春日井晶子のレビュー一覧

  • レナードの朝〔新版〕

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    ネタバレ

    脳神経外科による脳炎後遺症患者の長期観察記録。ただし、無味乾燥な症状や数字のみの記録を避け、患者個々の性格や言動、発症までの暮らし、社会との関わり方までも記載し、文学的で哲学的。それは現代医療の患者を即物的に扱う姿勢への批判からきており、一見支離滅裂な行動をする患者側から見た世界、その行動原理、内在する深い人間性への洞察も記されている。物事の断片で正邪を決めつけ、糾弾してゆく世相にも、警鐘を鳴らす指摘だと思う。
    どうしても『アルジャーノンに花束を』を想起する。夢の薬エルドーパによる「目覚め」と呼ばれる劇的な症状の改善、それは生まれ変わるかのような重い症状からの解放をもたらすが、強い副作用、制御

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    2024年04月10日
  • 色のない島へ──脳神経科医のミクロネシア探訪記

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    全色盲に興味があり読み始めたが、全色盲のことを冷徹に学ぶよりも深く、人間の温かみを感じながら、体全体で「知る」ことができたような、そんな感覚を抱く本だった。その上、全色盲だけでなく、神経疾患について、熱帯の島々の文化について、雰囲気について、人間関係について、シダについて、ソテツについて……等など、著者が見た景色、感じたものがそのまままるっと込められていて、良い「熱さ」が迸る本だった。特に自分はシダについて興味があるので、シダに関する記述が異様に細かく、熱量があることに親しみを感じた。ソテツについても勉強したいと思った。

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    2022年12月02日
  • レナードの朝〔新版〕

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    年の最後に今年読んだ中で最も重要な本に出会えた。前半の症例一覧も本当に考えさせられましたが、後半の医学とは、治療とは何であるべきかというある種の決意が人生を変えさせられた。噂に違わずこれが間違いなくオリヴァー・サックスの代表作だと唸りました。

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    2021年12月30日
  • レナードの朝〔新版〕

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     この小説の著者は、イギリスの神経学者です。同名の映画は一九九一年四月に日本で上映され、多くの人を感動させた。小説の初出は、一九七三年に上梓されています。
     一九二〇年代生まれの患者が多い「嗜眠性脳炎」は、通称「眠り病」というが、その病の既往性のある患者たちが、回復後、比較的長い年月を経て、パーキンソン病を発症するということに気づいたサックスは、因果関係は不明だがL-DOPA(レボドパ)を嗜眠性脳炎の後遺症に苦しむ患者たちに応用できないかという発想から、物語が始まるのです。
     初めにネット上映で映画を鑑賞した後、小説で補完できると思い続けて原作を読んだ。随分生々しく書かれていたことを思い出す。

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    2020年04月18日
  • レナードの朝〔新版〕

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    "映画にもなった「レナードの朝」を今読み終わる。
    オリヴァー・サックスさんの語り口も読みやすく、一人一人の物語に引き込まれる。
    1900年代前半から大流行した脳炎の後遺症で、パーキンソン症候群、言葉や感情、体の自由が奪われてしまった人たちが、ある新薬(L-DOPA)の投与により、以前の生活に不自由がなかったころのように回復する。しかしながら、患者により効果は異なり、チックや加速を繰り返すようになったり、意地悪な性格になってしまったり、という副作用が生じてしまう。そんな人々と向き合い治療を行っていた脳神経科医が著者である。

    映画の撮影についてもコメントも付録にある。ロバート・デ・ニー

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    2018年11月24日
  • 色のない島へ──脳神経科医のミクロネシア探訪記

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    アメリカンブッダでちらっと題名が出てきたので興味を持って。
    思ったより旅行記で全色盲の人の言及が少ない。全色盲や奇病への学術的好奇心や哀れみというよりも、偶然的な条件によってそのような現象が起きる人体の不思議さとその中で共存して暮らす人々への敬意が端々から読み取れる。著者が自然科学への造詣と情熱が深いのでミクロネシアの島々の日差しが強く豊かな自然が生き生きと描写されている。とにかくシダとソテツの説明が長くて詳しい笑

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    2023年12月21日
  • 色のない島へ──脳神経科医のミクロネシア探訪記

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    自在であると思っていることが(時には意識すらしていないことが)、誰かにとっては自在でも当たり前でもない。色彩異常やALSなどの風土病が多発するミクロネシアへ向かった著者の生活のノンフィクション。
    果てしない時間を生き抜いてきた植物や菌や自然に囲まれて生きる人間の、戦争や略奪そして忘却の歴史を通じて、人の生き様の密度と短さを思う。
    各島でのバラバラの話が、最後、緩やかにつながるような不思議な感覚を覚えた。

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    2020年08月18日
  • レナードの朝〔新版〕

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    ネタバレ

    そういうわけで読んでみた。
    映画のおかげでタイトルは「レナードの朝」だけれど、原題は「Awakenings(目覚め)」。
    本を売るには知名度の高いこのタイトルの方が良いんだろうけど、
    中身はやはり「目覚め」だよな、と思う。
    出版社も慈善事業じゃないのでしょうがないけど、
    ちょっと陳腐化されたようで残念。

    これは執筆当時(少し前)に「奇跡の薬」と呼ばれた
    L-DOPAという薬の投薬記録以外の何物でもない。
    はっきりとメカニズムがわかっていなかったが故にどうしても実験的な色彩を帯びてしまい、
    読者はオリヴァー・サックスの判断に
    疑問を感じることになるのは避けられないのではないだろうか。
    『火星の

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    2015年07月26日
  • 色のない島へ──脳神経科医のミクロネシア探訪記

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    神経科医師のオリヴァーサックス先生のミクロネシア探訪記。ピンゲラップ島とポーンペイ島には遺伝による先天的な全色盲の人が多く存在する。そしてグアム島にはリティコという筋萎縮性側索硬化症に似た進行性の神経麻痺とボディグというパーキンソン病に似た症状で痴呆を伴うことがある、この2つの病気が混ざり合って発症する風土病がある。
     医者の記録だから症状の話や病気の原因の考察などがあるがそんな話は置いておいて、こうした原因不明の風土病に対して人間は寛容に受け入れる。これを病気と捉えず、ありのままに家族は受け入れる。何が普通、正常なのか知らないが、病名を付けて騒ぎ立てる現代医療には少し不信感がある。性格にも病

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    2022年09月17日
  • 色のない島へ──脳神経科医のミクロネシア探訪記

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    全色盲の患者さんの多い島とALSやパーキンソン病の症状が多いグアムへの調査旅。グアムってただのリゾートのイメージやけど日本は戦時中にだいぶひどいことしたんやね。この病気とは関係ないけど。

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    2020年01月21日
  • 色のない島へ──脳神経科医のミクロネシア探訪記

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    この本は南太平洋の人々の暮らしを紹介する旅行記であり、遺伝子の隔絶により発生する先天性異常や病気の原因を探求する医学の記録であり、その病気の原因と思われる植物や生態系に関する植物学的、生物学的なだったり、ジャンルが多岐に渡っていて興味深くも読みにくかった。読み終えて印象に残っているのは「色盲とパーキンソン病(もどき)とソテツ」。

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    2016年06月12日