上月雨音のレビュー一覧
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“そりゃ先輩と知り合って以来、様々な事件に巻き込まれてきたし、今回だってその例に漏れないわけで、既に一般人とは言い切れない世界にまで足を踏み入れてしまっているのかもしれないけれど……。
「もし僕が謎の黒服集団とやらに追い回される羽目になったら、どう責任とってくれるんですか」
「五月蝿いなぁ。男やったら自分の身くらい自分で守りぃや」
情けない奴やなぁ、なんて冷たくあしらわれてしまう。
それどころかトラさんまでさも当然のような表情だった。
そりゃこの人くらい強靭な肉体を持っていれば謎の黒服集団にだって立ち向かえるのだろうけれど、生憎とこちらは格闘技経験のない一市民なのだ。
「ってかトラさん。そうい -
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“「いや、才能は絶対の論理なんかじゃないよ」
「そうでしょうか?才能は、容易に努力を駆逐するものですよ。よく、努力すればどうにかなるなんて考えている人がいますけど、それは間違いです。だってそうでしょう?もし才能の無い人が、他人の何十倍も努力するのだとして、どうして才能のある人が同じだけの努力をしないと言い切れるんですか?凡人は才能の怠惰を望まなければ勝てないんです」
少年向け漫画誌の登場人物達は強大な敵を倒すために修行とかするわけだけど……それで勝てる彼らは、天才なんかじゃないのだろう。ゲーム上で世界を滅ぼさんとする大魔王を倒すためにレベル上げにいそしむプレイヤーもまた、凡人でしかない。
本当 -
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“「アンタは、呪いって信じるか?」
「鈍い?」
「ありがちなボケやなぁ」
いや、そんな「詰まらんわぁ、ホンマに詰まらんわぁ」なんて呆れられても。僕としては別にボケたつもりはなく、それがあんまりにも使われない、日常会話にはまず出てこないだろう単語だったから直ぐには思いつかなかっただけだ。
あぁ、でも――ポンと手を打つ。
「そっか、夏だから……」
「なんや、その春先に湧き出る変質者に対するみたいな言い方は」
「いや、別にそういう意味じゃなくて」言いがかりですよ、それは。「シーズンじゃないですか、そういうの」”
『リゼィエの手記』の表現力が半端無い。
ぞっとするような、少し気持ち悪くなるような。
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“「きっちり一秒間隔……」先輩が腕時計で確認しながら、掠れた声で呟く「こら、間違いないわ」
「間違いないって、何がですか?」
もちろん、僕だって全く創造がつかないというわけではない。上半分の存在は謎だが、少なくとも下半分のそれらは――そのタイマー表示からどの様な意味を持つものであるかなんて、凡そ常識的な想像力をもっている人間なら誰にだって分かるだろう。
ただ、納得し難い心情があるだけで。
それはこの場にいる誰にも共通する思いだったのだおる。ゴクリという唾を飲み込む音さえ聞こえてきそうな静寂の中で、先輩は微妙に引き攣った笑みを浮かべながら、それを宣言する大役を見事に果たしてみせた。
「時限、爆弾 -
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“「貴方は支倉志乃という少女についてどのように考えていますか?彼女と共にいて、何を感じますか?可愛らしい少女?えぇ、確かに彼女はとても可愛らしいと思います。不思議な少女?それも事実でしょうね。彼女はたとえばお世辞の世界チャンピオンだって普通とは表現できないでしょう。何処か恐ろしい少女?それは真に迫っていると思います。彼女は本当に恐ろしいですから」
「何を……言いたいの?」
「簡単な事です。貴方がどのように考えているのかは知りませんけれど、それは本質を捉えていない。わたしが彼女を初めて見た時の、そして今なお変化する事なく感じ続けている感想を言いましょう――『怪物』です」
怪物、それは凡そ女の子相 -
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“だから、というわけでもないのだろうが。
嫌な、予感がした。
やがて、
「そう――分かりました」
ガキはそう言って、ノートを閉じた。
そして、ゆっくりと顔を上げて、俺を見た。
真っ黒な瞳。吸い込まれそうな、闇色。
これまでだって幾度と無く危ない事に手を出してきた俺でさえも、ゾッとせずにはいられない、わけの分からない圧迫感。いや、違和感。まるでこの世界に在ってはならないものを見てしまったかのような――恐怖。ただ、それは決して汚らわしさの混じった感情ではなく、生理的な嫌悪ではなく、そういう宝石であるかのような美しさだった。
だからこそ、俺はそんな少女の言葉を、真正面から受け止めた。
「貴方が、犯人 -
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“あぁ――まただ。
いつもいつも、邪魔をする。
いつもいつも、肝心なところでその声が『私』を引き戻す。
いつもいつも、その声に、どうしようもなく引き戻されてしまう。
だが、大丈夫。
一瞬だけ、届いていた。
僅かに指先が触れた程度だったけれど、大きな問題はない。
志乃は、ゆっくりと浮上していった。
「……い!おいっ!」
「……何?」
「大丈夫なのかよ。オマエ、いま息してなかっただろ」
唖然とした顔でこちらを覗き込む良樹を、志乃はまだボンヤリした瞳で見つめた。曇りガラスを隔てているかのように、目の前の男の顔は判然としない。この男が誰だったのかも、どうして自分がこんな場所に居るのかも漠然としていた。 -
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富士ミスレーベルに共通して言える事は『ミステリー要素に過度に期待してはいけない』ということ。まぁ犯人がいてそれを考える、って点では十分なんですけどねw
(『麗しのシャーロットに捧ぐ』を除く。あれはガチ。)
まぁミステリミステリしたけりゃ講談社ノベルスとか読んでおけって話ですね。(あれもライト気味ですけど)
ライトノベルはイラストによるキャラへの感情移入あってナンボだと思いますのですよ。それとミステリ風味の融合が楽しいのです。
ミステリの話はさておき、内容としては中々楽しめました。「テラお約束www」的な展開も好きだったりw
やや婉曲な表現や生き死に云々の語りが目立つ感 -
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