読みたかった内容とは違い、途中で読むのをやめてしまった。
人間社会が終わりを告げたあと、スマートフォンは勿論、一本の鉛筆すらつくることはできなくなる。
それだけ、現在、買えるものは複雑な工程と様々な原材料、大勢の人間、発電所や長距離輸送、などからつくられている。
日常生活のなかのごく単純な小道具の生産を隔てる溝は広く深い。
人間社会の大破局、直後はむしろ豊かに暮らせるかもしれない。
人間が少なくなったことで、資源が有り余る。
しかしその資源は腐りかけ。
劣化し続ける。
分散化、分業化が進んだ社会において、例えば1つの製品のすべての工程を知っている人は一人もいない。
大破局のあとに、知能をもったどんな生物が出現しようと、一つのメッセージだけは伝えられるとする。
物理学者のリチャード・ファインマンは「私の考えではそれは原子仮説、すなわち、すべての物質は原子からできていて、永久に動き回る小さい粒子は、いくらか離れているときは互いに引き合うが、無理矢理押しつけられると反発するというものだ」
粒子同士の引き合いは水の表面張力を、近接する原子間の相互反発は椅子に座っていてもなぜ椅子の中へ直に落ちていかないかを説明する。
この社会において、人間による重要な発見は偶然によるものが多い。
アオカビからのペニシリンの発見、電荷と磁力の関係、X線の発見などなど。
神の啓示や、世界に見つけさせられた、かもしれない。
大破局後に、速効手引書によって、技術は発展するだろう。
それは発展途上国に実例がある。
電力がなかった地域には、化石燃料を飛び越え太陽光発電。
通信手段などなかった地域にいきなり携帯電話が使われている。
しかし、その発展は大破局後の世界に合った適切な技術にとどまる。
どれだけ、正しい科学の知識や独創的な設計ができても、それに必要な材料や動力源が手に入るとは限らない。
ダ・ヴィンチの設計図のほとんどが実現しなかったように。
化石燃料はすでに枯渇した大破局後の世界では、クリーンでグリーンなサスティナブルなエネルギーを採用するしか道はない。
大破局後の世界は、様々な時代の科学や技術が錯綜したものになる。
パッチワークのように。
大破局後の世界では再利用と修理と代用に創意工夫が求められる。
科学は事実と数字の集合体ではない。
世界の仕組みを、自信をもって理解するうえで利用しなければならない方法なのである。
大破局後
まずは社会契約が破棄される。
騙しや暴力による短期的な利益を追求するよりも、長期的な結果、つまりは社会的地位の維持などを重要視することで社会は成立している。
しかし、どれだけ不正行為をしようと、そちらのほうが利益を得られとわかれば、その構造は破綻し、社会の結束力は緩む。
法と秩序は崩壊し、暴力と混沌が横行する。
自然は人工物を侵食していく。
下水を詰まらせて水たまりをつくり、堆積した瓦礫は被覆資材(マルチ)と化す。
まず植物、が繁茂し、アスファルトのヒビは広がり、割れ、霜が降るたびに水は凍り膨張。
凍結融解サイクルの中で、人工地盤は崩れていく。
植物は隙間に生え、やがて低木が定着。
根により、さらに地表は割れる。
ツタ類は信号機や道路標識を木の幹に見立て這い登る。
ビルの壁面は蔓性植物の葉で覆われる。
堆積すり落ち葉や植物の残骸はやがて腐り腐葉土となる。
塵や劣化したコンクリート、レンガの砂粒とまざり、新たな土壌(都市土壌)がつくられる。
この層には書類などの紙も加わる。
やがて大きな樹木に根を張らせ、自然へ還っていく。
公園は急速に林地になる。
ものの10年、20年でニワトコの茂みやカバノキが定着し、100年経つころには、トウヒ、カラマツ、クリなどが鬱蒼と茂る森となる。
街には倒木や落ち葉の吹きだまり、そして塵やゴミがあつまり、森林火災が起こる確率が高まる。
燃えやすいゴミは夏の落雷や割れたガラスにより日光が収斂し発火すれば、野火が広まり、高層ビルの内部を焼き尽くす。
地下のパイプやタンク、車に残るガスやガソリンに引火し爆発を引き起こす。
ガソリンスタンド、化学薬品倉庫、揮発性の溶剤や、ホームセンターのガス缶、爆発するものばかり。
凍った水により水道管は破裂、雨が吹き込み、木材を腐らせ、金属を錆びさせ、窓枠やドア枠は抜け落ち、ビルは崩壊する。
橋は遊間に砂塵が溜まり、歪み、錆びたボルトが切断され、100年もすれば下の川に落ちる。
ビルの瓦礫はやがて植物が堆積しなだらかになりら。
宇宙ステーションもまた1ヶ月に約2キロ落下し、火の玉と散る。
「だから僕たちは自分の置かれた状況の本当の状態を、
その逆の状況によって示されるまで決して見ないし、
自分たちが楽しんでいるものを、
それが欠乏するまで大切にするすべを知らない」
ロビンソン・クルーソーの言葉。
背の高い容器の底にいくつか穴を開け、木炭を敷き詰める。
その上に細かい砂と砂利を交互に敷く。
水を注ぐと濾過される。
2リットル以下のペットボトルを太陽光に当て殺菌。
理想は波形鉄板を黒く塗り、太陽に向けて立てかけ、水のボトルをその溝に並べると、熱殺菌効果が高まる。
食糧が集まる場所、スーパーや穀物倉庫などは、野生動物や昆虫、野生化した愛玩動物、もしかしたら動物園のどうぶつたちによって食べられる。
しかし、残された食糧をバランスよく計画的に分配していけば、約一万人が約50年間は生きられる。
ガソリンは酸化し、1年未満にエンジンのフィルターを詰まらせる。
使用前に濾過すれば10年は使えるかもしれない。
使い続けるには再加工する方法を探さなければならない。
傷は最悪、瞬間接着剤で裂け目をつなぎ合わせる。
都市部に居続ける最大の問題は、密集した人口から考えられる通り、大量の死体である。
腐敗、分解、ガスによる健康被害、そして水が汚染される。
ロサンゼルスやラスベガスは干上がり、ワシントンDCは沼沢地になる。
旧式にトランシーバーの確保と、書物の保存が大切だ。
また、科学博物館や産業博物館には昔の技術の仕組みがわかりやすく残されている。
荒廃した都市部を中心に、環状に集落が形成され、資源回収チームだけが都市部へ向かうようになる。
社会において、農業が根底であり根本。
農業が安定してはじむて、発展できる。