河治和香のレビュー一覧
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ネタバレ「 侠風むすめ」で始まる「国芳一門浮世絵草紙」の愛読者としては,登鯉が小安ではなくその兄に嫁いだことが1章でわかって,すごくショックだったのだけど,最終章でその経緯が明かされて,泣けた.しかも息子が残されたなんて.
「源助町の親方」が「乃げん」だとわかったときも,はっとしたけど.
それにしても,時代に翻弄されてみんな哀しい.取り残されても,うまく乗ったように見えても.哀しいけど,国芳の「血」は時代を超えて残っていくんだなあと思った.
その中で,お芳が「芳」の字をもらったのも,一勇斎を継いだのも,決して考えるのが面倒だった訳じゃなかったと思うよ.
明治の国芳一門関連では,谷津 矢車「おもちゃ絵芳藤」もおすすめ! -
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タヌキの殿様こと、元南町奉行遠山が死んだ。
登鯉の病状も悪化していく中、周りにいた人たちが突然にしてこの世からいなくなってしまう。
あたいもいつ死ぬんだろう。
そんな中、江戸に災禍が襲う。
安政の大地震、一夜にして江戸が灰燼と帰する。
命からがら逃げだした国芳と登鯉だったが、国芳は卒中を起こし右半身が動かなくなってしまう。
その間に、義理の母せゐが突然に世を去る。
何の奇縁か、国芳一門に入った注文は、大万燈。
題目は”一ツ家”。
一ツ家に関わると呪いがかかる。
この最後の大仕事に、国芳娘 一燕斎芳鳥が挑む。
シリーズが終わってしまった。
最初は江戸っ子気質の侠風娘だった登鯉が、女絵師として経験を重ねるつれての成長譚。
その成長だが同時に労咳にかかり、自らの死を意識して世のはかなさを憂うことにもつながっていく。
シリーズを通して、国芳一門に興味を持った。
生きていくときの決断に迷ったときには、粋なほう、という生き方をしていきたい。
シリーズはこれにておしまい。
国芳、登鯉亡き後に残された次女、13年後のお吉視点のその後の国芳一門「ニッポンチ」に続く。 -
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国芳一門のシリーズ二巻。
男には惚れても、一緒になりたい男には手が届かなくてもどかしい、女っ気というよりは男勝りの江戸っ子気質は親父譲りの国芳の娘、登鯉。
うちの娘を武家にやれるかと息巻いていた国芳だったが、最近はやけに登鯉の縁談を気にするようになってきた。
というのも、北斎の家に訪問し、北斎の娘お栄を見て以来この調子だ。
お栄は親と同様に絵で生きていたが、すでに生き遅れの女になり、国芳はお栄に登鯉の行末を見たのだろう。
登鯉を誰かに嫁がせようとする国芳一門に対して、登鯉は苛立ちを隠せない。
北斎の娘、お栄と国芳の娘、登鯉が揃って屋根上からの火事場見物してるところが面白い。
江戸末期は北斎、国芳、国貞、広重の爛熟期の浮世絵師たちが、揃って下町に住んでいた時代だ。
そんな浮世絵師たち、江戸っ子たちの交流があったのかもしれない。 -
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江戸末期、天保年間の町絵師最大一派、歌川国芳の一門を描くシリーズ第一巻。
本作は国芳の長女、登鯉の視点で描かれる。
隅田川に流される、磔にされた女、それと男の生首が江戸っ子たちの話題に上がる。
旗本に嫁いだ女が男と駆け落ちしただの、男が女を寝取っただのと、いろんな噂が飛び交う江戸の町。
ちょうどそのころ、国芳に入門したいいところの坊主、周三郎が写生に使うと川から拾ってきたモノは、女の生首だった。
