辻井喬のレビュー一覧
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70年台から80年台前半にかけて自民党内で鎬を削ったいわゆる「三角大福中」、その中で自分が1番好きな政治家が大平正芳だ。(余談、かつ意外に思われるかもしれないが次に好きなのは福田赳夫だったりする。)
辻井喬、またの名を堤清二が描いた政治家・大平正芳の伝記。史実を徹底的に追う吉村昭と天才的なエンタメ性を持つ司馬遼太郎の中間といった印象を持つ。やや政敵(岸信介や福田赳夫)が悪役に描かれすぎているきらいはあるが、それ以外はバランスの取れたものとなっている。
しかし要所に登場し、岸や福田とは比べ物にならないくらい飛び抜けて悪辣に描写されている架空の政敵、森野元は何者だろうか?某知恵袋ではハマコーなど -
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ラジオで知った辻井喬さんを
どんな人だったか詳しく知りたくて買った本。
解説にも書いてあるけれども、
彼自身の回顧録であると同時に、
その時代の時代史をたどることもできる。
出てくる名前もやたらとビッグで、
マッカーサーから始まり、
三島由紀夫や吉田茂、池田勇人、
本田宗一郎、司馬遼太郎
なんかがサクサク出てきて、
しかもその人達の人間的な部分が見えたりするものだから、
「歴史の人」が、
「辻井さん(堤さん)の知り合いのお一人」
になるもんだから混乱する。
とても知性が深く、暖かい。
先見の明があり、人情深い。
知ったのは亡くなってからだけど、
こんな人間になりたいなと思いました。
最後に -
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大平正芳は、あーうーしか言わない、パッとしない政治家だと思っていたが、意外に褒める人が多い。この本を読んでみて、成程と思った。大蔵省の官僚出身であるものの、若い頃に貧乏した経験もあり、思考に柔軟性もあり、見識も優れている。政治家らしくない政治家であり、田中角栄と親しかったにもかかわらず、クリーンである。
背景に戦前から戦後にかけての日本の政治史があり、日本が本当に民主主義の国になることを理想としていた政治家である。
選挙中に倒れた最期は印象に残っている。
ちょうど「田中角栄」という本を読んだ後で、同時代の政治家に興味があってとった一冊であったが、内容が濃く、充実していて、得した気分だ。
作者の -
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セゾングループの創始者として経営者であり、辻井喬として文学者でもあった堤清二の回顧録。セゾン文化の中で青春を過ごした者として興味深く読み進めました。
個人の回顧録でありながら、彼が生きた時代の同時代史にもなっているのが面白い。
さまざまな人との交流が描かれているが、個別バラバラに記述されるのではなく、連続性を持って語られています。A氏との交流の先にB氏がいて、その紹介でC氏と出会い、といった連続性がこの本をただ単に昔を懐かしむような回顧録にしていないのだと思います。三島由紀夫、安部公房、小林一三、本田宗一郎、池田勇人、白洲次郎、宮沢喜一、などなど、共通性の薄い、幅広い交友からの見えてくることも -
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つい先日に亡くなってしまった辻井喬氏の回顧録。自伝と言っていいかもしれない。2008年に読売新聞に連載されていたもの。日米安保闘争前のアイゼンハワー大統領と会う件から始まり、共産党を除名された件を経て、最後はセゾングループから身を引いた件で終わる。時の政財界の要人との交流、そして、その時にしたためた詩を通じて筆は進む。政財界との要人との交流では、歴史的な事件に別な側面があったことをこの著書で知った。共産党を除名されたり離れた人で後に政財界の要人になった人は多いが、ほとんどの人は距離をとったり、「反共」的になった人は多いが、著者は最後まで理解ある人であり、教養のある人としてバランスの取れた人では
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大平総理が東南アジアを歴訪したとき、相手国の代表が総理の人格に感銘を受けたとのコメントを新聞で読んだことがある。「ア~ウ~宰相」「鈍牛」とか、テレビや新聞は明瞭でない物言いばかりを馬鹿にするような記事が多かった。その小さなニュースに国内のマスコミは首相の人となりをちゃんと伝えていないのかな、と思った記憶がある。
宰相、大平正芳の評伝。口下手であまり政治家らしくない印象。若い頃、キリスト教に洗礼したなど、つくづく生真面目な人だったよう。
やはり官僚だった池田勇人から見込まれて政治家になる。宏池会のことなどよく知らなかった戦後政治の勉強になった。
国家のことを懸命に考える官僚出身者が政治家になる -
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堤清二こと辻井喬による伝記風の「小説」である。ノンフィクション作家による「ノンフィクション」ではない。辻井としては、大平の果たした役割についての評価を事実・真実のシーケンスの提示で読者に委ねるという手法ではなく、終戦後に保守・自由主義で日本を再建するという歴史の文脈の中で、たまたま政治家となった「善人」はどのような個人的心情や苦悩の中で生涯をすごしたのか、という点を描出したかったのだろう。社会や政治について書く筆ではなく、人の生き方という「文学」の筆致だということだ。山崎豊子「運命の人」のモデルである毎日・西山記者がモデルとおぼしきキャラクターが「田島」という名で出てきたりしている。
大平は