河治和香のレビュー一覧
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ネタバレあのひと鍋にこんなにも多くのドラマが背負い込まれていたとは…
ヘラヘラ食べっちまってすまない事をしたなぁ。先に読んでいれば、振り袖だって味わって呑んだのに…
今も浅草で営業中の「駒形どぜう」
三代目助七の生涯を通してみる幕末から明治。
河治さんの描く江戸時代にはいつもしっかり体がある。現代から夢見る古き良き時代ファンタジーではなくて、現代へ続く人生の積み重ねが感じられる。当時の思考回路はそうだっただろうなと納得出来る。
時代は人の感情が作り出すもので、歴史は時代の積み重ね。字面で学ぶ流れでは「未開だったんだな」で他人事だった出来事も、抗いがたい波に飲まれるやるせなさとして我がごとに出来る。
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このシリーズの最終巻。
安政の大地震、大雨と洪水。
次々と命の危機を感じるような江戸。
そんな中であっても、江戸市民は、ご利益があるとか、ナマズのせいだとか、次々と瓦版が大いに出て、出版印刷業界は、建築関係の職人とともに、懐が一気に豊かになる。
大商人だけでなく、職人たちが潤うと、新しい文化が生まれる。
そんな江戸の、機運を余すことなく物語に注入することができたのは、偶然が重なり、江戸文化、江戸美術をよく知る人物と出会ったため。
国芳研究家としても有名な「いさお敏彦」さん、を紹介してくれたのは偶然喫茶店の隣の席にいた大学教授「山田俊幸」さん。小学館から紹介されたのは「内藤正人」さん、火消しや -
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国芳の長女登鯉(とり)が主人公。
シリーズ第3巻目。
北斎の娘、お栄と登鯉(とり)は火事の見物でたびたび出くわす。密かにお栄に憧れを抱いている。
お栄はあまりに名前の大きな存在である父を持つ絵師としての自分と同じ境遇の主人公を好ましく思っている。
そんななか、北斎がついに亡くなる。
嫌われている国芳は葬式に娘を代わりにおくる。
鳥居耀蔵がお役御免となった後、江戸市中も楽しみが復活。虎の親戚、豹の見物をすると疫病にかからないという噂が出て国芳たちは繰り出す。そこで、迷子に出会う。
尾張藩の藩主の跡目争いの最中にまだわずか10歳で田安家から尾張藩の藩主となった少年だった。
当時の尾張藩は幕府に -
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幕末から明治の時代。
体制も変わるなら、暦も変わる、価値観まで政府主導で変えてしまうといった天と地がひっくり返るような出来事が庶民を襲ったのはこの時代。
そんな時代の最後の巨匠が、歌川国芳である。
新聞記者の永井総太郎ことペンネーム鶯亭金升が国芳の娘お芳に聞き語りをしたように書かれているのがこの本。
その時代の気風も描ききっており、ノンフィクション風小説は記録小説といってもいいほどの仕上がり。
あまりに膨大な情報が詰め込まれて物語を形成し、読み手にも圧倒的な臨場感を与える。
幕末〜明治のとんでもない時代、浮世絵師の娘として、才能があるにもかかわらず、あまりに大きな名前の父親を持ったお -
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主人公の女浮世絵師を中心に描かれる、このシリーズも最終巻。
チャンバラのない時代物ですが、
人は流行病、事故、自殺(!)などで
さらっと理不尽に死んでいきます。
「死」の気配が非常に濃厚なのにもかかわらず、
どこかカラッとしている、不思議な雰囲気のお話です。
当たり前のように死がすぐそばにある中で、
前を向いて歩く人々の描写が本当に素晴らしい。
芯の強いお話を書くなぁ、としみじみと思います。
この物語を書いている間に、
作者の方は旦那さんをガンで亡くされていることが、
もしかしたら影響しているのかも知れませんね。
また、江戸末期の風俗が非常に詳しく描かれていて、
そういう -
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ジャンルを歴史物としたが、単に江戸時代を背景にしているだけで、市井の人物達のしみじみとした物語である。犬飼 六岐の「囲碁小町 嫁入り七番勝負」もとても楽しく読んだし、どうも、この時代にだんだんと惹きつけられてしまったようだ。
どちらも幕末の騒然とした時代だが、登場人物はみなしっかりと地に足をつけて、そしてしたたかに暮らしている。
最初は、お玉という柳橋の芸者を中心とした男女の性愛を描いた小説か、と思いながらも読んでいくと、芸者遊びをする殿様や豪商などの登場人物が、だんだんと時代のうずに巻き込まれていく。
その登場人物がまた活き活きとして描かれているのがすばらしい。 -
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浮世絵は大好きで、葛飾北斎、歌川国芳、河鍋暁斎が特に好き。その、国芳の娘が主人公の短編集。中身は、本当に江戸情緒が満載で、言葉も風俗もすごーく江戸らしい。入れ墨って、江戸の人にとってすごく意味のあるものだったんだねぇ。
国芳を最初に好きになったのは「源頼光公館土蜘蛛作妖怪図」という風刺絵で、最期の一編がこれの話でした。彼が活躍した当時、幕府は贅沢禁止令を出して庶民を苦しめていましたとよく言われている時代、鳥居耀蔵が悪役としてよく登場する時代です。鳥居耀蔵って、林大学頭の子だったのか、知らなかった。当時の改革という名の庶民締め付けの様子がとてもよく分かります。
浮世絵というと普通は絵師のことし -
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ネタバレ「 侠風むすめ」で始まる「国芳一門浮世絵草紙」の愛読者としては,登鯉が小安ではなくその兄に嫁いだことが1章でわかって,すごくショックだったのだけど,最終章でその経緯が明かされて,泣けた.しかも息子が残されたなんて.
「源助町の親方」が「乃げん」だとわかったときも,はっとしたけど.
それにしても,時代に翻弄されてみんな哀しい.取り残されても,うまく乗ったように見えても.哀しいけど,国芳の「血」は時代を超えて残っていくんだなあと思った.
その中で,お芳が「芳」の字をもらったのも,一勇斎を継いだのも,決して考えるのが面倒だった訳じゃなかったと思うよ.
明治の国芳一門関連では,谷津 矢車「おもち -
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タヌキの殿様こと、元南町奉行遠山が死んだ。
登鯉の病状も悪化していく中、周りにいた人たちが突然にしてこの世からいなくなってしまう。
あたいもいつ死ぬんだろう。
そんな中、江戸に災禍が襲う。
安政の大地震、一夜にして江戸が灰燼と帰する。
命からがら逃げだした国芳と登鯉だったが、国芳は卒中を起こし右半身が動かなくなってしまう。
その間に、義理の母せゐが突然に世を去る。
何の奇縁か、国芳一門に入った注文は、大万燈。
題目は”一ツ家”。
一ツ家に関わると呪いがかかる。
この最後の大仕事に、国芳娘 一燕斎芳鳥が挑む。
シリーズが終わってしまった。
最初は江戸っ子気