起きたらーいつか必ず来るそのときが訪れるからーこれまで何が違うのか? 大川小学校での出来事は全体的な効率の悪さと準備不足が招いた悲劇的な例外だった。そこで起きた事例は日本全国の教師たちと地方自治体への注意喚起 となり マニュアルと避難計画の見直しや修正を促したはずだ。 震災の教訓から学び、変わっていかなくてはいけません。
英国出身で東京在住のジャーナリストが著した東日本大震災に関する渾身のルポルタージュ。 ルポの核になっているのが、74人の児童が津波に呑み込まれた大川小学校の一件。裏山に逃げられる時間的余裕があったのに、学校側は運動場で約50分、生徒を待機させた。そして、避難を始めた1分後に津波に襲われた。その避難も...続きを読む川沿いの津波の来る方向へ誘導したものだった。 著者は、この事件について、実に綿密な取材を行い、死亡した家族の苦しみや葛藤など、生々しい証言を集めている。 かけがえのない我が子を失った親たちが、納得のいかない説明ばかりする学校側や教育委員会にぶつける怒りが強く伝わった。また、助かった子どもの親族、子どもの遺体が見つかった親族、見つからない親族おのおの違う立場から生じる機微や憎しみ、諍いも、十分な取材で鋭く分析されており、読んでいて、いたたまれない気持ちになった。 この本で著者がもう一つ強く伝えたかったのが、震災後、頻繁に起きた心霊現象。多くの人が幽霊を見たと訴え、交霊や除霊を行ったりしたという。遠野物語やイタコに象徴される東北地方の民族性や東北人特有の忍耐強さにも触れ、外国人の視点から、再三、津波に襲われてきた彼の地の特性をスピリチュアルな側面も含め、表現したかったのではないだろうか。 それにしても、最高裁の判決で、市、県から14億円以上の賠償を勝ち取りながら、大川小学校長の行動や問題となった教諭の証言の真偽、説明責任について言及がなかった点はふに落ちず、勝利感を味わえなかった原告団に対し同情の思いを持った。
小川糸さんの本を読んで、この本の存在を知りました 先日のNHKでは南海トラフが起きたらという番組もしていました。たまたまこの時期に読み終わることになりました。 仙台空港にも行ったことがあるし、松島や福島にも行った テレビで津波のニュースを見た時、信じられなかった。大川小学校のドキュメンタリーも見た...続きを読む 人災だと思った さらにこの本。 外国人目線からの道北、事実、生き残った人たちの苦悩、真実を知りたいだけなのに何年もかかること、震災の後の人間関係、霊の存在 12年経つ今も、苦しんでいる人がたくさんいる 本当に起きたことだと知っている事と、現実は違いすぎて、本当の理解はできないと思う だからこそ、忘れないようにだけはしたいと思った
生半可な気持ちで読む本ではない。 だが、被災した人たちと同じ国で暮らす人間として、知っておくべき。 津波は一瞬で多くの人の命を奪うだけでなく、生き残った人たちの関係性も破壊してしまう。
おいそれと感想が言えるものではない。 本作品は著者が感情的にならずに、俯瞰で物事を捉えている為読み手による解釈は様々なのではないだろうか。 知らない事実を知れた事に感謝すると同時に無知を恥じる。 読み進むのがこれ程怖いと思った作品はないだろう。
いつか読まなければ…と思いつつ先延ばしにしていた本。今年の3月であれから10年。あの日自分がどこで誰と何をしていたか…そのあと続く余震の日々をどんな気持ちで過ごしていたか。今でもありありと思い出す。直接の被害を受けたわけではない私ですらこうなのに、当時東北地方に暮らしていた方にとって この本で紹介さ...続きを読むれた人たちの声は、どんな記憶を呼び起こすだろう。津波が襲って来る前から私たちの社会はどうだったか?大川小学校では、何があったのか。読むのも辛い場面も多かったが、残された家族が生きていくため、 せめて同じ時代を生きている私たちは見てきたこと、聞いてきたことを語り継がなければならないと強く思った。#八蔵の会
今年で10年。もう10年も経ってしまったのかと驚いているけど、それでも戦い続けてる人がいるのを忘れてはいけないと改めて気付かされた。 イギリス出身のジャーナリスト、リチャードロイドパリー氏が書いた本だけど、とてもきちんと丁寧に調べていて この方じゃないとここまで詳細に書けなかったなと思う。 昨年、石...続きを読む巻に住んでいる友人に半日被災地を案内してもらった。 当たり前けど、テレビとかネットで見るよりも衝撃的で言葉にならないとしか言えない。 海沿いまで家があって、そこで普通に暮らしてたのだという記憶とか 各場所に設置してある、写真で見る今と災害前とか。 大川小学校にももちろん行ってきた 本に書かれている、全くその通りのことを友人も私に話してくれた。 沢山の人が亡くなり沢山の行方不明の方を今でも探していると。 偽善や利権、地位とかお役所仕事に振り回されている遺族の方々がいると。 目の前で知人や友人が波に瓦礫に攫われて戻らなくなるのを見たと。 生き残った方々が口を揃えて言う至る所で霊を見ますというのは、間違っていないと私は思う。
