ステファノ・マンクーゾのレビュー一覧
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人間は動植物の頂点にいる。
言葉を操り、道具を使い、他の動物たちの精子を握り、植物たちを管理する。
そんな思い込みは単なるおごり以外の何物でもない。
人間たちは自身を万能だと思っているが、実は下等だと思っている植物たちに「使われている」だけなのかもしれない。
植物に脳はない。
しかし脳がないから知性がないという結論は、あまりにも植物を知らぬし軽視しすぎている。
植物たちは動物のように大事な器官を作らないことを選択した。
そうすることで生存率を高めたのだ。
つまり、リスク分散というわけだ。
動物は脳や心臓がないと死んでしまうし、手や足がもがれたら死んでしまうそうだから。
「人媒」も有用だ。
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植物の知性についての本。植物の権利と地位向上のための本と言っても良いかもしれない。植物の知性を理解するには植物と動物の違いを理解する必要がある。重要な臓器を持たず、それ故に脳がないこと。体の各部分が独立した能力を持ったモジュールで、それが集まったコロニーのような構造であること。どこかが食べられたりして欠損しても致命傷にならず再生できること。そのため体の各部分に情報処理機能があり、インターネットのように分散型の知性である。特に根系は根冠が無数にあり、それが互いにコミュニケーションをとり全体としての知性が創発していると説く。根のネットワークをニューロンと仮定すると根が思考を持っていても良いのかもし
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植物が人間や他の動物と同等、あるいはそれ以上に優れた生物であることを解説した本。植物の優れた特性、腫を広げるための驚くべき戦略の数々がたくさん紹介されていて非常に興味深い。ただ図版や写真が少ないので、紹介されている植物のイメージがつかめないところが残念。
いずれにせよ、植物に対する認識が一変する良書。
本書内で、植物が自分の繁殖のため、昆虫や動物はもとより、人間までも利用しているのではとの説が紹介されていたが、未だ解読不能の奇書「ヴォイニッチ手稿」の植物と思しきイラストが載っている一連ページの解釈として、人間は植物のための養分として生かされているという解釈をネットで発見し、この解釈がもしかした -
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とても良い
地球上全体を見れば、その生物の中で動物はわずか1%程度の個体数しかない
総重量でいうと0.3%しかない
動物は植物がいなければ絶滅するだろうが、植物は動物がいなくなっても繁栄を続けることができる
植物の根端は情報センサーであり情報発信ネットワークのひとつだ
インターネットの形態はこれに近いものだ
集合知が生み出すものは創出と呼ばれるそうだ
大きな拍手の渦や、ウェーブのように個体ではなし得ないものが創出されるのだ
そもそも植物は生き物なのかと、その昔は哲学の対象となっていたと言う
魂についても知恵についても考察されてきた
イスラム教のコーランでは植物は生き物から除外されている -
Posted by ブクログ
植物の種子貯蔵庫はノルウェー領の島にあり、種の保存が厳重になされているという
人類は、植物の未来の重要性を知っている
ダーウィンも「もっとも豊かな想像力を持つ人間が考えつくものをはるかに超えている」と自然の仕掛けと適応力を表現している
植物に対して認識の低かった潜在的な可能性にアプローチし、思わぬ切り口から可能性の開花を示唆してくれている
例えば、分散構造 が植物の特徴だと言う
動物は記憶するために脳を進化させ、外界を見るために眼に機能を集中化している
◆ 記憶力
通常は馴化と表現される
プロトコルを明確にした再現性のある実験で、記憶力に関する実験をした
刺激の区別を40日間以上記憶保持する -
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結局、移動を選んだのが動物、定住を選んだのが植物。一見、動物の方が偉いように見えるが、植物が消え去ったら人間の生活は持たない。一方で動物が消えたら植物はこれまで動物に奪われていた領土を奪い返し、わずか数年で完全に取り戻すに違いない。
コペルニクス革命以前、地球は宇宙の中心にあり、すべての星々が地球の周りを回っていると考えられ、人間中心の考え方で捉えられていたわけだが、現在の生物学もコペルニクス革命前にあるといっていいということで、光を感じる視覚や、嗅覚を使った植物同士のコミュニケーションについて語られる。
緑の多い街は犯罪が少ないという事実もいい。なぜかは分からないが感覚的に分かるし、とり -
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ここでいう知性は「問題を解決する能力」と定義されている。人間は人間>その他動物>植物と優劣意識を持ちがちだが、そんなことはないと著者は指摘する。例えば植物は大部分が捕食されても、数日すれば再生する。(生命機能を分散するモジュール構造)。移動ができないからといってそれで終わるのではなく、甘い香りで昆虫を呼び寄せ受粉のサポートをさせて子孫を残すのも植物ならではの一例。
夏の暑い日、気が付けばそんじょそこらに雑草が伸びている。それは植物が長い間時間をかけて自らの生命維持を試行錯誤してきた過程の結晶なのだろう。雑草うぜー、などとは言っていけないですね。