室城秀之のレビュー一覧
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うつほ物語
源氏物語の先駆けになったとも言える初の長編小説。四代に渡る秘琴の伝授を中心とした宮廷の物語。
秘琴の伝授した俊蔭、尚待、仲忠、いぬ宮と宮廷での皇位継承問題が一見乖離したストーリーになるかと思いきや、どちらものストーリーもそれぞれの内容を深めるために必須でこれまでの長編物語にできているこの作品は源氏物語にもない素晴らしさを持っていると思った。
確かに、作者が注で言っているように矛盾する点が多くあって疑問に思わざる終えない点はたくさんあるが、無理やりに辻褄を合わせようとするのではなくて、それでこそ最初の長編物語として受け入れているこの作者の姿勢もこれから自分で古典を研究していく上で -
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下巻では、さらに継母たちを失意のどん底まで蹴落とす少将(作中ではどんどん出世して呼び名が変わる)。なにせ父親が大臣で自分も出世街道のトップを独走しているので、金と権力を使って気持ちいいほどの復讐の連続。
しかし心優しい落窪の君は、老いた父や腹違いの姉妹たちが不幸になるのを悲しみ、少将は愛する妻のために和解。その後は孝行を尽くし、少将は人臣を極め、落窪の君も若君や姫君を何人も産み、大団円。
下巻の構成は、原文、現代語訳、補注、解説、ほか登場人物系図や引用和歌、重要語句索引等。
ああもう一度読みたくなってきた。
小公女セイラとか好きな人におすすめ。 -
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今は昔――。
中納言には娘が数人いたが、その中の一人“落窪の君”は実の母を亡くし、中納言邸で継母である北の方に使用人のような扱いを受けていた。
宮家の血筋を引く落窪の君は、姿も心も美しく、また縫い物が得意だった。継母や腹違いの姉妹の婿のために縫い物をする日々を送っていたが、その落窪の君のことを聞いた“少将”は、落窪の君に文を送る――。
前半は原文、後半は現代語訳。原文には細かい注がつけられ、会話文の前には発言者も明記されているので、原文を読みつつわかりにくい部分を現代語訳で補うという読み方が良いと思う。ただし上巻の補注も下巻にまとめられているので、手元に下巻がないときは不便だった。
物語の -
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作者不詳ながら、少なくとも「枕草子」よりは先に書かれた、平安時代の物語。「継母による継子いじめ」は当時の宮廷生活がも相当多かったらしく、この手の物語はたくさん」あったそうだ。
前半は非常に面白い読み物で、ストーリーの緊密さ、会話の豊かさなど、ほとんど「小説」である。「源氏物語」よりも小説らしい作品かもしれない。
継母に召使いのように扱われ「落窪の間」に幽閉された女主人公に、好色でグロテスクなエロ爺があてがわれる。この辺の「悪役のデフォルメ」ぶり、なんかディケンズみたいである。ところがこのエロ爺、「結婚」初夜に主人公が扉にカギをかけて閉め出され、そこでジタバタやっていたのだが、風邪を引いていたた -
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ボリューミーで、巻同士の前後関係に問題があるとかで、あまり一般に読まれない古典作品と聞いている。
実際、私も学生時代、文学史の試験のために、作品名くらいは見たなあ、くらいの関わりしか持ってこなかった。
一度、現代語訳で読んでみようと思ったのが昨年。
でも、源氏のような読書環境は、このマイナーな作品には望むべくもない。
昨年、ようやく津島佑子のジュニア向けのリライトを読んだばかり。
ビギナーズクラシックスのシリーズは、ハイライトの現代語訳→原文→解説という構造になっている。
津島版で読んだものは、あて宮への求婚譚が中心にまとめられていた。
春宮に嫁いで、寵愛を一心に集めながらも、仲忠への思いが