リチャード・ロイド・パリー『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』ハヤカワ文庫。 あれから10年。在日20年の英国人記者が東日本大震災の津波による悲劇と被災地の不可思議に迫ったルポルタージュ。英国ラスボーンズ・フォリオ文学賞受賞、日本記者クラブ賞特別賞受賞。 リチャード・ロイド・パリーと言えば、...続きを読むルーシー・ブラックマン事件の真相に迫った傑作ルポルタージュ『黒い迷宮』が記憶に残る。 74人の生徒と10人の教師の命を奪った宮城県石巻市の大川小学校で起きた津波による痛ましい事件の全貌が関係者へのインタビューを通じて描かれる。何故、北上川の下流に位置する危険な小学校で、教師は子供たちを山へ避難させなかったのか。生き残った子供と命を失った子供たちの運命の別れ道は。読んでいて胸が締め付けられるような描写が続く。福島第一原発事故が人災であったように、大川小学校の悲劇も生徒たちの命を守るべき教師たちの判断ミスによる人災であった。 また、被災地で目撃されるようになった数々の霊的現象。まだ古からの自然や風習が細々ながらも生き続ける東北地方では余り珍しいことではない。生き残ったことへの罪悪感なのか、亡くなった人びとへの哀悼なのか。そうした不可思議に頼ってさえでも我が子の遺体を見付けようとする大川小学校事件の遺族の哀しみたるや…… --- 以下は蛇足 --- 本書を読み、自分なりに10年前のあの日のことで思い出したことを書き止めてみようと思う。 本書のプロローグに書かれているように、確かに大地震の前兆は2日前の3月9日からあったのを覚えている。職場で昼休み前に突き上げるような揺れを感じたが、さしたる大きな地震でもなく、気にも止めなかった。その後、同じ震源地でM5からM6クラスの地震が頻発していたことには全く気付かなかった。というのも、当時妻が九死に一生という病気でやっと退院したばかりで、そんな異変を気にする余裕が無かったのだ。また、自分の会社が半年前に春から系列会社と統合するなどあり、仕事も忙しくなっていた。 そして、東日本大震災が起きた金曜日。妻の体調も快復してきたので、久し振りに晩酌を楽しもうかななどと思いながら出社した自分は、午後3時からの主催会議の前にトイレの個室を利用していた。まだ会議までに時間があるので、珈琲を飲もうとトイレを出ようとしたその瞬間に突然大きな揺れが始まった。すぐに収まるかと思った揺れは、次第に激しさを増し、天井の蛍光灯が落下したり、壁が崩れたりするので、個室に止まるしかなかった。個室の中で激しい揺れにかき回されながら、なす術も無く、この世の終わりではという考えが頭の中を過った。 長い揺れが収まり、防火扉の閉まったトイレから出ると廊下には建屋の内装が散乱しており、非常灯が灯っていた。隣の休憩所で早目の休憩を取っていた同僚が顔を出して来たので、これはもう駄目だ、早く外に避難した方が良いと言葉を交わした。目の前の職場を行くと什器や机が倒れたり傾いたりしていた。最初は誰ひとり姿が見えなかったのだが、よく見ると、社員は全員、机の下に潜っていた。大きな声で、外に逃げるぞと声を掛け、全員を建屋の外に誘導した。 外で職場毎に安否確認をしている最中にも余震が襲い、建屋の窓を破壊していった。携帯のワンセグでニュースを見ると、宮古市を津波が襲う映像が流れ、沿岸部の気仙沼市の半島に移住して来たばかりの義理の両親の安否が気になった。 社員の安否確認が済み、速やかに退社することが決まる。自宅に戻る道は車であふれ返り、信号機は全て消え、それでも互いに道を譲りながら交互に通行していた。 家に戻ると妻が呆然としていた。電気が使えないので暖房も無く、厚着をして食物や懐中電灯、ラジオや電池を集めるなどして、ラジオで今の状況を把握することに努めた。妻によれば、気仙沼に住む母親から午後4時に津波が来て家に帰れないというメールが来たらしい。