春日井晶子のレビュー一覧
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ネタバレ脳神経外科による脳炎後遺症患者の長期観察記録。ただし、無味乾燥な症状や数字のみの記録を避け、患者個々の性格や言動、発症までの暮らし、社会との関わり方までも記載し、文学的で哲学的。それは現代医療の患者を即物的に扱う姿勢への批判からきており、一見支離滅裂な行動をする患者側から見た世界、その行動原理、内在する深い人間性への洞察も記されている。物事の断片で正邪を決めつけ、糾弾してゆく世相にも、警鐘を鳴らす指摘だと思う。
どうしても『アルジャーノンに花束を』を想起する。夢の薬エルドーパによる「目覚め」と呼ばれる劇的な症状の改善、それは生まれ変わるかのような重い症状からの解放をもたらすが、強い副作用、制御 -
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Posted by ブクログ
この小説の著者は、イギリスの神経学者です。同名の映画は一九九一年四月に日本で上映され、多くの人を感動させた。小説の初出は、一九七三年に上梓されています。
一九二〇年代生まれの患者が多い「嗜眠性脳炎」は、通称「眠り病」というが、その病の既往性のある患者たちが、回復後、比較的長い年月を経て、パーキンソン病を発症するということに気づいたサックスは、因果関係は不明だがL-DOPA(レボドパ)を嗜眠性脳炎の後遺症に苦しむ患者たちに応用できないかという発想から、物語が始まるのです。
初めにネット上映で映画を鑑賞した後、小説で補完できると思い続けて原作を読んだ。随分生々しく書かれていたことを思い出す。 -
Posted by ブクログ
"映画にもなった「レナードの朝」を今読み終わる。
オリヴァー・サックスさんの語り口も読みやすく、一人一人の物語に引き込まれる。
1900年代前半から大流行した脳炎の後遺症で、パーキンソン症候群、言葉や感情、体の自由が奪われてしまった人たちが、ある新薬(L-DOPA)の投与により、以前の生活に不自由がなかったころのように回復する。しかしながら、患者により効果は異なり、チックや加速を繰り返すようになったり、意地悪な性格になってしまったり、という副作用が生じてしまう。そんな人々と向き合い治療を行っていた脳神経科医が著者である。
映画の撮影についてもコメントも付録にある。ロバート・デ・ニー -
Posted by ブクログ
ネタバレそういうわけで読んでみた。
映画のおかげでタイトルは「レナードの朝」だけれど、原題は「Awakenings(目覚め)」。
本を売るには知名度の高いこのタイトルの方が良いんだろうけど、
中身はやはり「目覚め」だよな、と思う。
出版社も慈善事業じゃないのでしょうがないけど、
ちょっと陳腐化されたようで残念。
これは執筆当時(少し前)に「奇跡の薬」と呼ばれた
L-DOPAという薬の投薬記録以外の何物でもない。
はっきりとメカニズムがわかっていなかったが故にどうしても実験的な色彩を帯びてしまい、
読者はオリヴァー・サックスの判断に
疑問を感じることになるのは避けられないのではないだろうか。
『火星の -
Posted by ブクログ
神経科医師のオリヴァーサックス先生のミクロネシア探訪記。ピンゲラップ島とポーンペイ島には遺伝による先天的な全色盲の人が多く存在する。そしてグアム島にはリティコという筋萎縮性側索硬化症に似た進行性の神経麻痺とボディグというパーキンソン病に似た症状で痴呆を伴うことがある、この2つの病気が混ざり合って発症する風土病がある。
医者の記録だから症状の話や病気の原因の考察などがあるがそんな話は置いておいて、こうした原因不明の風土病に対して人間は寛容に受け入れる。これを病気と捉えず、ありのままに家族は受け入れる。何が普通、正常なのか知らないが、病名を付けて騒ぎ立てる現代医療には少し不信感がある。性格にも病