越智敏之のレビュー一覧
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肉食のイメージが強いヨーロッパだが、肉の供給が安定するまで常食するのは魚だった。カトリックが定めた〈魚の日〉、ニシンの回遊ルートが動かしたハンザとオランダの経済、大英帝国を築きあげた塩ダラの輸出事業、魚を使った悪口が頻出する「テンペスト」と奴隷制など、魚食から見える西洋史。
バリー・コリンガム『大英帝国は大喰らい』でも一番最初の章はプア・ジョンと呼ばれる塩ダラを扱っていたが、その辺の食糧事情をより詳細に綴った一冊。
著者が英文学者なので、まえがきでまず「テンペスト」のキャリバンとタラの悪口に触れ、第一章は魚の宗教的な意味合いから語り起こす。言われてみると、キリストの奇跡は肉ではなく魚を増や -
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ヨーロッパの食べ物というと肉を想像するが、西洋の食の中心が肉というイメージが確立するのは、18世紀に、肉類を一年を通して供給するシステムが確立してからのことであり、それまでは、魚の方が肉よりも消費量が多かったそうだ。それには、当時のカトリック教会の世界では一年のおよそ半分が断食日であったが、魚を食べることは奨励されていたためということもあったらしい。
こうした経済的需要を満たすために、それを支えるための漁獲、保存加工、輸送の経済システムが発展したのだが、その主要な商品だったのがニシンとタラ。そして漁業と言えば船と船乗り。それはこの時代、海軍のベースであり、国家の盛衰を左右するものとなる。 -
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戦後日本の占領統治を効果的なものとするため、日本の土地を踏むことなく文化研究学者ルース・ベネディクトがまとめた日本人論。脚注において誤りも多数あるが、日本人の精神構造をアメリカ人と比較しながら論述することで、特徴的に描き出している。ほとんどが今でも有効なものではないか。
日本人は社会の中で自分に与えられた役割「其ノ所」を得てその役割を失わないよう努力する。相手に対する責務は契約関係に基づく「義務」よりはるかに広く概念的な「義理」であり、その義理を目立たぬ形で果たすことが美しいとされる。競争的に自分の貢献をアピールすることは相手の「其ノ所」を犯し恥をかかせることとなり、社会的に許容されない。日本 -
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アメリカが日本との戦争を終わらすために調査・分析した日本人論のよう。
負けを認めず、最後の一兵まで戦うという日本の決意を鈍らせるにはどうすればいいか。
どうすれば、日本は戦争をやめる(降伏に応じる)のか。
・皇居空爆をすべきか。
・日本人を根絶するしかないのか。
戦争を終わらせるために原爆を投下したという理由づけの根拠となるアメリカ側の言い分になる内容だと思った。
本書は1930年代の日本を、徳川期の武士階級の論理と組み合わせて、日本人の統一像を描こうとしたものだ。
本書の出版年に生まれた人が今80歳くらいなので、その親の世代の日本人論になる。
当然ながら今の日本とは大きく異なっている -
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ネタバレどこかでオススメとして見かけた本。
読んでる間、頭の中にあったのはスカーレット・オハラのタラのテーマ曲、というのはさすがに嘘だけど、タラの話がとても多い。
世界史というか、欧米世界と魚との関わりを解く試みが楽しい。
キリスト教と魚、シェイクスピアと魚、アメリカ入植と魚。
いやあ、お腹いっぱい。
面白くてテンペストを再読してしまった。
ニューファンドランドのアバロン半島にこんなドラマがあったとは。
ジョンスミスというやたら匿名性の高い名を持つ波瀾万丈すぎるポカホンタスの恋人(嘘)の話も凄かった。
この人がトルコ奴隷時代にやったこと、本当に人間の所業じゃないよね。(主人の妻に色仕掛けして助けても -
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ヨーロッパではあまり魚が食べられてるイメージが強くなかったけど、実はそうではなくてニシンやタラは重要なものだったという初めて知る知識に惹かれ購入。イギリス、オランダ、フランス、スペイン、アメリカあたりの歴史に興味のある方におすすめ
私が思ったよりもかなり前の時代から魚と人々の生活や政治、軍隊、宗教なんかとの繋がりがあってしかもそれがかなり強い繋がりだったことに驚いた。
昔の時代は特にだけどやっぱり人間は食べ物ファーストなんだな。生きていく上で欠かせないものだし。
あと巻末の方に当時の魚料理のレシピが載ってるんだけどこれ大丈夫??みたいなレシピが多くてそこも面白かった。作る勇気はない。
ヨーロ -
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戦後すぐに出版された日本人論なので、現代では「?」な部分もありますが、おおむね的を得ているように感じます。ただ、一つの論点をだらだら書いててわかりにくい部分が多くみられます。
1.この本を一言で表すと?
・大きくはずれてないが、細部で間違いが多い、アメリカ人による終戦直後の日本人分析
2.よかった点を3〜5つ
・罪の文化、恥の文化(p272)
→現代の日本では、恥の文化が薄れてきているのが問題なのではないか?と考えさせられた
・身からでた錆への責任(p361)
→刀を比喩的に使った、大和魂をわかりやすく表現している。
・乃木将軍とロシアのステッセル将軍とのエピソード(p375)
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以前読んだ長谷川松治訳(講談社学術文庫版)よりかなり読みやすい.光文社文庫版もチェックしたいところ.
「菊と刀」の評価は過去にも多くなされているが,ベネディクトの見方に正しいものがあるというところは感覚的には理解できる.ただ,それは単純に結論として正しくなっているだけである.結論にいたる過程については荒削りであり,また不正確でもある.だからこそ大枠だけは正しいというところである.日本人の研究者は日本文化になじみすぎており,これまで,敢えてその「大枠」に眼を向けることがなかった.本書の価値はこの過去に抜け落ちていた視点があったというところであろう.
ただ,やはり彼女がつかんだ直感的なものだけ -
Posted by ブクログ
評価が難しい本。本書でまず目につくのは、巻末に附された厖大な量の註である。これは、著者が丹念に取材にあたった証左ではなく、むしろその逆で、事実の誤認などがかなり多いために訳註を増やさざるをえないのだ。まずこの時点で、高い評価をためらってしまう。当時日本論がほとんど世に出ていないことや、取材時は戦時下で、情報を容易に得ることができないという背景は理解しているものの、それでも日本人からすれば常識的な部分にまであまりにも誤りが多く、積極的に肯定する気にはなれない。それを差し引いても、内容もはたして妥当なのかどうか。いわんとしていることはたしかにわかるのだが、どうにも腑に落ちない部分も多多ある。時代背