津波が来たことを把握しているのであれば、命には別状はないはずと、妻を励ますのが自分には精一杯のことだった。 夕食代わりに煎餅を食べ、ペットボトルのお茶を飲み、暗闇の中で余震に驚きながらラジオに耳を傾けると陸前高田が壊滅、宮城県の荒浜で2、300体の遺体が見付かるなどと信じられない情報ばかりが流れてきた。寝たような、寝ていないような、世界が何もかも変わってしまったような不安な暗い夜。 翌日は土曜日だったが出社し、会社の被害状況を確認すると共に業務の再開に向けて復旧作業をした。それから金曜日までは午前中だけの出社になり、午後は食料や飲料の買い出しに近辺をさ迷った。義理の両親の安否が気になるが、何の情報も無く、Googleのパーソンファインダーで両親を検索すると多くの方々が安否を気遣う履歴が残っていた。次第に車のガソリンが減るが、スタンドも休業状態となり、余り車では出歩けなくなった。 金曜日の夜、Twitterを検索していると近くのガソリンスタンドにタンクローリーが入るという情報を得て、1時間ほど並び、何とかガソリンを満タンにすることが出来た。翌日の土曜日に気仙沼の義理の両親の家に行くつもりだったのだ。 土曜日に食料や飲料水を満載して、気仙沼市内に入ると目の前に信じられない光景が広がっていた。全てが津波に流され、海が見える鹿折地区の市街地。大きな船が打ち上げられ、道路の脇には家屋の残骸や車などがあふれていた。唐桑半島に向かう途中の高架橋にも衣服などが引っ掛かり、辛くも残ったホームセンターの屋根には黄色い車がのっていた。海辺はすっかりと景色が変わり、多くの建物が津波の被害を受けていた。義理の両親は果たして無事なのかと不安がよぎる。 幸い義理の両親の家は高台にあったため、津波の被害は受けなかったが、海辺の建物は壊滅、建物の残骸や船であふれていた。義理の両親は無事だったのだが、地震発生時に津波で壊滅した隣街の陸前高田市のホームセンターで買い物をしていたという。買い物を終え、帰ろうと車に向かった時に大きな揺れがあり、揺れが収まってから車に乗ろうとすると駐車場のアスファルトが割れ、車が傾き、走行不能だったらしい。ホームセンターの店員が車を押してくれたので、何とか亀裂から抜け出し、走行可能となった。その店員に礼を言うと、津波が来るから兎に角早く高台に避難しろと言われたらしい。 車で気仙大橋の手前に辿り着くと大渋滞で全く進まない。仕方無く旧道の古い橋に向かうと既に落橋しており、通行不能。一瞬、陸前高田の避難所に指定されている市民会館に行くことを考えたようだが、置いて来た猫が気になり、自宅へ帰ることにしたようだ。もしも、市民会館に避難していたら命が無かったかも知れない。 もう一度、気仙大橋に向かうと奇跡的に渋滞は解消されており、橋は通過出来たものの、川の水は干上がり、遠くまで海の底が見え、尋常では無い事態が近付いていることを感じたらしい。津波の浸水域を気にしながら自宅へと急ぎ、半島に入る坂道を下ると、遠くの方から津波が電信柱を薙ぎ倒しながら迫って来た。慌てて車をバックさせ、国道に戻ると津波があらゆる物を次々と飲み込んで行くのが見えたそうだ。自宅には帰れず、行き場を失い、国道で途方に暮れていると近くの人が山側にある中学校が避難所になっていることを教えてくれた。その夜は中学校で一晩を過ごしたということだ。 翌日、自宅に置いて来た猫が気になり、瓦礫をかわしながら、歩いて自宅を目指したようだ。途中、見知らぬ人からお握りや飲み物をもらったりしながら、何とか自宅に到着。家も猫も無事で、ひと安心したようだ。その後、電気も水道も電話も使えない生活が半年ほど続いた。 本体価格1,020円 ★★★★★
東日本大震災、特に津波被害のあった東北地域について、日本に長く滞在するイギリス人の視点で見ているのが興味深い 家族を亡くし、家を失くし、その辛さに大小なんてなくてよいのに、まわりに比べたら、、と我慢と忍耐をしてしまう日本人 日本のらしさが、復興を促したけれど、閉塞感、苦しみを増大させたのかもしれ...続きを読むない 大川小の件は、深く知らなかったので、とても考えさせられた 大川小の父母たちのそれぞれの行動が胸を打った 子どもたちのほうが親を支えてくれている、本当にそう 今生きていることに意味がある 精一杯、生きよう
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津波の霊たち 3・11 死と生の物語
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