佐藤弘幸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
脱税を取り締まる機関としてマルサが有名だが、マルサが手を出せない相手を担当する通称「リョウチョウ」がある。
そのリョウチョウで働いていた著者が見てきた数々の脱税の手口が紹介されていた。
インテリジェンスの高い人が、抜けのない完璧な脱税・脱法をしており、マルサで摘発される穴だらけの脱税をしている人たちとは桁違いの悪だと著者は主張していた。
脱税するために海外に10年間移住したり、法と法の隙間をすり抜けるための方法を熟知したプライベートバンクを利用したりと、多種多様な脱税方法が紹介されていた。
税は貧富の差を減らすために富の再分配を目的であることを改めて再確認した。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ不動産に関する巨額の取引で得た所得に対する課税逃れをしようとする経営者と、それを幇助する税理士、そして全身全霊でその摘発をしようとする国税庁の統括国税実査官(情報トージツ)の争いを描いた小説。
最初は課税逃れをする人物が中心だが、ほとんどは国税の実査官中心で描かれる。経営者の課税逃れはいったん成功するが、最後はまだひと悶着ありそうに締めくくっていて、国税側よりの物語になっている。
これは著者が国税OBなので当然であろう。
租税回避スキームやその調査についてはなかなか知ることの無い分野なので非常に興味深かったが、登場人物の心理描写や風景描写、ユーモアに入れ方はどこかアマチュア感がした。
海 -
Posted by ブクログ
この小説は、脱税者と国税の戦いを描いたもので、香港のタックスヘイブンを利用しているところが特徴だが、ストーリー展開も盛り上がりも文章力もまあ普通で、つまらなくはないが、手放しで称賛するほどおもしろいわけでもない。
この手の本では、脱税スキームの解説や、各国税制の違い、税務当局の組織の違いなどを説明してくれることが多いが、分かり易さと興ざめの両立が難しく、どちらにころんでも小説をスポイルしかねないようだ。そのせいか、ドキュメンタリーまたは事実に基づいた小説のほうが、それらの解説も内部に取り込めてしまうので、おもしろく感じるのだろう。事実は小説より奇とも言うし。
本書は、国税局に勤務した経験 -
Posted by ブクログ
「国税局資料調査課」、通称「コメ」。令状のない疑義事案の任意調査を担う組織である。
題材は非常に面白い。しかし「コメ」についてはWikiのような内容程度で、叩き上げ的なよもや話や愚痴、出世テクニックが多く、映画『マルサの女』のような迫力や凄味にはやや欠ける。例えば早朝のアポなし訪問がほとんどなためマクドナルド集合など正直読者は興味がない。もうちょっと具体的な事案や肉薄した調査体験などを読みたい。警察組織の捜査一課のような一種独特な雰囲気は感じさせられるものの手の内は教えられないということかもしれない。
題名と冒頭から期待して読むと些か物足りなさを感じる。題材が面白いだけに残念。