腰を抜かす国芳の弟子たち、そこへ乗り込んでくる岡っ引き。
この事件が元で南町奉行が入れ替わるのだが、そのころから江戸には禁制の嵐が吹き荒れる。
世にいう、天保の改革。
錦絵への制限が増えていくも、国芳は江戸っ子の気風と啖呵で新たな画法を編み出していく。
すぐに国芳一門から家に連れ帰られた周三郎、のちの河鍋暁斎である。 -
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俺が好きな江戸時代の絵師は北斎、若冲、そんで国芳です。
北斎は画狂の名の通り、様々な描き方のアプローチから、人や自然、風景の本質を描き出す天才肌の変人という見方をしている。
若冲は、鳥や動物の情景が音まで聞こえてきそうな一瞬の切り取りに長けていると思う。
そして国芳。
この人の絵が好きなのは、江戸っ子の粋をビンビンに感じる。
武者絵のほとばしる躍動感、様々なモチーフに描く猫もかわいい。
江戸から明治へ、御一新のちの江戸改め東京。
浮世絵師として名をはせた国芳一門も、時代に乗って活躍する者、時代に取り残される者に分かれていた。
国芳の弟子たち、月岡芳年、河鍋暁斎、落合芳幾など、国芳亡き後の国芳一門の弟子たちを、国芳の妹娘、お芳の視点から描いている。
江戸っ子が大事にしてきた価値観が、時代の流れで色あせていく。
余りに大きかった国芳の背中を思い出す人々には寂しさが残る。
この本、ホントは国芳と弟子たちを描いた「国芳一門浮世絵草紙」のシリーズものの後日談なのに、いきなり後日談から読んでしまった。
シリーズを通しで読むべく注文中。 -
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初出 2019〜20年「きらら」
幕末に没した浮世絵師歌川国芳の弟子たちの、浮世絵が廃れていく明治になってからの歩みを、萬朝報の記者鶯亭金升が国芳の娘のお芳などから聞く。
1)一勇齊芳女(お芳) 国芳の次女。姉が登鯉の画号を与えられたのに、父の代筆ができるようになっても認められなかった鬱屈を抱える。父の死後は外国人相手の千代紙、春画を書いたり小物の絵付けをし、昭和まで生きた。
2)芳虎 師匠の作風に似たが破門され横浜絵などを描く。芳藤 おもちゃ絵(工作用)を得意とし、尾張公の若君がお気に入りだった。
3)河鍋暁斎 幼くして入門したが、狩野派へ行き。維新後は仮名垣魯文と組んで戯作(小説)の挿絵を描き、ポンチ絵の雑誌を出版する。
4)月岡芳年 輸入された赤絵の具で血みどろ絵を得意とし、上野戦争を見物に行って写生した絵が評判になり、新聞の挿絵などで活躍するが、精神を病む。
5)芳兼 提灯屋田蝶を経営し、千社札が売れた。
芳鶴(周延) 高田藩榊原家の家士で、長州征伐、箱館戦争に従軍し、戦争画、風俗画を描く。
6)三遊亭円朝 噺家の父が出奔し、一時期国芳に弟子入りしたが、父が戻って噺家に。新しい創作噺、怪談噺、芝居噺で人気者に。
7)芳延 旗本の息子で、浅草で狸茶屋を経営。
芳春 旗本の息子で芝居好き。新聞挿絵を描く。息子は活動写真のスターに。
8)芳幾 吉原の茶屋の息子。安政大地震で家と妻を失うが、目撃した情景をスケッチし瓦版と錦絵で大当たり。芳年と競作した無残絵シリーズで人気。時代を見抜く目があり、新聞社設立に参加、写真を模したり器用に取り入れたが、人形制作で失敗。
9)芳宗(松さん) 最初の弟子で、国芳の助手として色差しをするが、自作が無く国芳の没後仕事が無くなる。娘が売れっ子芸者となったので芸者屋を開業。
小説というより史実の掘り起こし、評伝の要素が強いのかな。潰しの利く絵師より、彫師、摺師はたいへんだったろうな。