初読み作家さん。東京が帝都と呼ばれていた時代を舞台にした、天才的相場師と記憶喪失の男娼の悲恋物語です。
遊郭とか男娼館とかっていかにもな感じで、敬遠気味なジャンルでもあり、でも突然実力のある作家さんが書くと気になるものでもあり…
手にとるまで葛藤しましたが、記憶喪失は好物なので結局読むことに。
『
...続きを読む帝都の狐』の異名をとる天才相場師、溝端幹弥が帝都一の高級男娼館・紅楼夢を訪れ指名したのは、記憶をなくした男娼の環。環はただひとつある約束だけを覚えていて、それを頼りに生きつないでいることを知った幹弥は、この状況に彼を陥れてしまった諸々に対して憤怒にかられます。
ストーリー作りがものすごく上手くて、思わず引きこまれてしまいました。遊郭ものっていうと、エロくて安いイメージ(偏見)があるんですが、これはかなり骨太な構成。
読み応えがありました。
謎や疑問が、少しずつ小出しに解明されていく話運びのうまさに引っ張られました。
脇キャラの太市の役回りもしっかりしていて、頼もしい相棒のイメージが好感でした。大活躍ですよね。
後日談ショート「太市と紅薔薇」が彼らしくてすごくよかったです。
…ただ、遊郭、男娼、買って買われてあれこれあるはずなのに、話に期待していたエロさとか萌えとかがほとんど見当たらなかった!もう少し隠微なエロスがあったら嬉しかったです…
それから、記憶が戻らないままの結末にいろいろ想像させられてしまうので、そのうち番外でも出てくれたら…でも、記憶を取り戻すと互いに汚れきっていた嫌な過去があるわけで、それも不幸かもしれないですよね…
まあ、どっちの二人にしても愛する気持ちは一緒だと思えるので、すべて思い出して良いことも悪いことも全部ひっくるめて共有して乗り越えるところまで見届けたかったですね。
これだけ実力のある作家さんなので、余韻無しの王道ハピエンでも素敵な話になりそうなので。